Friday, December 8, 2023

三笘薫、久保建英、鎌田大地、遠藤航、冨安健洋はどのポジションで起用される? 欧州注目チームの最新布陣

8月からスタートしている2023-24シーズンの欧州サッカー各国リーグ。開幕から日本人選手の活躍も目立ち、毎週の試合が期待されるところだ。ここではそんな日本人選手所属クラブの今季注目の5チームの戦いぶりを最新フォーメーションと共に紹介する。 ◆ ◆ ◆ アーセナル(イングランド) 【4-1-2-3】  FW:カブリエウ・マルティネッリ(レアンドロ・トロサール)、エドワード・エンケティア(ガブリエウ・ジェズス)、ブカヨ・サカ(リース・ネルソン)  MF:カイ・ハヴァーツ(ファビオ・ビエイラ)、マルティン・ウーデゴール(エミール・スミス=ロウ)  MF:デクラン・ライス(ジョルジーニョ)  DF:オレクサンドル・ジンチェンコ(冨安健洋)、ガブリエウ・マガリャンイス(ヤクブ・キビウォル)、ウィリアン・サリバ、ベン・ホワイト(トーマス・パーティ)  GK:アーロン・ラムズデール(ダビド・ラヤ)  昨季終盤に逆転されて逃したリーグ制覇に再挑戦するシーズンだ。その意気込みを示すように、移籍市場で積極的に動いた。クラブ史上最高額となる1億500万ポンド(約190億円)を投じてデクラン・ライス(ウェストハム→)を迎え、さらにカイ・ハヴァーツ(チェルシー→)も高額で獲得し、グラニト・ジャカ(→レバークーゼン)が去った中盤を強化。  昨季は守備的なMFを務めていたトーマス・パーティは、今季序盤戦にライトバックでも起用されている。20代前半の選手が多いチームはシーズン中の成長にも期待できるが、強大なシティの牙城を崩して、2004年以来20年ぶりのリーグ優勝を遂げることはできるだろうか。 リバプール(イングランド) 【4-1-2-3】  FW:ルイス・ディアス(コーディ・ガクポ)、ダルウィン・ヌニェス(ディオゴ・ジョタ)、モハメド・サラー(ハーベイ・エリオット)  MF:カーティス・ジョーンズ(ライアン・フラーフェンベルフ)、ドミニク・ソボスライ(チアゴ・アルカンタラ)  MF:アレクシス・マック・アリスター(遠藤航)  DF:アンドリュー・ロバートソン(コスタス・ツィミカス)、フィルジル・ファン・ダイク(ジョエル・マティプ)、イブラヒマ・コナテ(ジャレル・クアンサー)、トレント・アレクサンダー=アーノルド(ジョー・ゴメス)  GK:アリソン(カオイムヒン・ケレハー)  ファビーニョ(→アル・イテハド)、ジョーダン・ヘンダーソン(→アル・イテファク)、ナビ・ケイタ(→ブレーメン)、ジェームズ・ミルナー(→ブライトン)、アレックス・オクスレイド=チェンバレン(→ベシクタシュ)を放出し、ドミニク・ソボスライ(ライプツィヒ→)、アレクシス・マック・アリスター(ブライトン→)、ライアン・フラーフェンベルフ(バイエルン→)、遠藤航(シュツットガルト→)を迎えて中盤をオーバーホール。  ロベルト・フィルミーノ(→アル・アハリ)が抜けた前線に新戦力は加えていないが、現状のユニットを維持できれば、問題にはならないはずだ。また、ファビーニョを釣り上げたサウジアラビアのアル・イテハドが、サラーに1億5000万ポンド(約276億円)のオファーを出していたが、残留が決定した。 ブライトン(イングランド) 【4-2-3-1】  FW:エバン・ファーガソン(ダニー・ウェルベック)  MF:三笘薫(アンス・ファティ)、ジョアン・ペドロ(フリオ・エンシーソ)、ソリー・マーチ(サイモン・アディングラ)  MF:ビリー・ギルモア(マフムド・ダフート)、パスカル・グロス(アダム・ララーナ)  DF:ペルビス・エストゥピニャン(イゴール)、ルイス・ダンク(アダム・ウェブスター)、ヤンポール・ファン・ヘッケ(ヨエル・フェルトマン)、ジェームズ・ミルナー(タリク・ランプテイ)  GK:バート・フェルブルッヘン(ジェイソン・スティール)  上昇の一途を辿るシーガルズ(クラブの愛称)が史上初の欧州カップ戦に向けて、上々のスタートを切った。