Tuesday, June 6, 2023

おひとりさま終活でやるべき13のこと!身寄りなしでも安心な最後を

■おひとりさまでも終活は必要? そもそも終活とはどのような活動のことでしょう?また、おひとりさまにも終活は必要なのでしょうか? ●終活とは人生の終わりのための活動 終活とは、一般的には人生の終わりのための活動のことを意味します。ただし、決して終わりに向かうためだけの活動ではありません。 「終」には自分自身のラストをプロデュースする、「活」には自分らしさを活かし後悔の無い人生を送る意味も含まれています。 「終活は家族がいる人が行う」というイメージをもっている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。逆に、周囲の人に自分の意思を伝える機会が少ないおひとりさまこそ必要性が高いと考えられます。 終活は必ずやらなければいけないことではありませんが「孤独死を避けたい」「遺品を希望通りに処分してほしい」「葬儀やお墓に関する希望がある」など、自分の死後の希望がある人は終活を行うことで希望通りの人生が送れるでしょう。 ●65歳以上のおひとりさまは年々増加している おひとりさまと聞くと生涯独身の人をイメージしがちですが、配偶者に先立たれてしまった人や子どもがいない人、親族と疎遠になっている人もある意味ではおひとりさまです。 つまり、終活を考える上では、自分の死後の対応を行ってくれる親族がいない人はおひとりさまと考えていいでしょう。 内閣府が発表している令和4年版高齢社会白書でも、65歳以上の一人暮らしの者は男女ともに増加傾向であることがわかります。(※1) ■65歳以上人口に対する1人暮らしの割合 ※1:内閣府|令和4年版高齢社会白書を基に作成 2000年には男性8%・女性17.9%でしたが、2020年には男性15%・女性22.1%と増加しており、今後も増加し続けると推測されています。 ●男性でも女性でも終活は必要 終活の必要性を考えたときに、男性女性の区別はありません。重要なのは、死後に自分の意思を伝えることや周囲に迷惑をかけないことです。 男性でも女性でも「自分の死後にこうしてほしい」という思いがある場合は、終活を行うことをおすすめします。 ■おひとりさまが終活を行わない場合に発生するリスク では、おひとりさまが終活を行わない場合にはどのようなリスクが発生するのでしょうか? ●孤独死のリスク 1点目は、孤独死のリスクです。おひとりさまで最も心配されることが孤独死ではないでしょうか? 以下は、国土交通省が発表している東京都区部における65歳以上の孤独死の数です。(※2) ■東京都区部における65歳以上の孤独死数の推移 ※2:国土交通省|死因別統計データを基に作成 2013年は2,869人でしたが2018年には3,867人と5年間の間に1,000人ほど増加していることがわかります。 もちろん65歳以上で1人暮らしをすること自体は問題ではありません。しかし、終活を行わないと自宅で死亡した場合にすぐに発見してもらえないリスクが高くなります。 ●身元保証人や身元引受人が確保できないリスク 2点目は、身元保証人や身元引受人が確保できないリスクです。元気で1人暮らしができるうちは問題ありませんが、入院時や介護施設利用時には身元保証人や身元引受人が必要になります。 終活で万一のときの身元保証人や身元引受人を確保しておかないと、いざというときに治療や介護が受けられないことが考えられます。 ●希望しない人に自分の財産が相続されるリスク 3点目は、希望しない人に自分の財産が相続されるリスクです。財産を残して亡くなった場合は、遺言状を残さないと法定相続人が財産を相続します。相続人がいない場合は最終的に国庫に入ります。 そのため、終活で自分の意思を残しておかないと、望まない人に財産が相続されるリスクが考えられるのです。 ●希望の葬儀や埋葬が行われないリスク 4点目は、希望の葬儀や埋葬が行われないリスクです。人が亡くなった場合、日本では必ず火葬や埋葬を行わないといけません。 葬儀や火葬の手続きをしてくれる人が見つからない場合は自治体が手続きしてくれますが、行われるのは最低限の火葬です。そのため、終活で葬儀や火葬に関する意思を残しておかないと、望まない葬儀や火葬が行われるリスクが考えられます。 ●周囲の人に迷惑をかけてしまうリスク 5点目は、周囲の人に迷惑をかけてしまうリスクです。4点目までは、自分へのリスクですが、5点目は他人へのリスクです。 総務省の発表によると、2012年の段階で65歳以上の認知症患者数は約7人に1人、2025年には約5人に1人になるといわれています。(※3) 認知症になると、今までできていた日常生活が送れなくなる可能性があります。そのため、終活を行わずに認知症になると、周囲の人に迷惑をかけてしまうリスクが考えられるでしょう。 ※3:総務省|認知症高齢者等への地域支援に関する実態調査 ■おひとりさま終活でやるべき13のこと 終活の必要性はおひとりさまも家族がいる人も同じです。しかし、やるべきことにはおひとりさまならではのポイントが存在します。ここでは、おひとりさま終活でやるべき13のことを確認していきましょう。 ●孤独死を避けるための行動を心がける やるべきこと1点目は、孤独死を避けるための行動を心がけることです。孤独死を避けるためには、周囲の人と関わりをもつことや万一の場合にすぐに駆けつけてくれる人を見つけることが大切です。 近くに親族や知人がいない場合は、以下の行動を心がけてみましょう。 孤独死を避けるための行動 訪問看護サービスを利用する 宅食サービスを利用する 見守り家電を利用する 定期的に地域イベントやサークルに参加する 毎朝決まった時間に散歩する など 訪問看護や宅食サービスを利用すれば、スタッフが定期的に自宅に訪問してくれます。そのため、万一のことがあっても早く気づいてもらいやすいメリットがあります。 また、親族が遠方にいる人には見守り家電もおすすめ。見守り家電にはカメラや電球などさまざまな種類があり、一定時間反応がない場合、あらかじめ設定した人に通知が入るようになっています。 他には、地域のイベントやサークルに参加することもおすすめ。定期的に参加している人がしばらく顔をださないと、仲間が心配してくれることが多いためです。毎朝決まった時間に散歩をして、挨拶し合う仲間を見つけるのもいいでしょう。 重要なのは、異変があったときに気づいてくれる人を見つけることです。 […]

