Tuesday, June 6, 2023

園遊会、4年半ぶり開催 令和初 天皇・皇后両陛下が国枝さんらと歓談

 天皇、皇后両陛下主催の園遊会が11日、赤坂御苑(東京都港区)で開かれた。春と秋の年2回行われてきたが、天皇の代替わり行事や新型コロナウイルス感染拡大の影響で2018年秋を最後に実施されておらず、開催は4年半ぶりで令和初。雨の中、両陛下や皇族方は約1000人の招待者の間を傘を差して歩き、和やかに歓談された。  天皇陛下は、車いすテニスの第一人者で国民栄誉賞を受賞した国枝慎吾さんに「車いすテニスとパラスポーツの発展に大変なご尽力をなさって」と言葉をかけ、プレー中の体の使い方を質問するなどした。皇后雅子さまは、国枝さんが東京パラリンピックの男子シングルスで金メダルを獲得したことに「本当に素晴らしいご活躍で」とねぎらった。  旭化成名誉フェローの吉野彰さんは19年にノーベル化学賞を受賞したことを報告。天皇陛下は吉野さんが開発したリチウムイオン電池について「本当に素晴らしいものですね」とたたえ、吉野さんが環境問題に貢献したいと意気込むと「温暖化の問題も深刻ですからね」と応じていた。  宮内庁によると、今回は招待者を例年の半数程度に減らし、食事やアルコールを含む飲料の提供も見合わせた。両陛下や皇族方はマスクを着用し、招待者にも着用への協力を求めた。【村上尊一】

発がん性の恐れ、化学物質「PFAS」が全国の河川・井戸水から大量検出…国が対策へ

 発がん性の恐れが指摘される化学物質「PFAS(ピーファス)」が、国内各地の河川や井戸水から高濃度で検出されている。ただし、健康への影響について不明な点が多く、国の対策は十分に進んでいない。住民から不安の声が上がる中、政府は専門家を交えて、汚染防止の方策について検討を始めた。(山下智寛) ■基準の100倍超  「人体への影響を明らかにし、汚染対策の指針を示してほしい」。大阪府摂津市の市民団体のメンバーらが3月8日、PFASの一種、PFOA(ピーフォア)の調査を求める2万3788人分の署名を環境省に提出した。  同市内にある空調機器大手「ダイキン工業」の工場では1960年代から、自動車部品などの製造過程でPFOAを使ってきた。しかし、米環境保護局が米国内に拠点を持つ同社などにPFOAの使用停止を求めたため、2012年に使用を中止した。  その後は周辺の地下水をくみ上げ、活性炭でPFOAを除去していたが、環境省の20年度の調査では、工場近くの大阪市内の地点で、国の暫定目標値(1リットルあたり50ナノ・グラム=ナノは10億分の1)の110倍にあたる5500ナノ・グラムを検出。2年後の府の調査でも、周辺の用水路から6500ナノ・グラムが検出された。  府は地下水を飲まないよう呼びかけ、同社は追加の対策を公表したが、住民の不安は消えない。市民団体の谷口武事務局長は「周辺では農作物を育てているし、子供への影響も心配。国が責任を持って監督してほしい」と訴える。 ■製造・輸入を禁止  PFASの有害性が注目され始めたのは2000年代。米疾病対策センターが、血中濃度が高まると腎臓がんや精巣がんのリスクが高まる可能性を指摘した。国連のストックホルム条約会議で19年までに、PFASの一種であるPFOAとPFOS(ピーフォス)の製造・使用が原則禁止され、政府も21年までに、国内での製造や輸入を全面禁止とした。  環境省は20年、PFOAとPFOSを含む2リットルの水を毎日飲んでも健康に影響がないレベルとして、含有量の暫定目標値を設定。21年度の調査では全国1133地点のうち、13都府県の81地点で暫定目標値を超過した。  だが自治体の対応は、井戸水の利用停止や河川からの取水停止を呼び掛ける程度にとどまる。環境省が作成した手引には、「排出源の特定のための調査を実施し、濃度低減のために必要な措置を検討する」とあるだけで、具体策を示していないからだ。  神奈川県は超過地点で独自に検査を続けているが、付近に排出源となるような工場はない。県大気水質課の関猛彦課長は「住民の不安を払拭(ふっしょく)したいが、何をどれだけやれば十分なのか……」とこぼす。 ■不十分な知見  東京・多摩地区や沖縄県宜野湾市など高濃度のPFASが検出された地域では、住民らが独自に血液検査を行う動きが広がっている。  こうした状況を受け、環境省は今年1月、化学物質や公衆衛生などの専門家を集めた会議を設置し、手引の改訂や対策について議論を進めている。海外の最近の研究成果や各国の規制状況を参考に、事業者による排水を規制できるような法整備も視野に入れる。しかし、PFASが健康に与える影響について科学的な知見は海外でも不十分といい、「根本的な解決策を見つけるのは容易ではない」(環境省幹部)のが現状だ。  原田浩二・京都大准教授(環境衛生学)の話「規制強化が進む欧米に比べ、政府の動きは遅い。水質調査だけでなく、住民の血液検査や土壌調査を積極的に行い、汚染の全体像を明らかにすべきだ」 ■基準厳しい欧米  世界各国は、飲料水に含まれるPFASの基準値を相次いで厳格化している。世界保健機関(WHO)は昨年9月、PFOSとPFOAの基準値を1リットルあたり各100ナノ・グラムとする暫定案を公表したが、「できる限り低い濃度を達成できるように尽力すべきだ」と呼び掛けている。  欧州連合(EU)は、加盟国にWHOより厳しい基準を求めており、ドイツは2028年にPFASのうち4種類の合計で基準値を20ナノ・グラムとする方針。米環境保護局は今年3月、PFOSとPFOAの基準値を各4ナノ・グラムへと厳しくする案を公表。年内に最終決定する。  ◆PFAS=有機フッ素化合物の総称。水や油をはじき、熱に強い性質から、フライパンのコーティングやはっ水スプレー、泡消火剤などに広く使用されてきた。自然界で分解されず、人体に長く残留するため、「永遠の化学物質」とも呼ばれる。