超攻撃的なスタイルを掲げるロベルト・デ・ゼルビ監督の下、今季も特殊な前傾姿勢を保つチームは、プレミアリーグ第4節終了時点でマンチェスター・シティさえも凌ぐ最多得点12を記録し、3勝1敗の6位につけている。  エバン・ファーガソン、三笘薫、ソリー・マーチと攻撃の主力の顔ぶれは昨季と同じながら、マーケット最終日にローンで迎えたアンス・ファティ(バルセロナ→)やジョアン・ペドロ(ワトフォード→)にも期待できそうだ。海千山千のユーティリティ、ジェームズ・ミルナー(リバプール→)の存在も大きい。 レアル・ソシエダ(スペイン) 【4-1-2-3】  FW:アンデル・バレネチェア(ミケル・オヤルサバル)、カルロス・フェルナンデス(ウマル・サディク)(アンドレ・シウバ)、久保建英(モハメド・アリ・チョ)  MF:ミケル・メリーノ(ベニャト・トゥリエンテス)、ブライス・メンデス(アルセン・ザハリャン)  MF:マルティン・スビメンディ(ジョン・アンデル・オラサガスティ)  DF:アイエン・ムニョス(キーラン・ティアニー)、ロビン・ル・ノルマン(ジョン・パチェコ)、イゴール・スベルディア(アリツ・エルストンド)、アマリ・トラオレ(アルバロ・オドリオソラ)  GK:アレックス・レミロ(ウナイ・マレロ)  10シーズンぶりのCLに挑む今季、ダビド・シルバが重傷を負って現役を退き、昨季のチーム得点王アレクサンダー・セルロート(→ビジャレアル)も新天地を求めた。その分、期待を背負う久保建英は開幕から好調を維持し、第4節を終えた現時点で、チーム最多の3得点を挙げている。  ミケル・オヤルサバルやミケル・メリーノ、マルティン・スビメンディら、スペイン代表組も健在で、そこに攻撃的MFアルセン・ザハリャン(ディナモ・モスクワ→)やFWアンドレ・シウバ(ライプツィヒ→)といった新戦力もフィットすれば、CL本戦における20シーズンぶりの白星も手にできるはずだ。 ラツィオ(イタリア) 【4-1-2-3】  FW:マッティア・ザッカーニ(ペドロ・ゴンサレス)、チーロ・インモービレ(バレンティン・カステジャーノス)、フェリペ・アンデルソン(グスタフ・イサクセン)  MF:ルイス・アルベルト(マティアス・ベシーノ)、鎌田大地(マテオ・ゲンドゥージ)  MF:ダニーロ・カタルディ(ニコロ・ロヴェッラ)  DF:エルセイド・ヒサイ(ルカ・ペッレグリーニ)、アレッシオ・ロマニョーリ(パトリック)、ニコロ・カザーレ(マリオ・ヒラ)、アダム・マルシッチ(マヌエル・ラッザリ)  GK:イバン・プロベデル(クリストス・マンダス)  2000年以降リーグ優勝から遠ざかっているが、昨シーズンは2年目のマウリシオ・サッリ監督の下、大胆なパフォーマンスを着実に勝ち点につなげ2位でフィニッシュ。オフには中盤の主軸だったセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチをサウジアラビア(→アル・ヒラル)に放出したものの、鎌田大地(フランクフルト→)を後釜に迎えて戦力的にはイーブンにした。  2021年MLS得点王のバレンティン・カステジャーノス(ジローナ→)と昨季デンマークリーグで最多ゴールを奪ったグスタフ・イサクセン(ミッティラン→)の前線の新戦力や、マテオ・ゲンドゥージ(マルセイユ→)ら実力者にも期待がかかる。

スペインの名将がトルコ戦を総括「久保建英が際立っていた」「戦術的エラーが目立った」