東京のマンションはまだ安すぎる…23区内の「億超えタワマン」を買い漁る中国人富裕層たちの本音

マンション価格の上昇が続いている。一体どこまで上がるのか。不動産コンサルタントの長嶋修さんは「アジア系、特に中国人富裕層が投資目的で都内のタワマンを買うケースが増えている。彼らにとって東京の不動産価格はまだまだ安く、上昇はまだ続きそうだ」という――。 首都圏新築マンション平均価格が初の1億円超え 「新築マンションが高すぎる」 「庶民には手が届かない」 そういった声をよく聞くようになりました。 不動産経済研究所が4月18日に公表した「3月の首都圏新築分譲マンション市場動向」によると、首都圏の新築マンション平均価格は前年比2.2倍の1億4360万円と、単月で初めて1億円を突破しました。 ちなみに、3月の価格高騰は、港区の旧逓信省跡地に作られた「三田ガーデンヒルズ」など、高額物件の販売開始が大きく影響しました。 そのため、4月の新築マンション価格は前月比で大きく下落しましたが、それでも1億1773万円と、1億円超えが続いています。 投資マネーの流入は悪なのか 2月20日に放送された「ABEMA Prime」では、「庶民には手が届かない? 高騰し続ける都内マンションの実態 いま家は買うべき?」と題して、マンション価格高騰問題を扱いました。 筆者も出演していたのですが、番組全体としては、不動産価格の高騰はあまり喜ばしいことではない、という受け止め方が強かった印象です。 また、外国人投資家、特に中国人投資家の投資マネー流入によって、東京のマンション価格が吊り上げられることを警戒する声もありました。 東京に流入する「チャイナマネー」 バブル期の1980年代には、欧米系マネーが日本に流れこんだこともあります。 しかし、当時の日本の不動産市場には、反社勢力との関係や、地上げの問題など、さまざまな問題がありました。そのため「日本の不動産はややこしい世界」と見られてしまい、欧米のマネーが逃げてしまったのです。 その後も欧米のマネーは戻ってきていません。日本の不動産市場はデジタル対応で遅れています。アメリカではスマホで不動産の契約まで可能なので、そういう意味でも日本の不動産に魅力を感じないのかもしれません。 東京の不動産に投資しているのは、アジア系、特に中国系の富裕層がほとんどです。 前述の「ABEMA Prime」でも、中国人向け不動産会社の方が証言していましたが、中国では不動産を所有しても、数十年で返却しなければなりません。なので、本当の意味で所有できるのは外国の土地だけです。 中でも日本は金利が低く、不動産の価格が比較的安いので、不動産投資で利益を上げやすい環境です。 東京の不動産はまだまだ安い 冒頭でご紹介したように、東京23区の新築マンション価格は上がっています。 しかし世界の都市と比べると、東京の不動産にはまだ上昇の余地があります。 スイスの金融グループであるUBSが、「グローバル不動産バブル指数(UBS Global Real Estate Bubble Index 2022)」という指標を発表しています。 2022年の同指標によると、東京のバブル指数は第9位。前年度より上がっていますが、まだまだ低い位置につけています。 第1位はトロント。以下、フランクフルト、チューリヒと欧米の都市が続き、アジアからは第5位に香港がランクインしています。 また、ハイエンドクラスのマンション価格だと、東京は香港や上海、台北より下にランクされています。 これを見る限り、東京の不動産価格にはまだ上昇余地がありそうです。 東京に拠点を持ちたい中国人富裕層は多い 一方、イギリスや香港だと不動産の価格がかなり高いので、中国人富裕層にとってはリスクが高くなっています。 日本は安全で、人種差別も比較的少なく、街は清潔で、何より食べ物がおいしい。 ビジネスの拠点は香港やシンガポールに置くとしても、東京にも拠点を持ちたいという中国人富裕層はたくさんいます。 我々にとって日本は「30年もデフレが続く衰退国家」みたいなイメージが強いですが、海外からの評価は意外と高いのです。 外国人投資家の割合は1割に満たない程度 では、「外国人投資家によって不動産価格が吊り上がっている」は本当でしょうか。 具体的なデータはありませんが、日本の不動産市場で外国人投資家が占める割合は、おおよそ数%程度ではないかと思います。 かつて大手ディベロッパーは、「紳士協定」として、外国人向け販売比率をおおむね数%に抑えていました。 大手ディベロッパーだけが外国人に販売するわけではありませんし、今でも「紳士協定」が守られているかどうかも不明です。 この数字から類推して、日本の不動産市場に占める外国人の割合は、おおよそ1割に満たないくらいだと考えられます。 他の先進国でも、外国人投資家が占める割合は1割程度が一般的という事実もあります。 そもそも、外国人向け販売に取り組んでいる不動産会社は一部に過ぎません。 外国語対応も必要だし、富裕層向けの投資アドバイスも必要なので、対応できる人材が限られるのです。 新興国は制限するが、先進国は「チャイナマネー」歓迎 もちろん「外国人投資家が東京のマンション価格を吊り上げている」面も否定はできませんが、上記の数字を見れば、危険視するほどの規模ではないように思います。 一方、ニュージーランドでは「チャイナマネー」流入による不動産高騰を警戒して、外国人による不動産購入に制限を設けました。 またフィリピンのように、外国人の場合は土地自体は買えないとか、マンション全個数の半分までしか買えないなど、制限を設けている新興国もあります。 新興国の場合、経済の規模が相対的にまだ小さいため、外国から大きな投資マネーが流入すると、デメリットが大きくなってしまうのです。 […]

