Tuesday, June 6, 2023

土星の衛星エンケラドゥスに9600kmの巨大水柱、ウェッブ望遠鏡が発見

https://images.forbesjapan.com/media/article/63605/images/main_image_97c22c25fdb01d74b7fe0857439ba5cf932a1bbd.jpg ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、土星の小さな衛星エンケラドゥスから新たに巨大な水蒸気の水柱が宇宙に向けて放出されているところを観測した。 水柱は全長約9600kmと推定され、エンケラドゥスからこの大きさのものが放出された初めての観測例だ。 最大の目標 直径わずか500kmと小さな衛星でありながら、エンケラドゥスは地球外生命を探す宇宙生物学者にとって最大の目標となっている。というのも、エンケラドゥスはクレーターだらけで「トラ縞模様」の氷地殻(こおりちかく)の下に、深さ40kmの水の海と岩石質の海底が存在しているからだ。 エンケラドゥスの地下海(ちかかい)のような過酷な環境には、微生物や「extremophiles(極限環境生物)」が存在している可能性があると考えられている。 主として土星の引力によって、その衛星は地質学的にも活発であり、岩石コアは生命が存在するために不可欠と考えられる海に、エネルギーと熱を供給している。 しかし、その温かくて塩辛い海に目のない不気味な海洋生物がいないことはほぼ間違いない。なぜなら、そこで維持可能なバイオマス(生物量)の総量は、クジラ1頭分より少ないと計算されているからだ。  ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影したエンケラドゥスの巨大な水柱。その大きさは衛星自身の40倍以上におよぶ。挿入図は探査機カッシーニが写したエンケラドゥスで、赤い四角は、ウェッブ望遠鏡から見たエンケラドゥスが水柱と比べていかに小さいかを表している(NASA, ESA, CSA, STScI, G. Villanueva (NASA’s Goddard Space Flight Center), A. Pagan (STScI)) 衝撃的な発見 衛星の氷地殻の割れ目から、氷の粒子や水蒸気、有機化合物などの噴流を吐き出している間欠泉は、以前にも複数観測されている。NASAと欧州宇宙機関の探査機、カッシーニは長さ数百キロメートルにおよぶ噴流を発見しているが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見したものに匹敵する規模のものはかつてなかった。 「データを見ていたとき、自分は間違っているに違いないと思いました。衛星の20倍以上のサイズの水柱を見つけたことはあまりにも衝撃的でした」と、主著者でメリーランド州グリーンベルトにあるNASAゴダード宇宙飛行センターのジェロニモ・ヴィラヌエヴァはいう。「水柱は南極の噴出地域からはるか彼方まで広がっています」 噴出する水のスペクトル(NASA, ESA, CSA, STScI, L. Hustak (STScI), G. Villanueva (NASA’s Goddard Space Flight Center)) そこかしこにある水 ウェッブ望遠鏡の測定装置、NIRSpec(近赤外線スペクトログラフ)に搭載されている面分光ユニットのデータは、水蒸気が毎秒300リットル噴出していることを示唆している。 「エンケラドゥスは土星を比較的速く、わずか33時間で周回しています。土星を回る際、衛星とその噴流は基本的に水を吐き出していて、まるでドーナツのようなハローを残します」とヴィラヌエヴァは語った。「ウェッブの観測によると、巨大な水柱があっただけでなく、水はそれこそどこにでもありました」 その2022年11月9日の発見は、JWSTのGuaranteed Time Observation(GTO、時間保証観測)プログラム1250の一環として実施され、Nature Astronomyに掲載された。 氷の輪 さらにウェッブは、エンケラドゥスからの噴流が、氷と岩からなる土星の輪に供給されている様子を、初めて科学者たちに紹介した。観測によると、水分の約30%は土星のEリングに、70%はそれ以外の土星系に供給されているようだ。 NASAには、これらの巨大噴流にもっと近づくチャンスがあるかもしれない。2038年10月(予備日程は2039年11月)に打ち上げ、2050年に到達すると言われているEnceladus Orbilanderミッションでは、水柱のサンプルを採取することに特化して、探査機にエンケラドゥスを1日2回、200日にわたって周回させる予定だ。 その後探査機は衛星に着陸して数年間滞在し、衛星の地表に戻ってきた水柱物質のサンプルを採取する。それは、エンケラドゥスをあれほど明るく反射させているものの正体だ。 (forbes.com 原文)