「すばらしい勝利を飾ったドイツ戦から、先発メンバーは左サイドバックの伊藤洋輝を除いてガラリと変わっていた。多くの選手をテストする意味合いが強かったのだろう。いいプレーがあったのは間違いないが、その点でいくつか課題も出ていた」  スペイン人指導者、ミケル・エチャリはそう言って、日本がトルコを4-2で下した試合について振り返っている。  エチャリはレアル・ソシエダ、エイバル、アラベスというクラブで、さまざまな役職に就いてきた。とりわけ戦術指導に優れ、バスクサッカー界においては重鎮である。たとえばレアル・ソシエダのイマノル・アルグアシル監督も”教え子”のひとりだ。  その戦術家は、日本の戦いをどう見たのか? 「まず、フォーメーションとコンセプトはドイツ戦から変わっていない。4-2-3-1が基本だが、守るときは4-4-2になる。ドイツ戦はトップ下の鎌田大地が戦術軸になっていたが、同じトップ下に抜擢された久保建英が、その役目を担っている。  11人のなかでは久保が明らかに際立っていた。下がってボールを受け、叩いて攻め上がる。その間、味方がスペースを作るのに合わせて動き、自らスペースを使い、前方が開けると、脅威を与えるドリブルを見せた。プレーに連続性を感じさせ、常に敵味方の動きに注意を払い、その裏をかく動きができている。  15分、久保が左サイドで始めたプレーからだった。田中碧を経由して右サイドまでボールを展開し、中に入ったところで伊藤敦樹が左足で突き刺した。連携にやや難があるチームにあって、久保は自らボールを運び、味方の優位を作っていた。戦術的にも、技術的にもトッププレーヤーと言える。  28分、久保は味方が奪い返したボールをすかさず左足で狙っている。決断が速い。しかも鋭い軌道のボールで、非常に高いレベルのプレーだった。  久保のシュートをGKがこぼし、それを中村敬斗が押し込んでいるが、注目すべきはチーム戦術だろう。3人の選手がこぼれ球を狙うポジションをとっていた。とてもいいシーンで、必然の得点である。  【日本の3点目に注文】  36分には自陣で毎熊晟矢がボールを奪うと、一気にゴールへ殺到している。カウンターで日本は優位に立ち、中村がゴールを決めた。これで3-0になったわけだが……。戦術的には合格点をつけることはできない。  このシーンは、毎熊が前へ運んだところで、トップの古橋亨梧はマークを引きつけてニアに入り、そのスペースに久保、もしくはファーポストの中村が待つのが定石だった。古橋は得点を自らが狙いすぎ、周りを生かすプレーが疎かになっていた。トルコは右サイドの選手が戻らず、拙守に助けられて、結果的に中村はフリーになったが、戦術的な動きでもっとロジカルにフリーになれていたはずだ。  古橋は俊敏性やゴールの形はすばらしい選手だ。ただ、たとえば岡崎慎司のように戦術的に成熟できないと、1トップは苦しいだろう。うまくいかないことで、どこか焦りも抱えていたのかもしれない。ややパワーにも欠ける選手だけに、せっかくのシュート精度まで悪くしていた」  エチャリはあくまで建設的に解説している。3-0になったが、日本はトルコを圧倒していたわけではなかった。戦術的エラーが目についたという。 「37分、堂安律はインサイドへのスルーパスを狙い、そのトライそのものは失敗したが、悪くなかった。相手のカウンターにすぐ反応したのもよかったが、相手に運ばれてしまったところ、右サイドバックが前に出て守備をしていたにもかかわらず、右アタッカーの堂安がカバーを怠っていた。強豪との一戦では、こうした”さぼり”は大きな代償を払うことになるだろう。  44分、日本はFKを与えると、ロングボールをファーポストで折り返され、正面に弾いたボールをヘディングで押し込まれている。前半終了間際のFKで、守りきる工夫がほしかった。GKのプレーもやや不安定だった。  また、左サイドバックの伊藤(洋)はことごとく背後を取られている。左サイドからのクロスに対し、ボレーで狙われたシーンがあったが、なぜ直前にマークを外したのか? 失点にならなかったのは、単なる僥倖(ぎょうこう=思いがけない幸運)だろう。また、ひどいコントロールでボールを相手に渡し、カウンターも浴びた。61分にも自らが潰すべき相手を見失い、クロスを入れられ、トルコに2点目を奪われている。目の前のアタッカーをみすみす自由にして、だ。味方が触ってコースが変わった”不運”に見えるかもしれないが、必然の失点だろう。  伊藤は72、73分もたて続けにポジショニングが悪かった。簡単に前に入られ、決定的なプレーを許していた。キックは悪くないが、正直、左サイドバックのポジションはどうなのかと思う」  エチャリは端的に説明しながら、最後にこう試合を総括している。 