Friday, December 8, 2023

「子どもの学力を伸ばす親」が“子どものやる気”を重視しないワケ

「うちの子、どうすればやる気を出して勉強するのだろう」。落ち着きがなく、勉強より「遊び」に気持ちがいっている小学生の男の子の「やる気スイッチ」を探したいと思う親は多いのではないだろうか。しかし、本人にやる気などなくても、きちんと勉強して学力アップさせることができると断言するのは、首都圏の有名中学に合格者を多く出している進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏だ。この記事では、富永氏の著書『男の子の学力の伸ばし方』から、男の子の学力を伸ばすためにまず知っておきたい「7つの特徴」について紹介する。(構成:小川晶子) 男の子には、母親が思う勉強の仕方が当てはまらない  男の子と女の子では、勉強の仕方がずいぶん違うようだ。  「自分が小学生のときは宿題もちゃんとやったし、計画を立てて勉強したし、国語も得意だったし……。それなのに、うちの息子は全然違う」と思っているお母さんは多いのではないだろうか。  筆者も小学生の息子二人を見ていて、自分とあまりにも違うので愕然とすることがよくある。  「まぁ小学生の男の子なんて、こんなもんでしょう」と放っておくか。それとも、男の子ならではの学力を上げる方法を知って、実行するか。  それによって大きな差が生まれるのかもしれない。  進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏は、「性差に着目した学習が大きな成果を上げる」と述べている。 脳科学の専門的研究で、女の子は右脳と左脳が早くからバランス良く育つのに対し、男の子は右脳ばかり先に発達し、左脳は遅れる ことがわかっています。 言語能力を司る左脳の発達が遅れた男の子が、なかなか国語の長文読解をできないのは当たり前なのです。 大人になれば、男も女もそれぞれ苦手分野をカバーできますが、脳が成長途上である子どもたちには、その影響が大きく出ます。それを無視して教えようとしたら、子どもたちに余計な負荷がかかるだけでなく、学習効果も半減します。(P.8)  右脳の発達にはテストステロンというホルモンが関係しており、男の子はこのホルモンが多いので右脳が先に発達するということらしい。  現代は性別によって育て方を変えることはあまり良しとされないが、脳の発達上、性差があるのは変えようのない事実なのだろう。  本書では、脳科学的な根拠と、進学塾で多くの子どもたちを指導してきた経験に基づき「男の子の学力を伸ばすための方法」が解説されている。 男の子の7つの特徴を知っておけばラクになる  「うちの息子、なんでこうなの?」と思っているお母さんにまず知ってもらいたいのは、「男の子の本能的な7つの特徴」だ。  うすうす思っていたことではあるが、あらためて提示してもらえると気分がラクになる。 1. 否定や指示・命令に弱い 2. 自分で失敗しないとわからない 3. 自分の力でナントカしたい 4. ご褒美・インセンティブで頑張れる 5. とにかく競争好きでライバル意識が強い 6. ハマりやすいが飽きっぽい 7. ちょっとした成功体験で一気に変わる  この7つの特徴を把握しておくだけで、お母さんの悩みはかなり減るのではないか。  とくに、自分には当てはまらない項目について「男の子はそういうものなんだ」と思うと余計な心配を抱えずにすむ。  筆者の息子の場合、「この算数の問題は難しいから、躓く子が多いらしいよ」と言うと急にやる気になって真剣に解きだし(5. とにかく競争好きでライバル意識が強い)、やはりわからなそうなので「こう考えるといいよ」とヒントを出そうとしたら、「うるさい!」と激怒(3. 自分の力でナントカしたい)。  その後しばらくその種の問題にハマってひたすら解き、新しい問題を出せと言ってくるのでだんだんこちらのほうがまいってきたが、3日後には飽きた(6. ハマりやすいが飽きっぽい)。  こういうことは、男の子の「あるある」なのだろう。 やる気スイッチが見つからなくても、志望校に合格できる  競争やゲームのようにすると、突然やる気になることはあるが、基本的に「勉強はやりたくない」ようだ。 母親たちは一生懸命、我が子の「やる気スイッチ」を探していますが、見つけることができないようです。