アングル:米大型ハイテク株、売却か継続保有か 投資家の見解割れる

[ニューヨーク 2日 ロイター] – 米株式市場が上昇を続ける中、そのけん引役となっている大型のハイテク・成長株を保有する投資家の間で、こうした銘柄を売却して現金化するか、それともさらなる値上がりを待って持ち続けるか、といった議論が起きている。 バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチのデータによると、ハイテク株には直近週に過去最高の85億ドルが流入。値上がりする株式市場に投資家が押し寄せてハイテク銘柄が多いナスダック100指数は年初来で33%上昇。S&P総合500種指数 も同11.5%上昇し、10カ月ぶり高値となっている。 ただ警戒を要する理由があると慎重な声も聞かれる。例えば相場上昇が狭い範囲に限られているというのがその1つで、ネッド・デービス・リサーチの最近のリポートによるとS&P500は時価総額が最も大きい5銘柄の全体に占める比率が24.7%と、1972年の統計開始以来最も高くなっている。つまりこうした銘柄が変調を来せば、相場全体が大きく下げる恐れもある。 チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「米株は大幅に値上がりしたが、重要な問題はこの流れが続くと考えるか、それとも平均に戻ると考えるかだ」と述べた。 人工知能(AI)の進歩を巡る興奮は大型株の上昇を後押しする主因の1つになっている。例えば半導体のエヌビディアは年初から170%近く上昇し、時価総額が1位と2位のアップルとマイクロソフトも40%近く上げている。 ヘッジファンドのインフラキャップのジェイ・ハットフィールド最高経営責任者(CEO)は、AIを巡る盛り上がりで大型株は上昇を続けると見ており、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベットなどのハイテク大型株をオーバーウエートにしている。「AIブームを100%信じている」と言い、「こうした銘柄が年末までに大幅に上昇しなければ衝撃的だ」と自信を見せた。 大型株は世界金融危機後の10年間のほとんどで市場のけん引役を担い、今年大型株に売りを仕掛けるのは危険な戦略になっている。バンク・オブ・アメリカのデータによると、投資家はポートフォリオに占める現金の比率が長期の平均よりも高くなっており、株高を加速させるのに十分な「燃料」があるとの見方もある。 強力なモメンタムも引き続き株価を押し上げる可能性がある。 トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズのマイケル・パーブスCEOは最近、テクニカル分析に照らすとナスダック100指数は買われ過ぎだが、2年前に同じ状況になったときに3カ月でさらに10%の上昇を成し遂げたことがあると指摘した。 エヌビディア株の最近の急騰ぶりは、大幅に上昇した後でもまだ株が値上がりし続けることが可能であることを示している。 ヘニオン・アンド・ウォルシュ・アセット・マネジメントのケビン・マーン最高投資責任者(CIO)は、リフィニティブ・データストリームの推計で予想利益ベースの株価収益率(PER)が44倍となっているエヌビディア株について、「ほんの少し割高」との認識を示した。マイクロソフト株については、目を見張るようなキャッシュフロー水準と健全な配当利回りなどを理由に依然として魅力を保っているとした。 一方、バリュエーションの上昇や、一握りの銘柄が急騰する一方で残りの銘柄で価格が低迷する相場の偏りを挙げて、懸念を強める向きもある。 S&P・ダウジョーンズ・インダイシズによると、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラのわずか7銘柄がS&P500種の年初来の全リターンを占める。 またS&P500種構成銘柄のうち3カ月移動ベースの値動きが同指数を上回ったのは全体の20.3%にすぎず、これは過去50年間で最低の水準だと、ネッド・デービス氏は指摘している。この水準が30%を割ると市場全体が弱気になる前兆だ。 カンバーランド・アドバイザーズのデービッド・コトクCIOはエヌビディアの最近の株価急騰を受けて、この数日でiシェアーズ半導体ETFの保有を圧縮した。株式市場の上昇がごく一部の銘柄に集中しているのは不吉な兆候だと考えており、資産評価に関する一部指標でも株式は魅力が低下しているように見えるという。 リフィニティブ・データストリームによると、S&P500種は予想利益に基づくPERが18.5倍。長期平均は15.6倍。 コトク氏は「(市場が)一部の銘柄に偏り、それがしばらく続くことはある」としつつ、「私にとって一部銘柄への集中は警告灯だ」と述べた。 (Lewis Krauskopf記者)