「後半10分のプレーのように多くの選手が関わるチームプレーもあった。攻め寄せ、セカンドボールを拾い、クロスを入れ、最後は田中がミドルを放ち……と、攻守が潤滑に運ぶ時間帯もあった。最初に記したように久保は違いを見せたし、田中はアップダウンするパワーを感じさせ、交代出場の伊東純也は守備&カウンターで特徴を出していた。  ただ、他はドイツ戦と比べると、必ずしもフィットしていなかった。  もっとも、これは監督としてベストチョイスを見つけるプロセスだろう。その点では収穫の多い一戦だった。欧州遠征の連戦で8得点3失点は、堂々とした数字だ」

日本代表メンバーに10代の選手はゼロ「変わらなければいけない」のは日本ではなく、選ぶ側の森保一監督だ

 エルサルバドル戦(6月15日)、ペルー戦(6月20日)を戦う日本代表メンバーが以下のとおり発表された。 GK シュミット・ダニエル(シントトロイデン)、中村航輔(ポルティモネンセ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島) DF 谷口彰悟(アルラヤン)、板倉滉(ボルシアMG)、森下龍矢(名古屋グランパス)、伊藤洋輝(シュツットガルト)、瀬古歩夢(グラスホッパー)、菅原由勢(AZ) MF/FW 遠藤航(シュツットガルト)、伊東純也(ランス)、浅野拓磨(ボーフム)、古橋亨梧(セルティック)、守田英正(スポルティング)、川辺駿(グラスホッパー)、鎌田大地(フランクフルト)、相馬勇紀(カザピア)、三笘薫(ブライトン)、前田大然(セルティック)、旗手怜央(セルティック)、堂安律(フライブルク)、上田綺世(セルクル・ブルージュ)、川村拓夢(サンフレッチェ広島)、中村敬斗(LASK)、久保建英(レアル・ソシエダ)、川﨑川崎颯太(京都サンガ)  3月のウルグアイ戦、コロンビア戦のメンバーから外れた選手は谷晃生、半田睦(いずれもガンバ大阪)、角田涼太朗、西村拓真(いずれも横浜F・マリノス ※角田はケガのため辞退)、町田浩樹(ユニオン・サン・ジロワーズ)、冨安健洋(アーセナル ※ケガのため辞退)、橋岡大樹(シントトロイデン)、藤井陽也(名古屋グランパス)、バングーナガンデ佳史扶(FC東京)、田中碧(デュッセルドルフ)、町野修斗(湘南ベルマーレ)の11人。  代わって招集された選手は中村、谷口、森下、古橋、川辺、相馬、旗手、川村、川﨑の9人。森下、川村、川﨑の3人は初招集になった。  多くの選手を入れ替えた点は評価したい。だが中心になるとおぼしき選手に大きな変更はない。それこそが中心選手たる所以だと言えばそれまでである。しかし、そうした概念を大変革すべき時期を迎えていることも確かなのだ。  ご承知のようにW杯を取り巻く環境は今回、大きく変化した。2026年W杯の本大会出場枠は32から48に拡大。アジア枠に至っては4.5から8.5にほぼ倍増した。2枠だった1994年W杯では落選したが、3.5枠になった1998年W杯以降、日本はプレーオフに回ることなく、ほぼ余力を残しながら本大会出場を果たしている。 【W杯予選は事実上、無風区になった】  突破の確率およそ9割。少なく見積もっても8割。予選落ちはまさかの大事件に相当するというなかで戦ってきた日本だが、8.5枠になれば状況は一変する。ハードルは思いきり下がる。実力と枠の関係を考えたとき、日本は世界で最も楽な、事実上の無風区に身を置いている。  W杯本大会に向けた強化策も、それに呼応した中身に改革されなければならない。大きな発想の転換が不可欠である。その自覚や認識を3月のメンバー発表に続き、今回も見て取ることができなかった。3月は森保一監督にとって続投初戦だった。新たな門出を祝う一戦と位置づければ、それに相応しいメンバーで臨むことにギリギリ納得することができたが、今回はそうはいかない。 代表メンバーについて記者会見で答える森保一監督(右)と山本昌邦ナショナルチームダイレクター  三笘、鎌田、久保、守田、遠藤、板倉、堂安ら、実力、実績ともに十分な選手を、前回に続き今回もすべて選ぶ必要はない。