8つの惑星が磁力で浮かぶ「Quantum Solar System」、テーブル上に太陽系を再現

自宅や職場にあるテーブルの上へ、太陽系を置いて眺めていたい――。そんな途方もない夢も、クラウドファンディングサービス「Indiegogo」で販売中の空中浮遊インテリア「Quantum Solar System(QSS)」ならかなえられる。 QSSは、直径が42.5cmある円盤の上を太陽と8つの惑星が磁力で浮かぶインテリア。太陽を中心にして、惑星がそれぞれの軌道を周回する。太陽の直径は8cmで、ランプとしての機能も備える。惑星は、本物と同じように動かすこともできれば、高速に動かすこと、特定日時の位置関係を再現することなども可能。 各惑星の表面に描かれた模様は、米航空宇宙局(NASA)から得た情報を参考にしていて、まるで本物を望遠鏡で眺めているよう。ただし、大きさや惑星間の距離は、インテリアとして成立するよう調整されている。 太陽の点灯や消灯、惑星の動きは、Bluetooth接続したスマートフォンのアプリから操作できる。APIも用意されていて、さまざまな機能を追加することもできる。 太陽が光らないモデルは549ドル(約7万6223円)から、光るモデルは649ドル(約9万107円)から購入可能。

宇宙人、土星の衛星に存在の可能性 巨大な水煙をNASAの宇宙望遠鏡が発見

宇宙人が土星の衛星に生息している可能性があるという。NASA(米航空宇宙局)のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、ガス惑星である土星の6番目に大きい衛星、エンケラドゥスからの巨大な水煙を発見した。 この水煙は6000マイル(約9700キロ)以上に及び、ロサンゼルスからブエノスアイレスまでの距離に相当する長さとなっている。 土星には100以上の衛星があるものの、エンケラドゥスだけが地球と比較可能な液体の水の海を持つ可能性が指摘されており、科学者らは地球外生命体が生息する見込みもあるとしている。 メリーランド州にあるNASAのゴダード宇宙飛行センターのジェロニモ・ヴィラヌエヴァ氏はこう話す。「このデータを初めて見た時、自分が間違っているに違いないと思いました。その衛星の20倍以上の水煙の発見はそれほどショッキングなことだったのです」 (BANG Media International/よろず~ニュース)

珠洲市の震度6強地震、市内で最大18センチ隆起…1~10センチの水平移動も確認

 石川県珠洲市で震度6強を観測した地震で、市内で最大約18センチの地盤隆起があったことが、衛星測位システムを使った金沢大と京都大の共同調査で判明した。得られたデータは地震発生のメカニズム解明などの手がかりになると期待されている。  調査は2021年9月から、地盤の動きを継続的に調べるために実施し、市内には5か所に観測装置が設置されている。隆起の大きさは、地震前後の数日間の平均値を比較して算出した。  隆起が最も大きかったのは震源の真上にあたる震央に近い日置ハウス(同市折戸町)で、自然休養村センター(同市馬緤(まつなぎ)町)の約9センチ、旧飯塚保育所(同市正院町飯塚)の約4センチと続いた。各地では、主に南西方向に約1~10センチの水平方向への移動も確認された。  調査した金沢大の平松良浩教授(地震学)によると、同市内では以前から地盤の隆起は起きていたが、通信会社のデータでは約2年半で計7センチほどだった。昨年6月の震度6弱の地震での隆起は1センチ以下だった。  得られたデータでは、海側から陸側に向かって近い方角で隆起していることから「逆断層型」の地震だったことも分かるという。  平松教授は「地震の断層運動がすごく大きいことが表れた数字だ。今後の地震活動を考える上で、(観測結果から)地下の断層モデルを推定して、地震が起きやすい場所を調べることが重要だ」と話している。