京都に観光客殺到でオーバーツーリズムの恐怖、JR東海が打ち出す「仏頼み」の奇策とは?

外国人観光客が急速に戻っている。日本政府観光局(JNTO)が5月17日に発表した4月推定値によれば、訪日外客数(入国外国人旅行者)は194.9万人で、前年同月の約13倍、コロナ前の2019年同月と比較しても66.6%に達する数字だ。インバウンドが戻りつつある中、日本最大の観光都市京都はどうなっているのか。5月25日から26日にかけて行われたJR東海の京都キャンペーンプレスツアーに参加し、京都の観光事情の現状を視察してきた。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也) 仏教にとどまらなかった 空也上人の偉業  今回参加したのは1993年に始まった、30年の歴史を持つ「そうだ京都、行こう」の2023年夏キャンペーン「あなたは、どの仏像から入りますか?」の体験ツアーだ。テーマに沿って空也上人立像が安置されている六波羅蜜寺、1000体の観音像が立ち並ぶ三十三間堂、みかえり阿弥陀の永観堂禅林寺などを巡った。  旅行記事は当連載の趣旨とは異なるが、招待いただいたJR東海の手前、ツアーで筆者が特に感銘を受けた空也上人立像の話だけ書かせてもらおう。  空也上人立像は口から6体の仏像が飛び出るユニークな姿で知られ、教科書やテレビなどで目にしたことがあると思うが、間近に見るとさらに鮮烈な印象だ。衣の質感、痩身ながら引き締まった筋肉、手の甲に浮いた血管まで精緻(せいち)に彫り込まれた姿は圧巻の一言。  空也本人の足取りは、それに劣らず伝説的だ。空也像は鎌倉時代の作だが、空也上人は平安時代中期の僧で、仏教が出家僧の修行のためのものであった時代に「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と唱えれば浄土に行けるという念仏信仰を大衆に説いた(これは後に浄土宗へと発展する)。  空也像の口から出る6体の仏像は「南無阿弥陀仏」の6文字を意味しており、彼が念仏を唱えると阿弥陀如来に姿を変えたという伝説を表現している。音を可視化した立像は世界的にも珍しいという。  しかし空也の業績は仏教にとどまらない。平安前期(700~800年代)は富士山、阿蘇山、鳥海山などが噴火。東日本大震災と同じ震源域で発生した同規模の地震とされる貞観地震など大規模自然災害が多発。また天然痘の流行などパンデミックに見舞われた激動の時代であった。  空也が生きた900年代も京都で繰り返し大きな地震が起きており、災厄を恐れる貴族や大衆の間には不安が蔓延(まんえん)していた。今の私たちにも通じる部分があるのかもしれない。そんな中、京都で再び疫病が蔓延。多くの人が病に倒れ、道端には死体があふれた。京で献身的に介護をしながら仏教を説く空也に、朝廷は疫病への対処を依頼した。  科学技術が発達していない時代、呪術的なもので災害や疫病を鎮めようと試みる例は珍しくなかったが、彼の対処は極めて科学的だったといわれている。彼は町中の井戸を埋め、新たな井戸を掘った。また遺体を山奥に放置する自然葬を火葬に改めるなど、感染経路を断つ「公衆衛生」を推進。そして同時に、弱り切った心を支えるための念仏を民に授けて回った。  この他にも空也は各地を回りながら、寺院のみならず道路や橋などの社会インフラ整備に携わるなど、宗教家であると同時に優秀なシビルエンジニアだったとされる。彼の没後250年に作られた空也像が、あたかも生身の彼を精緻に写実したかのような存在感を持つのは、彼の偉業が鎌倉時代まで伝わり続けたからに他ならない。 中国人観光客の増加で 懸念されるオーバーツーリズム問題  そんな先人たちが作り上げてきた京都に到来したパンデミック、新型コロナウイルスも3年が経過してようやく日常への道筋が見えてきた。冒頭に記した通り、既に人出はコロナ前の3分の2まで戻っており、今回のツアーでも駅、通り、観光地の至るところでさまざまな人種の観光客を目にした。  ただし、全ての国・地域からの観光客が同じように戻っているわけではない。  コロナ以前の訪日外客は中国、韓国、台湾、香港の順に多く、東アジア4地域で全体の3分の2を占めていた。  このうち韓国は2019年比82.4%の約46.7万人、台湾が同72.3%の約29.2万人、香港が同78.8%の約15.3万人と回復傾向にある(ただし2019年の韓国は対日感情の悪化で旅行者は減少していた)。またアメリカ、シンガポール、インドネシアなどはコロナ前を上回っている。  これに対し、中国に対して行われた新型コロナ水際対策(入国規制)の対抗措置として日本向け団体旅行客を制限している中国のみ、同14.9%の約10.8万人と、一人出遅れている。ただ昨年末と比べると人数は3倍に増加しており、5月8日に水際対策を解除したこともあいまって、5月以降は急速に回復する見通しだ。  そんな中国人観光客が多く訪れていた都市の一つが京都だ。京都市観光協会によれば2019年に京都で宿泊した訪日外国人のうち中国は30.8%、その他アジアの計21%を大きく上回る旅行者が訪れていた。既に狭い歩道は外国人旅行者が長い列を作っていたが、最大のボリュームを持つ中国人観光客の上積みが残っているというのは、頼もしくも恐ろしくもある。  コロナ前の京都が直面していたのが「オーバーツーリズム」問題だ。これは観光客の著しい増加が混雑など観光客自身の満足度低下につながるとともに、地域住民の生活に悪影響を及ぼす状況を指す言葉だ。  一方で2019年に観光客が京都市内で使った金額は1兆2367億円で、これは市民の年間消費支出81.3万人分(市民の55.4%)に相当する。観光による税収効果も市税収入の12.8%にあたる390億円、観光による雇用効果は雇用者の5人に1人となる15.3万人に達するなど、観光は京都にとって欠かすことのできない主力産業でもある。 JR東海が京都キャンペーンで 「仏像」を前面に打ち出した理由  これを両立させるため、京都市は2018年頃から本格的にオーバーツーリズム対策に乗り出したが、期せずして訪れたコロナというインターバルで取り組みを加速させた。何といっても必要なのは旅行者の分散だ。京都は清水寺や金閣寺、伏見稲荷といった定番観光スポットがあり、春・秋の人気シーズンにさらに集中する。  人気があるものを「見るな」とは言えないが、比較的混雑していない季節、曜日、時間帯などを発信する取り組みや、多様なエリアの魅力ある「隠れた名所」を積極的に発信するなど、訪問先の分散を図りつつ、新たな観光資源を開発する取り組みが進められた。  今回、JR東海のキャンペーンについても、これまでは最も人気のある春の桜、秋の紅葉のシーズンを打ち出すことが多かったが、混雑の分散を図るためにオフシーズンとされる5月から夏頃まで、季節に関係ない「仏像」を打ち出すことにしたそうだ。  またオーバーツーリズムの象徴として、しばしば取り上げられるのが京都市バスの混雑問題だ。京都~銀閣寺ルートの最混雑時間帯はコロナ前、1台当たり平均140人以上が乗車、混雑率でいえば200%以上というバスではありえない数値に達していたといい、地元住民が利用できないといった声が多く寄せられてきた。  そこで京都市は、今年中に700円乗り放題の「バス1日券」を廃止し、1100円の「地下鉄・バス1日券」へシフトを図る。バスを不便にすることで解消するのは交通事業者としては望ましい選択肢ではないが、運転手の担い手不足も深刻化する中で、俯瞰(ふかん)的、総合的観点から解決していかなければならないだろう。  来年春までには、訪日外客数がコロナ前の水準を回復するとの予測もある。コロナという雌伏の時を乗り越えて生まれ変わった京都の姿を示せるのか、あるいは元の木阿弥(もくあみ)に戻ってしまうのかに注目したい。