ロシアの進軍阻むため水浸しになった村、忍耐の限界に ウクライナ

【AFP=時事】ウクライナ軍は1年前、首都キーウ制圧を目指し進軍するロシアを阻むため、キーウの北約35キロに位置するデミディウ村の近くにあるダムを破壊した。村は水浸しになった。イワン・ククルザさんの自宅の地下室は今でも水が引かず、忍耐も限界に近付いている。 「水位を半分に下げてほしい。それでも戦車はここを通れないだろう」とククルザさんはAFPに話した。  ウクライナ当局は、ロシアが再び同盟国であるベラルーシから侵攻してくることを恐れ、対応してこなかった。  住民は自分で排水ポンプを調達したが、あまり効果はない。ククルザさんが自宅用に買ったポンプも冬の寒さで壊れてしまった。  政府からは2万フリブナ(約7万3000円)を賠償金としてもらったが、ククルザさんの地下室が今も氷のように冷たい大量の水に漬かっているという現実は何も変わっていない。  びしょ濡れの沼のような場所での生活は大変だが、それでも引っ越すつもりはないと話す。 ■住民の苦労  デミディウのウォロディミル・ポドクルガニー村長によると、政府は洪水で自宅が被害を受けたデミディウと周辺地域の住民数十人に移住案を提示したが、受け入れた人はこれまでに一人もいない。  村長は、当初の目標はキーウを防衛することだったと語った。そのため軍はキーウ近郊の貯水ダムの止水壁を爆破、数百万リットルの水がイルピン川に流れ込み、氾濫した。  川周辺は沼のようになり、キーウを目指すロシア軍の進みは遅れ、ウクライナ軍は態勢を立て直し、反撃に出ることができた。  戦略的には成功した。しかし、住民には影響があった。「200世帯が浸水した。住民がこの作戦で苦しんだことは明らかだ」と村長は言う。「私が受け取った、何とかしてほしいという嘆願書の山を見せることもできる」  だが、このままの状態を望む人もいる。  環境保護活動家らは、川の流れをこのままにすれば、旧ソ連時代に干拓されるまで広大な湿地だったこの地域の生態系の回復に有益だと指摘している。 ■「また楽園に」  ワレンチナ・オシポワさんも自宅の庭の生態系が劇的に変わったことに気付いていた。  ベリーやカリフラワーを育てていた畑は今はない。代わりに、昨夏にはビーバーたちがすみついた。庭で日なたぼっこをするビーバーと「友達になった」という。  デミディウの静かな田園風景に今では排水ポンプの動く音が響いている。だが、オシポワさんは希望を捨てていない。 「水が全部排出されて土地が元の状態に戻れば、ここはまた楽園になる」 (c)AFP/Thibault MARCHAND 【翻訳編集】AFPBB News

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