派手な体色は何のため? 春先に増えるコンクリートの赤いダニの正体

 5~6月になると、コンクリートの壁をちょこちょこと動きまわる小さな赤い虫たち。その正体は「カベアナタカラダニ」というダニの仲間だ。北半球に広く分布しており、国内でも北海道から沖縄まで幅広く見られる。  真っ赤な体色をしているが、人や動物の血を吸っているわけではない。とはいえ、捕食者から逃れるために、自分がおいし くないことを知らせる「警戒色」というわけでもないようだ。  では、どうして赤いのか――。そんな素朴な疑問の「答え」が最近の研究で明らかになった。  法政大などの研究チームが注目したのは、その生息環境だ。  カベアナは春先になると卵からかえり、梅雨が始まるころまでコンクリートなどの日当たりの良い場所で花粉をエサにして活動する。コンクリートの上では、常に強い紫外線や熱のストレスにさらされ続けている。  これまでの研究で、同じように紫外線を受けやすい植物上に生息するミカンハダニは、抗酸化作用の強いカロテノイドの一種で赤い色素成分「アスタキサンチン」を体内に多く蓄積することで、紫外線や熱による酸化から身を守っていることが知られていた。  そこでチームは、カベアナが保有するカロテノイドの量を調べた。すると、ミカンハダニの127倍の濃度のアスタキサンチンを蓄積していたという。真っ赤な体色は、アスタキサンチンによるものだった。  法政大の島野智之(さとし)教授は「小型の節足動物の中では圧倒的に多い。長年なぞだった赤い体色は、紫外線と熱による過酷な環境を生き抜くためだった」と考える。

落雷でこれまで地球上で存在が確認されていない新物質が生成されたとの報告

判明するなど、まだまだ科学的な発見の尽きない現象でもあります。新しく、木に落雷した跡地で見つかった閃電岩(フルグライト)という鉱物の中から、宇宙の物質と地球上の鉱物の間にあるギャップを埋めるまったく新しい鉱物グループが見つかった可能性があるとの論文が発表されました。 Routes to reduction of phosphate by high-energy events | Communications Earth & Environment https://doi.org/10.1038/s43247-023-00736-2 USF geoscientist discovers new phosphorus material after New Port Richey lightning strike https://www.usf.edu/news/2023/usf-geoscientist-discovers-new-phosphorus-material-after-new-port-richey-lightning-strike.aspx Lightning Struck A Tree And We Got A Brand New Phosphorus Mineral | IFLScience https://www.iflscience.com/lightning-struck-a-tree-and-we-got-a-new-phosphorus-mineral-68429 以下は、サウスフロリダ大学の地球科学者であるマシュー・パセック氏らがフロリダ州の落雷現場から回収した、「雷の化石」ことフルグライトの写真です。このフルグライトは中が空洞になったチューブ状のガラス質でできており、大きさは直径2センチ、長さ7センチでした。 by Matthew Pasek/University of South Florida この物質を構成するリンやカルシウムといった元素はいずれも一般的なものなので、一見するとそれほど珍しくないように思えます。しかし、研究チームによると自然界にあるリンの鉱物は酸化数が「+5」のものと、「-1」のものしか見つかっておらず、今回見つかった酸化数が「+3」のものは、天然の鉱物からは見つかったことがないそうです。 パセック氏はこの物質について「これが地球上に自然に存在するのは見たことがありません。いん石や宇宙空間でよく似た鉱物が見つかることはありますが、まったく同じものは見たことがありませんでした」と話しました。 論文の共著者であるサウスフロリダ大学のTian Feng氏が、フルグライトから見つかった物質を再現しようと試料を1000度まで加熱しましたが、実験室内で作ることはできませんでした。これは、「+3」の酸化数のリン鉱物を得るには、非常に特殊な条件と適切なタイミングがそろわなければならないことを示しています。研究チームは、試しにフルグライトに含まれていた鉄やケイ素も添加してみましたが、結果は変わりませんでした。 研究チームは、フロリダ州のような湿潤な気候では樹木の根に鉄分が蓄積されることが多いことや、フルグライトで見つかった物質に微量の鉄分が含まれていることなどから、「この生成物は落雷によって木に含まれている炭素と木の根に蓄積された鉄分が燃焼してできたもの」と考えています。 […]