2023年総収入91億円の大谷翔平と超大型契約したニューバランスの販売戦略を”邪魔”した日本の公益財団法人

「ショウヘイの商業効果は年数千万ドル以上。彼は野球選手である以上に文化的なアイコンだ」。ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手と今年初め、大型契約をしたニューバランス。日本国内で同ブランドの野球のスパイクグッズ販売に乗り出したが、思惑通りにはいかなかった。“邪魔”をしたのは日本の有名な公益財団法人だった――。 ニューバランスとの契約を含め大谷翔平の総収入91億円 大谷翔平は2023年のMLBシーズンも投打の二刀流で驚異的な活躍を見せている。だが、昨年までと違う点がある。 岩手・花巻東高時代はアシックスの用具を愛用。日本ハム時代からは、用具(スパイク、グラブ、バット)はアシックス、ウエアはデサントと契約していた。それが今年1月、野球では後発ブランドといえるニューバランス(以下、NB)と超大型契約を結んだのだ。 契約金は明らかにされていないが、米経済誌『フォーブス』によると、大谷選手の2023年の総年収は、年俸3000万ドル(約42億円、1ドル=140円換算、以下同)と、NB、JAL、セイコー、三菱UFJ銀といったスポンサー収入3500万ドル(約49億円)を合わせ、6500万ドル(約91億円)でMLB史上1位になるという。 ニューバランスは米国資本のグローバルブランド。日本ではランニングシューズや街中で履くオシャレなスニーカーのメーカーという印象が強いが、近年は野球ギアでも成長著しい。大谷は、グラウンドではスパイクとグラブを、そして私服でも同社のアパレルやスニーカーを着用しているのだ。 NBのスパイクは人気も新モデルは高校野球で使えない NBの野球用スパイクは2010年に米国でローンチされると、MLBではわずか4年で500人以上の選手が使用するようになった。日本では2015年から発売開始。NPB(日本プロ野球機構)では昨季、三冠王を獲得した村上宗隆(ヤクルト)らも愛用している。 ランニングシューズで培ったテクノロジーを野球用スパイクにも取り入れており、かなり履き心地が良いようだ。 大谷はNBとの契約締結を発表した際、こう述べている。 「NBはプロダクト(製品)が革新的で素晴らしいだけでなく、アスリートが自分らしくいられるような本物のブランドとして知られているグローバルブランドです。彼らとともにゲームチェンジしていけることに興奮しています」 一方、NBの最高マーケティング責任者を務めるクリス・デービスはこう述べた。 「日本市場でのショウヘイの商業効果は年数千万ドル以上になるだろう。彼は日本において野球選手である以上に文化的なアイコンだからだ。この世代の野球選手で、あるブランドにこれほどの商業効果をもたらせるのはおそらく彼をおいてほかにいない」 日本高等学校野球連盟からNGが出たワケ 大谷は早速、NBのギアを使用した今年3月のWBC(ワールドベースボール・クラシック)でMVPに輝く大活躍を披露し、侍ジャパンを優勝に導いた。これで日本国内での販路拡大に大きな効果が出るかと思いきや……実はちょっとつまずいている。ある“邪魔者”の存在があった。 今年2月に発売された野球用スパイク「L3000v6」と「PL3000v6」の高校野球対応モデルは、ベロ(甲部分を覆うパーツ)の「3000」というロゴが規定から外れていると、日本高等学校野球連盟からNGが出たのだ。 高野連が定めているスパイクの規定は、「表面カラーはブラックまたはホワイト一色とする」などとかなり細かい。NBの新モデルが抵触したのは、「商標はベロ部に1箇所のみ入れることが可能であるが、その大きさは(縦)3センチ×(横)5センチ以内とする」という規定になる。 当該商品を確認すると、確かにベロ部分に入っている文字が規定より大きく見える。しかし、ベロとロゴは同じカラーリングで、よほど拡大しないとどんな文字が入っているのか認識できないレベルだ。 大谷効果もあり、特に規定のない草野球ではNBのレッドやネイビーのスパイクは大人気だという。では、国内に約13万人(2022年度の硬式野球部員数は13万1259人)いる高校球児の反応はどうなのか。甲子園常連校のあるコーチはこう話している。 「まだNBのギアを使っている選手は少ないですね。グラブやバットは一般販売していないんです。スパイクも種類が少なく、公式戦で使用できるモデルも限られていますからね」 スパイクの新モデルが使用不可になったこともあり、高校球児のなかでNBブームはまだ起きていないようだ。 大谷は今季、バットはチャンドラー社製を使用しているが、グラブはNBのものだ。NBはグラブやバットを国内でまだ販売していないが、この大谷モデルは今夏に数量限定でリリース予定だという。 前出のコーチは今後の高校野球界でのNB人気到来を予想している。 「NBのシューズに使用されているFRESH FOAMという素材はすごく柔らかくて、従来のスパイクにはないものです。公式戦で使用できるラインナップが増えると、多くの高校球児が履き替えるんじゃないでしょうか。とにかく大谷選手が使用しているというインパクトはすごく大きいんです。以前、大谷選手が使用していたヌバック素材の(アシックスの)グラブは高額(約7万円)でしたけど、高校生の間でもめちゃくちゃ人気でしたから。NBから大谷モデルのグラブが発売されれば、同じようなリアクションが起きると思いますね」 ただ、選手たち気になるのは、NBがどこまで野球ギアに本気なのか、ということだろう。 というのも、同じ米国ブランドのナイキは佐々木朗希(ロッテ)らをサポートしているとはいえ、ナイキジャパンは2013年に野球ギア(グラブ、スパイク、バットなど)から撤退。売り上げの高いフットウエア、アパレルに注力する戦略を取っている。NBの野球ギアが日本国内で成功するかどうかは、NB本社や同ジャパンの本気度にかかっている。要は、“大谷人気”にかかっているといえそうだ。 NBAプレーオフのCMに大谷が登場した意味 意外に思う人も多いかもしれないが、日本で絶大な人気と知名度を誇る大谷翔平だが、「世界的なスーパースター」の称号を得るまでには達していない。現地のブランドや人物の魅力度や親しみやすさを示す指標「Q SCORES」による米国人の認知度は17%だという。現役のスポーツ選手でいうと、ゴルフのタイガー・ウッズは81%、NBAのレブロン・ジェームズは75%。彼らとの差は歴然だ。 それでも米国企業のNBは大谷と大型契約を結ぶと、全米が注目するNBA人気カードのテレビ中継で流されたCMにも日本人アスリートを起用した。NBは野球ギアを売るためではなく、ブランドイメージをさらに向上させ、タウンシューズの売り上げを伸ばすために大谷を使うマーケティング戦略に出たと見ることもできるかもしれない。 では、日本でのマーケットはどうなのか。「カスタムファッションマガジン」(2021年9月調査)では、所有しているスニーカーのブランドランキングは以下の通りだった。 【女性】1位ナイキ、2位コンバース、3位アディダス、4位ニューバランス、5位プーマ 【男性】1位ナイキ、2位アディダス、3位ニューバランス、4位コンバース、5位アシックス 大谷がNBのウエアやシューズをカッコよく着こなしていても、女性にはファッションの参考にはなりにくい。しかし、大谷ファンがNBのシューズやウエアを購入し、インフルエンサーがグラウンド外の“大谷コーデ”をまねすれば、大人気になる可能性もあるだろう。男性は野球ファンも多く、野球グッズ以外のアパレルへの波及効果も大きいはずで、“大谷効果”でどこまでNBの売り上げが上昇するか要注目だ。 2023年シーズンも、5月末時点で打撃部門:ホームラン12本、打率.269、打点33、投手部門:5勝(1敗)、防御率2.91、脱三振率12.46……と八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せるショウヘイ・オオタニ。 関西大学の宮本勝浩名誉教授(理論経済学)によれば、日本国内のWBC経済効果を2月下旬に約596億円と試算したが、優勝までの盛り上がったことでその後、654億円に上方修正した。 MLBでも今季順調に活躍しており、チームも念願のプレーオフ進出も期待できるかもしれない。そして日本が誇る二刀流は野球の枠を軽々と超え、日本や世界の経済を回す原動力となっていくのかもしれない。 ———- 酒井 政人(さかい・まさと) スポーツライター 1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ) ———-