なぜ見つからないかといったら、「ない」からです。(P.97)  進学塾に通って中学受験をし、難関中学に合格するような子は違うのだろう……と思っていたがそういうわけではないらしい。  VAMOSは、男子小学生でいえば開成、麻布、筑波大付属駒場といった難関中学校に多くの合格者を送り出しているという進学塾である。  「もともと優秀な子が集まっているのではないか?」と考えたくなるが、入塾テストを行わず、先着順に生徒を受け入れているという。 VAMOSでも、やる気スイッチを持った男の子などほぼゼロです。しかし、やる気スイッチのない子もちゃんと志望中学に合格します。実際に、「ウチの子は最後までやる気にならなかったけれど、受かりました」という、妙な安堵の声が親御さんからたくさん寄せられます。 これは、勉強をルーティン化し、生活の一部にしてしまったからです。(P.97-98)  「勉強をルーティン化し、生活の一部にする」際にも、先ほどの7つの特徴を知ってうまく使うことでうまくいく。  否定や指示・命令には弱いから、「ああしなさい、こうしなさい」と言うよりもルーティン化してしまうほうがはるかにいいのだ。  ご褒美を用意するのも、ルーティンの一つだ。たとえば、「今日の課題が終わったら、好きな動画を見ても良い」というようなルールにしてしまう。  そのほか競争にしたり、自由にやらせて失敗させたりしながら、勉強を生活の一部に組み込んでしまう。こうすれば、親のストレスも減るだろう。  「うちの子、どうすれば勉強するようになるんだろう」と少しでも思う方は、本書を参考にしてみてほしい。

「頭のいい人」が絶対に言わないこと・ベスト1

「頭のいい人が絶対に言わないことがあります」 そう語るのは、SNSの総フォロワー数は300万人を超え、YouTube動画の月間再生数は3億回を超えるなど、日本中で大ブレイクを巻き起こした、ひろゆき氏。「シンプルな考え方を知れてラクになった」「目からウロコが落ちまくった」と話題を巻き起こした彼の著書『1%の努力』『99%はバイアス』では、「どうすれば影響力を持てるのか?」「口のうまい人がトクする世の中で、どう生きるべきか?」などをマジメに語っている。そんな彼に、この記事では、「考え方の考え方」について聞いてみた。(構成/種岡 健) 正解を求める脳  あなたは、「正解」が好きでしょうか。  脳は、正解を求めます。隠し事をされたり、モヤモヤが残ると、「気持ち悪い」という状態になるからです。  子どもになぞなぞを出してみてください。  きっと、正解を知りたがってしょうがなくなりますから。  そのように、私たちの頭は「スッキリしたい!」という欲望に忠実です。  しかし、それによって「頭が悪いことを認めてしまう」ということにもなるのです。 「頭のいい人」が言わないこと  世の中には、「まだ正解がわからないこと」で満ち溢れています。 「テレポートはできるの?」 「髪が生える薬はできるの?」 「宇宙人はいるの?」  これらの疑問に対して、「100%イエスだ」とも「0%だ。ありえない」とも言い切れないのです。  しかし、その状態では、脳は気持ち悪いままです。 「どっちか正解を教えてほしい!」という欲望には抗えないんですよね。  そして、頭のいい人は、「わからない」という言葉をよく口にします。  曖昧な疑問に対して、「100%言い切れる」と言い出すのは、決まって頭の悪い人です。 「スッキリしないこと」に耐えられる?  ということで、頭のいい人は「100%」や「0%」とは言わない。というより、言えないんですよね。 「不可能とは言い切れない」 「まだわからない」  という言い方をする人は、信頼してもいい人です。  逆に、「100%」を多用する人は、あなたを騙そうとする怪しい人である可能性が高い。  そのように、スッキリしない状態に、あなたは耐えられますかね?  もし耐えられないのなら、潔く頭の悪い人生を送るしかないのかもしれません。 (本稿は、『1%の努力』の著者・ひろゆき氏へのインタビューをもとに構成したものです。) ひろゆき 本名:西村博之 1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。自身のYouTubeチャンネルの登録者数は160万人を突破。生配信の「切り抜き動画」が話題になり、ひと月の総再生回数は3億回を超えた。主な著書に、シリーズ50万部を突破した『1%の努力』『99%はバイアス』(ダイヤモンド社)がある。

