笑顔の秋篠宮ご夫妻 チャールズ国王戴冠式の席次にみるイギリス王室「特段の配慮」
5月6日、私たち秋篠宮ご夫妻の同行記者は、チャールズ国王戴冠式から戻られるのを小雨の中、ホテルの前で待っていた。戴冠式のご感想について、記者の代表が思い切ってお声かけをした。すると秋篠宮さまはカメラの前で、これまでに拝見したこともないような晴れやかな笑顔でこう述べられた。「とても荘厳で、よろこびに満ちた良いお式だったと、そう思いました。」笑顔にご訪問の充実ぶりと安堵が象徴されていた。そして、イギリス王室の変革をも体感されるご訪問となった。 予想外に大きくテレビ画面に映る秋篠宮ご夫妻の姿 同行記者は、ご夫妻が戴冠式に向けホテルの出発を見送った後、現地時間の午前10時頃からホテルの一室でBBCの生中継でウエストミンスター寺院の様子を見守った。寺院に私たちは入れないからだ。10時49分、BBCの放送でご夫妻の姿を確認した。エリザベス女王の国葬の時の天皇皇后両陛下よりも画面の中央に大きく映し出され、私たちは思わず声を上げた。「いらっしゃった!すごく良いお席」と。 秋篠宮ご夫妻の席次に表れるイギリス王室の特段の配慮 今回の秋篠宮ご夫妻のイギリス訪問については、週刊誌やネット記事の中で「天皇陛下が行かれるべきではないか」という声が出ていた。同行記者の間でも「ご夫妻は末席で、テレビ画面には映らないのではないか」などと心配する声があった。しかしそれはすべて杞憂に終わった。ご夫妻の席は皇太子が座るブロックの最前列だった。外交上の慣例では在位が長いほど前の席となる。側近は「非常に英国側が日本に配慮してくれたのではないか。皇嗣になってまだ日が浅い中で最前列にお座りになった。日本の皇室と英国の王室との長い歴史と推測する」と説明した。 紀子さまの和装が人気に 戴冠式の前、ご夫妻と王族はウエストミンスター寺院近くのチャーチハウスで1時間半ほど待機された。ここで参列を待つ各国の王族と懇談されたという。紀子さまは松竹梅と菊や雲など縁起の良い文様があしらわれていた和服で臨まれた。和装の紀子さまは人気で、多くの王族から「写真を撮りましょう」と求められ、「日本に行きたい」「ぜひいらしてください」と会話が弾み、交流を深められたという。和装は着付けも大変だが、紀子さまからは、和装を選んで良かったと思われている様子がうかがえた。 21か国の王族と長時間懇談された秋篠宮ご夫妻 戴冠式前日の5日には、バッキンガム宮殿で国王主催のレセプションが開かれた。秋篠宮ご夫妻は、王室の方から案内され、国王に直接ご夫妻からの祝意と、天皇皇后両陛下からことづかった祝意を伝えられた。 王族のいる部屋に案内されたご夫妻は、イギリス王室のウィリアム皇太子夫妻、エドワード王子夫妻をはじめ、出席した21か国の王族と懇談されたという。アジアでは、タイ、ブータン、ブルネイ、マレーシア。大洋州はトンガ。欧州はオランダ、ギリシャ、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ノルウェー、ブルガリア、ベルギー、モナコ、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク。中東はカタール、バーレーン、ヨルダン。アフリカはエスワティニ、レソト。ご夫妻は2時間のレセプションの間、こうした王族と懇談されていたという。 秋篠宮さまはレセプションなどで多くの王族とお話したことについて「久方ぶりにお目にかかる方も多く懐かしくお話することができました」と感想を寄せられた。また側近によると、皇嗣としてこれだけ多くの王族の方といっぺんに会うのは初めてだったかもしれないとのことだった。王族と親しく交流ができたことについて側近は「これからのご公務に生かしていかれたいという思いなのではないか」と秋篠宮さまの気持ちを推測した。 70年前の上皇さまの戴冠式への出席から続くイギリスとの交流 1953年のエリザベス女王の戴冠式。昭和天皇の名代として、皇太子時代の上皇さまが参列された。敗戦国から来たわずか19歳のプリンスはイギリスから温かく迎えられた。その後交流の歴史が積み重なり、イギリス王室と皇室は特別な関係となった。秋篠宮ご夫妻もそのことを実感されたようだ。帰国後、次のように感想を綴られた。 「今から70年前、上皇陛下が皇太子殿下のとき、昭和天皇の御名代として英国女王陛下の戴冠式にご参列になりました。思い返してみますと、その時のお話を私たちは度々に伺うことがありました。戴冠式で親交を深められた方々、そして次の世代の方々と日本の皇室との交流が今でも続いていることに思いをいたすとき、改めてこの度の出席に感慨を深くいたしました。」 国民の支持を求め変化するイギリス王室 バッキンガム宮殿前でテントを張って戴冠式を待つ人たちがいる一方で、王室反対派のデモも起きていた。戴冠式は70年前に比べて簡素化され、さらに多宗教、多人種を意識したものだった。イギリス国教会のカンタベリー大主教が式を司るものの、ユダヤ教、イスラム教、ヒンドゥー教、シーク教の教徒が式で重要な役割を果たすというのは、これまでにないものだ。戴冠式の変化はイギリス社会の多様性を反映し、若者に進む王室離れをなんとか食い止めようとする国王の意識の表れにも見えた。王室は慈善事業に力を入れ、環境問題にも取り組み、SNSで国民の共感を得ようとしている。国民からの支持があっての王室という姿勢が鮮明に表れている。 象徴天皇制の日本の皇室は戦後、国民からの「尊敬」や「好感」によって支えられてきた。一方で日本の社会や若者の意識も変わり始めている。秋篠宮さまは、変革を摸索するイギリス王室を目の当たりにしたはずだ。皇嗣としての今回の経験は、時代の変化に合わせた日本の皇室のあり方を考える上でも大きな意味を持つのではないか。