超音速の「見えない」ブラックホールが銀河間空間を進行中

https://images.forbesjapan.com/media/article/62959/images/main_image_f27e466e93d048d0369bc3c6058cce6e49c51617.jpg ハッブル宇宙望遠鏡を使用している研究チームが、科学者の間で超巨大ブラックホールと考えられているものが、銀河間空間を猛スピードで駆け抜けているところを発見した。 その物体は太陽の2000万倍の質量を持ち、3つの銀河が合体した後、ブラックホールが定期的に存在する銀河の中心から宇宙へ飛び出したと考えられている。 その移動は非常に速く、もし太陽系の中にあれば、地球から月まで14分で移動できる。 The Astrophysical Journal Lettersに掲載された研究によると、そのブラックホールが通った後には、新しく生まれた星からなる長さ20万光年におよぶ痕跡があることが明らかになった。それは過去に見られたことのないものだった。 発見は偶然だった。「ハッブルの画像に目を通していたとき、小さな一筋に気づきました」とコネチカット州ニューヘイブンにあるエール大学のピーター・ヴァン・ドックムはNASAが「目に見えない怪物」と呼んでいる物体について説明した。 「それはこれまで見たことのある何ものにも似ていませんでした」   ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブ画像には、見慣れない線状の痕跡が写っていた(NASA, ESA, PIETER VAN DOKKUM (YALE); IMAGE PROCESSING: JOSEPH DEPASQUALE (STSCI)) 「私たちが見ているのは、ガスが冷却されて星々を形成することのできるブラックホールが残した痕跡だと考えています」とヴァン・ドックムはいう。「見えているのは、船が通った後にできるものと同じような、ブラックホールの後にできた『航跡』です」 新しく生まれた星々の帯の幅は、天の川銀河の2倍。放浪するブラックホールが目の前のガスとちりをかき混ぜ加熱して、航跡の中に星が形成される理想的状態を作りだした結果のものだ。ブラックホール自体がガスとちりを消費しない唯一の理由は、その移動速度が速すぎるためだ。 「ブラックホールの前方にあったガスは、ガスの中を通過するブラックホールの超音速、超高速衝突のために衝撃を受けます」とヴァン・ドックムは言った。「正確な仕組みはまだわかっていません」 追跡観察は、ハワイ州マウナケアにある世界最大の光学赤外線望遠鏡であるケック天文台で実施された。次は、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とチャンドラX線観測衛星を使用した観測で、ブラックホールの存在を確認する予定だ。 NASAが2027年に打ち上げを予定している広角のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が、宇宙のどこかにあるこれらの奇妙な形の物体をもっと見つけてくれることが期待される。 (forbes.com 原文)