頭が潰れているのに、なぜ胴体だけで動けるのか…ゴキブリの「不死身の肉体」がもつ恐るべき仕組み

なぜゴキブリは頭が潰れても死なないのか。静岡大学農学部の稲垣栄洋教授は「ゴキブリの体は、人間のように大きな脳が情報を処理するのではなく、複数の小さな脳や神経中枢を体の節目に分散させている。体を動かす命令系統が分散しているため、頭を潰したぐらいでは動きを止めない」という――。(第3回/全3回) ※本稿は、稲垣栄洋『ナマケモノは、なぜ怠けるのか? 生き物の個性と進化のふしぎ』(ちくまプリマー新書)の第4章(「こまった」生き物)を再編集したものです。 ゴミ捨て場に集まるゴミムシは、ゴミを食べない ①ミイデラゴミムシ ゴミムシとは、ひどい名前をつけられたものだ。 ゴミムシは、ゴミ捨て場に集まることから名付けられた。中でも、「へっぴり虫」や「へこき虫」と呼ばれているゴミムシがいる。その名のとおり、臭い屁(へ)をこくから「へこき虫」なのだ。 実際に、へこき虫は、屁をこくのだから、そう呼ばれても仕方がない。神さまはどうして、こんなぞんざいに扱われる生き物をお創りになったのだろう。 ゴミ捨て場に集まるゴミムシだが、じつはゴミを食べているわけではない。ゴミを食べに来た昆虫をエサにしているのだ。ゴミムシは肉食の昆虫なのである。 肉食性のゴミムシは、害虫も食べてくれる。そのため、ヨーロッパでは畑の害虫を退治するために、畑の中にゴミムシのすみかになる緑地を設けることがある。これはビートルバンクと呼ばれている。ビートルバンクは「ゴミムシの銀行」という意味だ。ゴミムシは、人間の役に立つ益虫だったのである。 ゴミムシの中には飛ばない種類が多い。ゴミムシは、前翅(ぜんし)が身を守るために堅くなっ ている。そして、後翅はその中で退化してしまっているのである。 ゴミムシはその代わり、すばやく走る能力を身につけている。他章でも述べたが、多くの昆虫は飛ぶことができるが、飛ぶためにはエネルギーを必要とする。そのため、飛ぶことをやめれば、その分のエネルギーで、よりたくさんの卵を残すことができる。 強烈な「おなら」で身を守る 飛んで移動したほうが良いのか、飛ぶのをあきらめてたくさんの卵を残した方がいいのか、昆虫の成功には常にこのジレンマがつきまとう。 多くの昆虫は飛んで移動することを選んでいる。しかし飛ばないゴミムシは、飛ばないことを選んでいる。飛ぶのをあきらめるというのは、かなりの勇気だ。 ゴミムシの中には、身を守るために、臭い汁を出すものがある。中でも見事なのが、ミイデラゴミムシである。ミイデラゴミムシは、つかまりそうになると、お尻からポンと大きな音を立てて、ガスを噴き出す。このようすが、おならをしているようなので、「へっぴり虫」や「へこき虫」と呼ばれているのである。 もちろん、ミイデラゴミムシは、ただおならをしているわけではない。ミイデラゴミムシが噴出するガスは、身を守るための武器である。ミイデラゴミムシの出すガスは悪臭がする。さらにこのガスは温度が一〇〇度に達するほど高温で、天敵の鳥やカエルに火傷(やけど)を負わすほどの威力がある。 それにしても、この小さな虫が、どのようにしてこれほどの危険なガスを体内に蓄えているのだろうか。 ミイデラゴミムシは、体内の器官でヒドロキノンと、過酸化水素という二つの物質を別々に生成する。この二つの物質はそれぞれ危険のない物質である。ヒドロキノンは、脱皮後の外皮を堅くするときに利用する物質であるし、過酸化水素は、細胞の生体防御反応に用いられる物質である。 敵を狙い撃ち、連続発射もできる ミイデラゴミムシは、危険が迫ると体内でこの二つの物質を混ぜ合わせて、酵素を加える。すると急激な化学反応が起こって、ベンゾキノンという高温のガスが生成される。そして、ミイデラゴミムシは敵に向かってその高温のガスを吹き付けるのである。 噴射口は肛門(こうもん)ではないから、けっしておならではない。しかも、おならと違って噴射口の向きを変化させて、敵を狙って発射させることができるし、連続発射も可能である。いたって高性能な武器なのだ。 驚くべきことに、二つの物質を混ぜ合わせた化学反応によって高温のガスを噴射するという仕組みは、ロケットエンジンの仕組みと同じである。