「このままだと日本経済は沈没するぞ」 海外投資家が三菱UFJのCFOに放った厳しすぎる本音

毎年平均100名近い海外機関投資家と面談しているニコン現CFOの徳成旨亮氏によると、海外機関投資家との面談で、頻繁に「君たち(日本経済・日本企業・日本人)には『アニマルスピリッツ』はないのか?」と問い質されてきた、という。 海外投資家は、日本の社会や企業経営を、血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態にあると見ている。結果、日経平均は1989年の最高値を未だ更新できておらず、水準を切り上げ続けている欧米株と比べて魅力がないと言われても仕方がない状況だ。 この現状を打破するにはどうしたらいいか? 徳成氏は、「CFO思考」が「鍵」になるという。 朝倉祐介氏(シニフィアン共同代表)や堀内勉氏(元森ビルCFO)が絶賛する6/7発売の新刊『CFO思考』では、日本経済・日本企業・日本人が「血気と活力」を取り戻し、着実に成長への道に回帰する秘策が述べられている。本書から、一部を特別に公開する。 「君のオフィスの設定温度は何度だ?」  2015年7月、私は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のCFOとなって初めての海外IRを行いました。海外IRとは、諸外国に点在する投資家を訪ねて面談し、自社の戦略をアピールして最終的に株式を買ってもらう、あるいは既存株主には買い増しまたは保有継続してもらうことを目的とする活動です。  私は過去にも同社の財務企画部長として海外投資家と面談した経験がありました。その延長線上で準備した財務計数や中期経営計画に関する膨大な英文のQ&A(模範回答集)を機中で勉強しながら、最初の訪問地ロサンゼルス(LA)に向かいました。  真夏のLAで最初に訪問したのは、中堅のファンドでした。その対話の第一問がこれでした。 「君のオフィスの設定温度は何度だ?」  一瞬、質問の真意が掴めず返答に困った私に対し、そのファンドマネージャーは続けました。 「どうせ『地球にやさしく』なんていう御託を並べて、28℃設定にしてるんだろう。グーグルやアマゾンのオフィスは何度か知っているか? 21℃だぞ。人間は少し寒いくらいのほうが頭が働くんだ」  唖然としている私に彼はたたみかけます。 「君の会社は、日本の最優秀と言われる大学の卒業生のなかから、さらに優秀と言われる学生を採用しているんだろう。そうした若者のアニマルスピリッツを掻き立て、その能力を最大限に活かすことこそが、経営者の役割ではないのか?  日本は少子高齢化でこれからどんどん人口が減り人口オーナス(注:人口ボーナスの逆)で経済成長は鈍化する。そうしたなかで君の会社のような企業が、優秀な人材の能力を最大限活かさないでどうする。  有能な人材は経営にとっては資源であり資本だ。『地球にやさしく』なんて言って地球の資源を心配している場合か? 地球に負荷をかけてもいいから、最高の職場環境を準備して、自分の会社の人材に最高のパフォーマンスを出させるべきじゃないのか? このままだと、地球が滅びるはるか手前で日本経済は沈没するぞ」  このファンドマネージャーは日本株の運用を数十年も行ってきた業界では名の知れた人物で、妻は日本人、趣味は京都の寺院の庭巡りという日本通の方です。  その彼が日本の将来を憂えて、安易に平等主義やきれいごとに流れるのではなく、有為な人材には最高の職場環境を用意し、必要な教育・研修の機会を与え、同時にとことん負荷をかけて高い成果やアウトプットを求め、アニマルスピリッツを刺激する処遇制度を用意し、企業価値を高めることが企業経営者の責務ではないか? そうした議論をふっかけてきたわけです。 「アニマルスピリッツが失われている」と 日本は見られている  2020年9月、経済産業省は「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の報告書(研究会で座長を務めた一橋大学名誉教授の伊藤邦雄氏にちなみ、通称「人材版伊藤レポート」と呼ばれる)を公表し、「人材」を「資本」ととらえ、人的資本の価値を創造することによって企業価値を創造していく、という概念を打ち出しましたが、その5年以上前に、西海岸の投資家から同様の課題を突き付けられたわけです。  この「オフィスの設定温度論争」をしかけてきた投資家を含め、資本市場の最前線で過去面談したグローバル投資家から、私が繰り返し言われてきた言葉があります。「君たち(日本企業、日本の経営者、日本人)には、『アニマルスピリッツ』はないのか?」というフレーズです。  アニマルスピリッツとは何か? それは、「実現したいことに対する非合理的なまでの期待と熱意」のことです。  英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズの代表的著書である『雇用・利子および貨幣の一般理論』のなかに、不確実な状況下における意思決定に関する次のようなくだりがあります[*1]。  投機による不安定性のほかにも、人間性の特質にもとづく不安定性……(中略)……おのずと湧きあがる楽観に左右されるという事実に起因する不安定がある。……(中略)……その決意のおそらく大部分は、ひとえに血気(アニマルスピリッツ)と呼ばれる、不活動よりは活動に駆り立てる人間本来の衝動の結果として行われるのであって、数量化された利得に数量化された確率を掛けた加重平均の結果として行われるものではない。……(中略)……企業活動が将来利得の正確な計算にもとづくものでないのは、南極探検の場合と大差ない。こうして、もし血気が衰え、人間本来の楽観が萎えしぼんで、数学的期待に頼るほかわれわれに途がないとしたら、企業活動は色あせ、やがて死滅してしまうだろう。……(中略) 将来のはるか先まで見はるかすような期待に依拠する企業活動は、社会全体に利益をもたらすと言ってさしつかえない。だが、個人の企業心が本領を発揮するのは合理的計算が血気によって補完、支援され……(中略)……る場合だけであることは、疑いもなく経験の教えるとおりである。  つまり、企業活動の本質は、利益の見込みやリスクの確率に基づくものでなく、人間が本来持つ将来に対する期待や自然発生的な衝動にある、とケインズは言い、そうした人間の特質を「アニマルスピリッツ」と称しています。ケインズは、「企業活動は、南極探検と大差ない」とまで言っているのです。  日本の現状は、まさに「企業活動は色あせ、やがて死滅してしまう」状況に近づきつつある可能性があります。日銀が各企業の最大の株主となり、企業の新陳代謝がなく、社会全体や企業経営から血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態、つまり「アニマルスピリッツ」が失われている状態にあると、海外投資家は見ているのです。  もちろん、日本がこうなったことにはやむを得ない事情もあります。人口減少や高齢化というデモグラフィック(人口統計学的)な変化は抗しがたいものがあり、縮小する市場のなかで仮に「アニマルスピリッツ」を無邪気にふるって失敗すると回復が困難であることは事実です。  パイが広がらないなかでは、無理をせず、安全を第一とする考え方には合理性があります。そうして、社会も企業も個人もリスク回避的になり、安全運転を重視して、成長戦略よりもコスト削減を優先してきた結果、今日の低成長と国際的な地位低下を招いたと考えられます。  また、こうした思考方法が数十年の長きにわたり続いたことから、世代を超えて、日本人および社会全体から「アニマルスピリッツ」が失われていったのだと考えることができます。  特に、本来楽観的思考やチャレンジ意欲をより持っているはずの若者世代が、人口減少や高齢化に伴う将来の生活不安、特に年金制度への不信から保守的になり、リスク回避的な行動を取るようになっていったことは、日本社会の活力をさらに失わせています。 参考文献 *1 ジョン・メイナード・ケインズ著、間宮陽介訳『雇用・利子および貨幣の一般理論』岩波文庫、2008年 ※この記事は、書籍『CFO思考』の一部を抜粋・編集して公開しています

中国、100都市以上が利払い費で困難に直面=調査

[北京 2日 ロイター] – 米調査会社ロディウム・グループは、中国で昨年少なくとも102の都市が債務返済コストの管理で困難に直面したとの報告書をまとめた。 これにより、財政政策を通じた景気支援が難しくなっているという。 調査は205都市の昨年の財政データと、地方政府の資金調達とインフラ投資を担う融資平台2892社の財務諸表を基に行った。 中国では不動産会社の債務抑制策や新型コロナウイルス対策で地方政府の財政が悪化。 昨年は205都市の半数で利払い費が財源の10%以上に達した。10%を超えると、債務返済コストの管理が難しくなるという。 21年の年次データを基にした2月の調査(318都市を対象)で利払い費が財源の10%以上に達した都市は全体の3分の1だった。 蘭州と桂林の利払い負担は昨年、財政能力を超えたという。 報告書は「現在の地方政府の財政悪化は、財政政策を活用した景気支援を妨げる要因となっている」とし「実際のところ、これが今年、中国の景気回復に向けた有効な財政支援が行われていない主因だ」と述べた。

トヨタの愛知2工場、大雨の影響で夜間操業停止…「プリウス」「レクサス」など生産

 トヨタ自動車は2日、大雨の影響を受け、愛知県内の二つの工場で夜間の操業を停止した。  操業を止めたのは、「カローラ」、「プリウス」などを生産する堤工場(愛知県豊田市)と、高級車ブランド「レクサス」などの田原工場(同田原市)。3~4日は休日で操業を予定しておらず、状況を見て5日から再開するかどうかを決める。