筆者はそれこそが新たな局面を迎えた代表強化策のあるべき姿だと固く信じている。W杯本大会まで丸3年以上あるいまから中心選手を決め、チームを作る必要などないのだ。  この代表選手発表の記者会見では、現在アルゼンチンで行なわれているU-20W杯を引き合いに出した質問が出た。 「本日、日本が戦ったコロンビアにはA代表選手がいる。世界的にも各国で10代の代表選手が目につく。だが日本のU-20には代表に呼ばれた選手は誰もいない。問題ではないのか」  森保一監督はこう答えた。 「日本が世界で戦っていくために変えていかなければならない点、変わっていかなければならない点だ」  かたわらに座る、代表監督を評価する立場の山本昌邦ナショナルチームダイレクターもそれに応えるように、こう続けた。 「そういった意味では今回、よく川﨑(21歳)を選んだなと。よく見ている」  10代の選手は、この会見が行なわれた8時間ほど前に終了したブライトン対マンチェスター・シティ戦のピッチにも4人、立っていた。そのなかのひとりであるファクンド・ブオナノッテ(ブライトンの右ウイング、18歳)は、すでにアルゼンチン代表歴がある選手だが、自国で開催されているU-20W杯には出場していない。世界にはそうした選手がゴロゴロいる。 【知名度の高い選手を外せない理由】  将来を嘱望される18歳の代表選手にとって、U-20W杯に出場することと、マンチェスター・シティと戦うこととどちらが有益か。将来のためになるか。答えは見えている。  18歳でアルゼンチン代表に選ばれる理由は、もちろん能力が高いからだろうが、代表チームにそうした若手選手が入り込む余地があるからでもある。ベストメンバーでは常に戦わない文化である。チームの核となる実力者でもあえて招集しない。手を抜くわけではないが、あえて休ませるという考え方が普通に浸透している。  日本にその文化はない。日本代表戦といえば、国立競技場を満杯に埋めたなかで行なわれるものと決まっている。強化と言いながら、実際は半分、興行だ。そこにはテレビの視聴率やスポンサーのしがらみも関わっているものと推察される。三笘、久保、鎌田ら知名度の高い中心選手は、そうした意味で外せない選手になっている。エルサルバドル、ペルーを相手にした場合でも、だ。  この日本代表を取り巻く産業構造下に、10代の若手をせっせとテストする余地は存在しない。監督、協会首脳陣の保身もあるだろう。代表は常に勝たなければいけない集団だと称し、勝ちやすいメンバーで臨もうとする。  10代の選手が代表チームにいないのは、まさに代表監督の責任であり、サッカー協会の責任だ。「変えていかなければならない点、変わっていかなければならない点」と言う森保監督の言葉は、どこか他人事に聞こえる。21歳の川﨑を加えただけで、さすがと持ち上げるナショナルチームダイレクターも同様に見える。  その次に投げかけられたのは以下の質問だった。 「落選した町野、伊藤涼太郎(アルビレックス新潟)、大迫勇也(ヴィッセル神戸)は当落線上だったのか」  森保監督はこう答えた。 「ここにいるメディアの皆さんもそうですし、この映像をいま見聞きしているファンの方もそうですが、それぞれ推している選手がいて、フラットに見ていると言っても、人それぞれ違うと思います……(中略)……誰かを推すという話をするときには、皆さん、誰を外すかという話も同時に準備して質問していただけたらと思います」  ならばこう答える。欧州でバリバリに活躍している中心選手を外せと。当選確率90数%の事実上の無風区を戦う、世界で最も楽な立場にいる代表監督であるにもかかわらず、10代選手を26人のなかにひとりも加えることができない。代表監督失格だというのが率直な感想だ。  全く違った概念で戦わないと、日本は世界から遅れていく。U-20W杯にも参加しないブライトンのブオナノッテが、筆者には眩しく見えて仕方がないのである。

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