ミイデラゴミムシは、どのようにしてこんな複雑な方法を身につけたのだろうか。どうやって、この化学反応を見出したのだろう。 現代の進化論では、進化は突然変異と環境に適したものが生き残るという淘汰(とうた)が、少しずつくり返されることによって起こると考えられている。しかし、少しずつの進化で、危険なガスを武器にする高度な仕組みを完成させられるのだろうか。ミイデラゴミムシの武器は、現代の進化論だけでは満足な説明ができないほど完成度が高いのである。 しかし、進化論の説明など人間が考えれば良いことだ。ゴミムシの暮らしには何の関係もない。だからね、「へこき虫」なんてひどい名前をつけられても、ゴミムシも、そのままでいいんだよ。 1秒間に200回ものスピードではばたく翅 ②イエバエ 「五月蠅い」と書いて「うるさい」と読む。 ハエはうるさい存在だ。これは、かの文豪の夏目漱石(なつめそうせき)の当て字だという。うまいことを言ったものである。もともとは、騒がしいことを「五月蠅(さばえ)なす」と言ったらしい。 それにしても、ハエはうるさい。追い払っても追い払っても、ハエはやってくる。ハエがいなければ、どんなに静かに暮らすことができるだろう。神さまはどうして、こんなうざい生き物をお創りになったのだろう。 ハエはブンブンという羽音がうるさい。じつは、ハエは一秒間に二〇〇回ものスピードではばたくことができる。そのため、ブーンという高い周波数のうるさい羽音を立てるのである。 一般的に、昆虫には翅(はね)が四枚ある。ところがハエには翅が二枚しかない。翅は四枚あると安定するが、すばやく動かそうとすると邪魔になる。そのため、ハエは、翅をすばやく動かせるように、後ろの二枚の翅が退化してしまっているのである。 こうして翅を二枚に減らしたことによって、ハエは高速で翅を動かすことを可能にし、さらに小回りの利く飛行を可能にした。そればかりか、退化した後ろの翅は、飛行を安定させるジャイロスコープのような役割を果たしている。そのため、ハエは、宙返りしたり、急旋回したり、まるでアクロバット飛行のように自由自在に飛びまわることができるのである。 足先に生えた細かい毛のすごい役割 ハエは、高い飛行能力を自らのものにしているのだ。それだけではない。ハエは、壁や天井に留(と)まることができる。天井ばかりか、つるつるした窓ガラスにも平気で留まっている。まるで重力など感じていないかのようである。 ハエは、どのようにして垂直な壁や天井に留まることができるのだろうか。ハエの足先には細かい毛がたくさん生えているが、この毛からは、粘着力の強い分泌液が出ている。そのため、毛が吸盤のようになってハエの体を支えることができるのである。 さらに、ハエの足の先には、大切な役割がある。 やれ打つな蠅(はえ)が手をする足をする (小林一茶) 俳人、小林一茶が詠んだように、確かに、ハエを叩(たた)こうとすると、まるで懸命に命ごいをしているかのように、手をすり合わせているように見える。ハエの足の先の毛は味覚のセンサーにもなっていて、ハエは、エサに留まって足先で味を確認することで、エサかどうかを判断しているのだ。高度なセンサーとなっているのだ。 ハエが手足をこすっているのは、味覚の感度が鈍くならないように、手入れを怠らないのである。ハエは高度な飛行技術と高度なセンサーを持っているのだ。 だからね、うるさいと言われても、イエバエも、そのままでいいんだよ。 ゴキブリは3億年前から存在する「人類の大先輩」 ③ゴキブリ ゴキブリは嫌われ者である。見つかれば、悲鳴を上げられて、丸めた新聞紙で叩かれる。 別に人間に危害を加えるわけでもなければ、毒を持っているわけでもない。それでも、多くの人はゴキブリが嫌いだ。この世からゴキブリがいなくなってほしいと、だいたいの人が願っている。そして、今日も新聞紙を丸めてゴキブリを叩き続けるのだ。 ゴキブリと人間が共存できるはずがない。神さまはどうして、こんな嫌われる生き物をお創りになったのだろう。 よく知られていることだが、ゴキブリは三億年以上も前の古生代から、今とほとんど変わらない姿で地球に存在していた。ホモ・サピエンスと呼ばれる人類が現れたのは、およそ二〇万年前のことだから、人類はゴキブリの一〇〇〇分の一にも満たない時間しか地球上に存在していないことになる。ゴキブリは、人類よりも、ずっと先輩なのだ。 三億年前というが、それは恐竜も存在していなかった昔の話である。 