「初年度の年収は最低でも1500万円」今、年収が爆上がりしている人材が学生時代に学んだ学問

世界的トップ企業は、どのような人材を求めているのでしょうか。コンサルタントの相良奈美香氏は「『行動経済学』を学んだ人材が注目されています。たとえば、ネットフリックスが2億人を超えるユーザーを持ち、巨大IT企業に成長した大きな要因に、行動経済学を巧みに使ったレコメンド機能があります」といいます――。 ※本稿は、相良奈美香『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。 今、世界のビジネス界が最も注目する「行動経済学」 私はアメリカで「行動経済学博士」を修め、現在、「行動経済学コンサルタント」として、アメリカやヨーロッパを中心に、幅広い業界の企業に、「行動経済学をいかにビジネスに取り入れるか」、コンサルティングをしています。 行動経済学というとマイナーな印象があるかもしれませんが、実は行動経済学は「いま世界のビジネス界が最も注目している学問」だと言ったら、驚くのではないでしょうか。現にアメリカの企業で今まさに起きているのは、「行動経済学専攻の学生の争奪戦」です。 「もしも行動経済学を専攻していなかったら、グーグルになんか絶対就職できなかった」 こう語るのはペンシルベニア大学大学院で行動経済学を専攻した私の友人です。私の大学院時代の友人の多くは教授として学問の世界にとどまりましたが、就職組の多くはFAANG(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Google)で働いています。 また、試しにグーグル検索で“Behavioral Economics job(行動経済学 仕事)”と入れて検索し、ヒットする9カ月分の情報量を2012年と2022年で比較してみました。結果、2012年は2万3800件ヒット、2022年は2730万件ヒットし、この10年で1147倍となっています。 初年度の年収は最低1500万円、時給30万円も… 求人情報そのものばかりではありませんが、「行動経済学 仕事」ということに急激に関心が高まったと言っていいでしょう。私が大学院生の2000年代後半の頃は、行動経済学の学会に行っても参加者はほんの数十人。ほんの20年足らずで状況は激変しました。 これまで行動経済学のバックグラウンドを持つ人材の雇用に何度も関わってきましたが、 いま行動経済学の博士課程を持つ人を採用するなら、初年度の年収は最低1500万円。教授をコンサルタントとして雇うなら、「時給30万円」なんてこともあります。 「教授をコンサルタントとして雇う?」 不思議に思うかもしれませんが、アメリカではよくあることで、新たな事業計画を立てたりビジネスを立ち上げたいというときは、スペシャリストを学問の世界から招きます。 私が以前お世話になった教授の方々の中にも、アップルやマイクロソフトに引き抜かれた例もあり、名だたる大学の教授となると引き抜き合戦となることも珍しくないのです。 ネットフリックスは「情報」と「選択」を増やし過ぎない では、なぜ今、世界のビジネス界で、行動経済学が注目されているのか。それは、お金が動く「経済」という枠組みの中で、人はどう行動するのか、それはなぜなのか。それを理解することがビジネスでは重要であり、それを明らかにするのが行動経済学という学問だからです。 こうして、行動経済学が広まった現代を生きる私たちの周りには、すでに行動経済学が組み込まれた商品やサービスが溢れています。特に効果的に使っているのはFAANGでしょう。 例えば、動画配信サービス・ネットフリックスは1997年の創業当初はDVDのレンタル会社でしたが、2007年から動画配信事業に移行しました。2億人を超えるユーザーを持ち、巨大IT企業に成長した大きな要因のひとつが、行動経済学を効果的に使ったレコメンド機能と言えます。 動画配信サービスは「何か面白いことがないかな?」という、年齢も性別も国も好みも違う人たちに応えるために、何百万ものコンテンツを揃えなければなりません。また、何百万というコンテンツはマーケティング戦略には必須でしょう。 しかし、あまりに数が多すぎると、ユーザーは選べない。では、どうするか? ――そのために作られた戦略には、おそらく行動経済学が入っています。 ネットフリックスのユーザーならよく知っている通り、アプリを立ち上げ、自分の名前をクリックすると、すぐにいろいろとおすすめの番組が現れます。ユーザーはこのレコメンド機能に従って視聴できますし、さらに関連する番組も並べてくれるので、自分で深く考えなくても次々と好みの作品を選ぶことができます。 また、アプリを利用すればするほど、どんな作品を好むかのデータが集まり、より精度は高くなります。 「人は情報も選択肢も多ければ多いほどいい」というのが合理的な個人を前提とする伝統的な経済学の答えですし、消費者自身も顕在意識としては「たくさんの選択肢があったほうがいい」と考えます。 しかし、行動経済学は「情報や選択肢が多すぎると、人は最適な意思決定ができないばかりか意思決定自体ができなくなる」と解釈しています。行動経済学の理論で、「情報オーバーロード」「選択オーバーロード」という状態です。 そこでネットフリックスは、何百万ものコンテンツを用意した上で、ユーザーが実際に目にする情報や選択肢については適量に絞って最適化している――それがレコメンド機能です。 世界的大手が活用する「現状維持バイアス」 アマゾンやディズニーなどの配信サービスも同じで、プログラムの第1話が終わると自動的に第2話が始まりますが、思い出してみればDVDの時代は自分で再生し、その都度「見続けるかどうか」を決定していました。その結果、今のようにだらだらと見続けてしまうことは少なかったのです。 しかし、今の配信サービスのように勝手に再生されたら、今の状態を続けたい「現状維持バイアス」という行動経済学の理論が働いて視聴を続け、やがて「1話が終わったら自動的に2話が始まってそのまま見るのが当たり前だよ」という状態になり、延々とアプリを使い続けます。TikTokはまさにこれです。 人間は合理的かつ冷静に意思決定すると伝統的な経済学は考えますが、実は非合理ですし、こういった企業は、そのことを理解し、上手くビジネスに取り入れているのです。 スターバックスがトップ企業でいられる理由 FAANG以外にも、食品から医薬品まで多くの大手メーカーは行動経済学をビジネスに取り入れていますし、トップ企業がトップでいられる理由の一つに、行動経済学に基づいた戦略がある例もよく見聞きします。 例えばスターバックスのモバイルアプリは、行動経済学を徹底的に活用して作られているようです。 特に注目したいのが「スター」というポイント制度。最終的には「ゴールドスター」のステータスとなり、新製品を一足先に購入できたり、誕生日プレゼントがもらえたりする特典がつきます。 何より「スターバックスの上級ステータス」というランクづけは、顧客に優越感をもたらします。これは行動経済学で言う「ポジティブ・アフェクト(ポジティブな淡い感情)」という理論を利用した戦略と言えます。 ステータス制度は航空会社、ホテルなど多くの企業が導入していますが、スターバックスのこの「スター」制度では、モバイルアプリで「残り4日!」と期間限定ボーナスがもらえる期間がメッセージで送られてきたり、「ゴールドスターまであと○○スター」とゴールまであとどれくらいかを示されたりします。 これらも行動経済学の観点から言えば、ゴールが近づくほど意欲が増す「目標勾配効果」という理論の応用です。期間限定ボーナスや徐々にステータスが上がっていく仕組みは、コンピュータゲームの理論をビジネスに応用した「ゲーミフィケーション」でもあります。 「25も200の差も同じ目盛り」に隠されたトリック さらに、ステータスバーの目盛りにもちょっとしたトリックがあり、25スターと50スターの目盛りの間隔が、200スターと400スターの目盛りの間隔と同じになっています。 25の差も200の差も同じ目盛りというのはグラフとしては明らかに間違いなのですが、行動経済学的に言えば優れた戦略。顧客はよく吟味せずにパッと見た雰囲気で判断するため、「もう50スター集めた。頑張って最後まで集めよう」と誘導されてしまうのです。 実際には、50スターまでよりも、その先の400スターまでのほうが、集めなければならないスターは当然、多くなります。こうしてスターバックスのこの「スター」制度は、多くの利用者を集めています。 多くの企業は人の非合理な意思決定と行動のメカニズムを知り、競争相手より優位に立とうとしているので、行動経済学を使っていることを企業秘密として公言しません。いわばお客さまには知られたくない“公然の秘密”というわけなのです。 しかし、行動経済学を学ぶと「このサービスは行動経済学が裏にあるな」とすぐにわかるようになる――それどころか、ひとたび行動経済学を学ぶと、世界が違って見えてきます。 あらゆる企業の戦略が張り巡らされた今、教養としての行動経済学を身につければ、二度とそれまでのような素朴なものの見方はできなくなるでしょう。 ・消費者側としては、企業の戦略に乗せられないように賢くなれる。 ・企業側としては、顧客にサービスや商品をより多く楽しんでいただくための戦略家になれる。 これこそ、世界のビジネスパーソンが行動経済学を学ぶ理由なのです。 ———- 相良 奈美香(さがら・なみか) 行動経済学博士 […]