暗黒物質はとても軽い粒子でできている? 重力レンズ効果から推定

宇宙には恒星の大集団である銀河が無数に存在しています。その多くは回転していますが、銀河が銀河としてこの宇宙に存在している以上、銀河の回転速度は重力で恒星を引き留められる限界の速度以下のはずです。 ところが銀河の回転速度を実際に調べてみると、恒星の数をもとに見積もられた銀河の質量から推定される重力では恒星を引き留めることができないほどの高速で回転していることがわかっています。この結果は、光などの電磁波では観測することができず、重力を介してのみ間接的に存在を知ることができる「暗黒物質(ダークマター)」の存在を示唆しています。理論上、その量は電磁波で観測できる普通の物質の4倍以上もあることになります。 暗黒物質の正体は現在でも不明ですが、未知の素粒子や、それらの素粒子が結合してできた複合粒子が有力な候補の1つとして長年唱えられています。この場合、暗黒物質は重力の他に弱い相互作用 (※1) という力を通じてのみ検出可能な粒子であると考えられます。弱い相互作用は到達距離が極めて短く、検出は困難です。暗黒物質は私たちのすぐ隣に存在するかもしれませんが、まるで幽霊のような性質を持つために探索の目を逃れ続けていると考えられています。 ※1…弱い相互作用: 最も基本的な4つの力のうちの1つであり、物質を構成する基本的な素粒子であるクォークの種類を変更する唯一の力である。その到達距離は1京分の1m以下と極めて短く、原子核内部に収まってしまうほどである。 暗黒物質を構成するのが未知の粒子だとすれば、それはどのような性質を持つのでしょうか? 暗黒物質の存在が疑いようもないと判明した1970年代、それは「WIMP(Weakly interacting massive particles)」と呼ばれるものであると考えられていました。WIMPはかなり重い粒子で、質量は少なくとも陽子の10倍と推定されています。 重い粒子は軽い粒子よりも動かされにくいため、熱などのエネルギーを与えられてもほとんど動きません。このため、WIMP同士は集合して大きな塊を作りやすいことになります。これは、現在の宇宙に暗黒物質が塊で存在するという観測結果と一致する性質です。また、WIMPを構成するであろう未知の粒子の正体は、複数の理論で予言されています。このため、WIMPは暗黒物質の有力候補でした。 ただし、暗黒物質の正体はWIMPであるという予測には「重力レンズ効果」をうまく説明できないという難題がありました。一般相対性理論によれば、重力は時空の歪みだと表現されます。光には空間をまっすぐ進む性質がありますが、時空が歪んでいるとその歪みに沿って進みます。例えば遠方の銀河の像は、それより手前にある重力源によって光の進行方向が曲げられることで、歪んだ像となる場合があります。このような現象は重力レンズ効果と呼ばれています。 重力レンズ効果を受けた銀河の像の歪み度合いから逆算すると、重力源の強さや物質分布を知ることができます。重力レンズ効果は、簡単には観測できない暗黒物質の存在量や分布、そして性質を知るための重要な手がかりとなるわけです。 ところが、暗黒物質がWIMPでできていると仮定した場合、予測される重力レンズ効果と実際の観測結果にズレが生じることが分かりました。WIMPでできた暗黒物質の塊は比較的綺麗な時空の歪みを生じさせるため、歪められた銀河の像も比較的綺麗な形をしているはずです。しかし、実際に観測された像はかなり複雑な形状をしていることが分かりました。このような像は、時空の歪みがかなりデコボコしていなければ説明がつきづらく、暗黒物質の密度にかなりムラがあることを意味しています。WIMPの性質からは、そのような分布は予測しがたいものとなっていました。 【▲ 図1:暗黒物質による重力レンズ効果の概要。暗黒物質がWIMPのような重い粒子の場合、時空の歪みは単純である (左) 。これに対しアクシオンのような超軽量粒子の場合、時空の歪みは複雑になる (右) (Credit: University of Hong Kong)】 WIMPのように重い粒子では重力レンズ効果の予測と現実が一致しないことから、暗黒物質の正体は「アクシオン」 (※2) のような「超軽量粒子」だとする予想もあります。超軽量粒子は電子よりもはるかに軽いため、WIMPのようにまとまって塊になりにくいという問題があるものの、波としての性質 (※3) が強く表れるため、互いに干渉しやすいという特徴があります。超軽量粒子の干渉は暗黒物質の塊の中で密度にムラができやすくなることを意味するため、時空の歪みがかなりデコボコしているという観測結果と一致します。このような性質を持つ超軽量粒子はWIMPと並ぶ暗黒物質の有力候補ですが、どちらがより正しそうなのかは未解決の問題でした。また、WIMPと超軽量粒子では重さが文字通り桁違いの差があり、暗黒物質以外の面でも性質が大きく異なるため、背景となる理論の構築にも影響を与えます。この点でも、暗黒物質の正体がWIMPと超軽量粒子のどちらであるかは興味深い疑問です。 ※2…アクシオン: 素粒子物理学の基本理論である標準模型では予言されていない素粒子の1つ。電子の1億分の1以下と極めて軽いながら質量があるとされているため、暗黒物質の有力候補として長年探索が行われているが、未発見である。 ※3…この宇宙にある物質や力は、常に粒としての性質と波としての性質の両方を持っている。ただし大雑把に言えば、重い粒子であるほど粒としての性質が現れやすく、軽い粒子であるほど波としての性質が現れやすい傾向にある。暗黒物質候補の超軽量粒子は、WIMPと比べてずっと軽いため、波としての性質が現れやすい。 香港大学のAlfred Amruth氏らの研究チームは、重力レンズ効果による銀河の像の歪みをモデル化し、実際の観測結果と照らし合わせる作業を行いました。近年、技術革新によって銀河の像の高精度な撮影ができるようになったため、暗黒物質の細かい分布構造から予測される像の歪みと、実際の写真とを細かく比較できるようになりました。WIMPと超軽量粒子それぞれの理論に従ったモデルを構築し、どちらの方がより実際の写真に近いかどうかを比較検討できるようになったのです。 【▲ 図2: クエーサーHS 0810+2554の画像。重力レンズ効果によって複数の像に分裂している(Credit: NASA, ESA, A. Nierenberg (JPL), T. Treu (UCLA))】 研究チームがWIMPと超軽量粒子のそれぞれのモデルを比較検討した結果、「暗黒物質は超軽量粒子でできている」とするモデルの方が、実際の観測成果とよく合致することが示されました。 今回の研究では、2001年に発見されたクエーサー「HS 0810+2554」に対するモデル適用の結果が特に重要でした。HS 0810+2554は重力レンズ効果によって像が4つに分裂していますが、モデルを利用して分裂後の位置や明るさの予測を行ったところ、超軽量粒子のモデルでは全ての像の再現に成功したのに対し、WIMPのモデルではほとんどの場合失敗しました。このため、暗黒物質は超軽量粒子でできているという可能性が高まりました。 暗黒物質は超軽量粒子でできているという予測は、他の研究とも矛盾しません。例えばWIMPは探索開始からほぼ半世紀経った現在でも未発見です。未探索の範囲にある粒子は余りにも大きい質量を持っているため、仮にその領域にWIMPが存在したとしても、暗黒物質としての性質を満たさないと考えられます。 また、超軽量粒子の波としての性質は「衛星銀河」の観測結果とも合致します。天の川銀河の周囲には小さな銀河である衛星銀河が50個ほど発見されていますが、これは標準的な銀河系形成理論による予測と比べて大幅に少ない数です。もしも暗黒物質が超軽量粒子で構成されているとすれば、超軽量粒子の波としての性質が特定の質量よりも軽い銀河の形成を妨げるために比較的大きな衛星銀河しか形成されず、衛星銀河の数の少なさを説明できるのです。 さらに、超軽量粒子は標準模型 […]

観測史上最大の「紅炎」とらえた 星の重力振り切って宇宙空間へ放出

 京都大と国立天文台の研究チームが、地球から約400光年の恒星で、観測史上最大の質量を持つ超高速のプロミネンス(紅炎)をとらえた。恒星の重力を振り切って、宇宙空間へ放出されていたことも確認された。  プロミネンスは恒星の表面で起きるフレア(大爆発)に伴ってプラズマの固まりが噴出する現象。太陽でもよく知られている。  研究チームは、オリオン座の方向にあり、巨大なスーパーフレアをよく起こす「RS CVn型連星オリオン座V1355」という恒星に注目。京大岡山天文台(岡山県浅口市)にある、東アジア最大級の口径3・8メートルの望遠鏡と、NASAのTESS衛星を使って特定の波長帯の光で観測した。  2020年12月19日深夜に、この星からの光が増えていることを検出。太陽での最大級のフレアの約7千倍にあたる規模のスーパーフレアが起きていたことがわかった。  検出されたプロミネンスは秒速1600キロと過去最大級の速度で噴出し、V1355の重力圏から飛び出していた。また、このプロミネンスの質量は1兆トン以上もあり、太陽での最大級の100倍、観測史上最大であることもわかった。

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