愛知のニュータウン新交通「ピーチライナー」が残念すぎる末路を迎えた理由

わずか15年半しか営業できなかった上に、撤去に約130億円の費用を要する愛知県小牧市郊外の宅地の一角にある、「ピーチライナー」こと桃花台(とうかだい)新交通・桃花台線。人口230万人を擁する名古屋市の30km圏内で、巨大なニュータウンの足となるはずだった鉄道は、なぜ短期間でその使命を終えたのか。(乗り物ライター 宮武和多哉) 開業15年で廃止の桃花台新交通「ピーチライナー」 巨大ループ橋が間もなく撤去  愛知県小牧市郊外の宅地の一角にある、「ピーチライナー」こと桃花台(とうかだい)新交通・桃花台線の「巨大ループ橋」の撤去が、間もなく行われる。  人口2.2万人を擁する「桃花台ニュータウン」の足として建設されたこの鉄道は、ほぼ全線でコンクリートの高架橋の上を走行していた。運転席が片端にしかない車両は、終点の桃花台東駅で乗客を降ろした後、高さ約20m、直径約10mの巨大なループ橋をひと回りして方向を変えていた。  2006年にピーチライナーが全線廃止となった後も、設備の撤去を巡る費用分担の議論が定まらず、高架や駅などのほとんどが放置されてきた。近年ようやく撤去作業が本格化したものの、周囲を高層住宅に囲まれたループ橋の解体が始まるまでに、撤去の決定から8年もの歳月を要した。  23年春には鋼製橋桁がクレーンで地上に下ろされ、残された「C」の字状のカーブの部分も、間もなく撤去されるとのこと。現在では記念撮影に訪れる人も多いという。  ピーチライナーの開業は1991年。15年半しか営業できなかった上に、撤去に約130億円の費用を要すること、そもそも鉄道建設が誤算だったことは明らかだ。人口230万人を擁する名古屋市の30km圏内で、巨大なニュータウンの足となるはずだった鉄道は、なぜ短期間でその使命を終えたのか。 通勤に使えない、沿線開発できない、発展しない ピーチライナーの“三重苦”  計画では1日3万人の利用が見込まれていたピーチライナーは、実際には1日2000~3000人ほどの利用しかなかったという。最大の原因は、名古屋方面への通勤客をほとんど取り込めなかったことだ。  ピーチライナーが接続していた名古屋鉄道小牧線は、03年までは上飯田駅止まりで、名古屋市内に向かう路線に接続していなかった。市内に向かうには、地下鉄名城線・平安通駅まで1km弱歩くなどして、さらに他の路線に乗り継ぐ必要があった。要するに、通勤手段としては、あまりにも不便過ぎたのだ。  また、桃花台ニュータウンは300ヘクタールもの丘陵地を造成した街であるにもかかわらず、ピーチライナーの駅は少なく、駅への移動経路は起伏が多かった。廃止が検討され始めた頃の調査では、住民で「ピーチライナーを利用する」と回答した人はわずか6%しかいなかった。駅から遠い住人のほとんどが「移動手段はマイカー」だったという。  そして、ニュータウン計画そのものも不調だった。71年の計画発表当初は5.4万人が住むはずだったが、最盛期でも2.8万人にとどまった。石油危機(オイルショック)による景気低迷を受けて、2度にわたる大幅な計画縮小を余儀なくされたものの、83年に訂正された「計画4万人」にすら届かなかったのだ。  さらに、ピーチライナー不調の原因として「周辺自治体の無策」が挙げられる。同路線は愛知県と小牧市で300億円以上かけて建設開業したものだが、経営維持のための「次の一手」を考えていた痕跡がほとんど見当たらない。  一般的な鉄道路線なら、途中駅の土地区分を建設した上で、マンションや商業施設などを誘致して鉄道利用につなげていく。しかしピーチライナーの場合は、途中駅(東田中駅、上末駅など)の周りは土地区分が「工業地域」のままで、鉄道を利用しそうにない物流企業ばかりが誘致された。  また、鉄道を建設した愛知県も小牧市も、ピーチライナーの具体的な集客には消極的だった。沿線の小牧総合運動場や名古屋経済大学、私立誉高等学校は駅から1~3km離れていて、「どうやったら利用してくれますか?」という呼びかけが行われたのも、かなり後になってから。そして最後までバリアフリー整備ができず、高架上の駅ホームへ移動するのに階段昇降が必須のため、「高齢者の移動手段」としての存在意義は、ほぼなかったと言っていい。 地下鉄と乗り継ぎ可能となり乗客増加 運賃「値下げ」するも起死回生ならず  1日3万人の利用計画のずさんさも、後に明らかになった。名古屋市内への移動で、JR中央本線・春日井駅経由での移動が想定されていなかったのだ。  実際に春日井駅経由で移動する人が、当時は1万人以上いたといわれる。桃花台ニュータウンの住民団体や自治会は、バス路線の開設を要望したが、「ピーチライナーがあるから」との理由でなかなか認可が下りなかった。ピーチライナーの存在は「不便」「赤字を生む」だけでなく、「必要なバス路線開設の障害」にすらなっていたのだ。  03年には上飯田駅~平安通駅間の地下鉄路線が開業し、1km近い徒歩乗り換えが解消されたことで、乗客は大幅に増加した。同時期、運賃の値下げ(小牧~桃花台東間を350円から250円に値下げ)に踏み切り、起死回生で立ち直るかにみえた。ところが、乗客増加は運賃値下げと相殺され、経営の改善にはほとんどつながらなかった。  経営改善のラストチャンスを逃した愛知県と小牧市は、この後に控えていた車両や機器類の設備更新に必要な資金投入を拒否した。こうして廃止が事実上決定した。 典型的な「ビジョンなき鉄道の失敗例」 今なら撤去が進む遺構を見学できる  撤去が進められているピーチライナーの遺構を遠くから眺めていても、「エレベーターもない高架上の駅、誰が利用する想定だったの?」「駐輪場もクルマ送迎のロータリーもないのに、どう利用促進しようと思ったの?」「空いた土地に何か誘致しようと考えなかったの?」などと首をかしげざるを得ない。  典型的な「ビジョンなき鉄道の失敗例」ともいえる数々の遺構を、ウォーキングがてら眺めに行くのもいいだろう。なお、小牧駅の南側にあったループ橋も、23年4月時点で撤去工事が進んでおり、こちらも間もなく姿を消す見込みだ。

Would you like to receive notifications on latest updates? No Yes