それから、地球には大きな環境の変化が何度もあった。そのたびに、多くの生物が絶滅する「大絶滅」と呼ばれる事件が起こったのである。 2度の大量絶滅期を生き残る ゴキブリの誕生は古生代の石炭紀(三億五〇〇〇万~二億九九八万年前)であると言われる。 第2章でも紹介したように、たとえば、石炭紀の後のペルム紀(二億九九〇〇万~二億五一〇〇万年前)には、地球史上最も激しい火山活動とそれに伴う大規模な気候変動がおきた結果、史上最大の大絶滅が起こっている。 何と、地球の生き物の九〇パーセント以上が絶滅したというから、すごい。この大絶滅で、かつて古生代の海に繁栄していた三葉虫が絶滅したと言われている。そして、この大絶滅を生き残った恐竜の祖先が、後に活躍することになる。 古生代に続く中生代三畳紀(二億五一九〇万~二億一三〇万年前)にも、大絶滅があった。このときに、爬虫類(はちゅうるい)の多くが絶滅したと言われている。そして、二度の大絶滅で、生き残った恐竜がは爬虫類にかわって繁栄していくことになるのだ。 その後地球に君臨した恐竜も、白亜紀(一億四五〇〇万~六六〇〇万年前)の終わりにすべて絶滅をした。小惑星が地球に衝突したことが原因であると言われている。こうして、地球では繰り返し多くの生き物が滅び、そして、新たな生き物たちが進化を遂げていった。 […]

「北斗の拳」がトドメを刺した!?パチンコ大手“ガイア”が破綻した皮肉な理由

大手パチンコチェーンの「ガイア」(東京都中央区)とグループ6社が10月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債はガイア単体ベースで792億円(7月31日現在、ただしこのうち「公租公課」13億円は8月31日現在)、グループの簡易連結ベースでは1133億円(5月31日現在)となり、パチンコ業界では過去最大級の大型倒産となった。とはいえ、パチンコ業界はさぞ不景気なのだろうと思いきや、どうやらそうでもないらしい。業界誌の記者によると「遊技人口は2020年に底を打つなど、業界には明るさも見え始めている」という。実際、ガイアが裁判所に提出した民事再生の申立書をひもとくと、パチスロ新機種の人気沸騰が倒産の引き金となったことが明かされていた。(東京経済東京本部長 井出豪彦) 申立書に書かれた 経営破綻までの経緯  まず、ガイアの申立書から、同社の破綻に至る経緯をかいつまんで見てみよう。 <1.積極的な設備投資と短期性資金の増大>  ガイアグループは2015年以降、パチンコ・スロット業界への規制強化が継続し、市場規模が縮小するなかでも積極的な設備投資を実施した。そのため遊技機メーカーや建設業者への設備手形の残高が増加し、既存遊技機・店舗設備を利用した「セールス・アンド・リースバック」および「割賦バック」による調達も増加したところ、これらの短期性資金により資金繰りが圧迫されることになった。  なお、上記の「セールス・アンド・リースバック」というのは、所有物件を売却した後に同物件を借りること。「割賦バック」も所有物件をいったん売却するのは同じだが、5年以内の分割払いで買い戻す。いずれにしても売却したとき資金が捻出できるが、以後は毎月の支払いに追われることになる。 <2.新型コロナウイルス感染症の影響による売り上げ減少>  2020年3月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大により客足の落ち込みが始まり、翌月の緊急事態宣言発出後、ガイアグループの全店舗で約2カ月間の休業を余儀なくされた。その間だけで約100億円の粗利益を喪失した。営業再開後の6月以降も客足は直ちには戻らず、ガイアは同年6月29日の取引債務・金融債務(リース債務含む)の支払いを遅延してしまった。  取引債務の方は早期に払えたものの、金融債務の早期弁済は困難であったことから、同年7月、ガイアとグループ11社は「私的整理手続き」に入ることになった。なお、グループ11社のうち6社はすでにガイアに吸収合併されている。 <3.私的整理の経過>  ガイアグループは私的整理手続きを開始して以降、人員整理、遊技機投資の抑制、不採算店舗の撤退、店舗等の資産売却による負債の圧縮、スポンサーの探索等のさまざまな施策を講じてきた。しかし、コロナ禍の収束が見通せないなか、投資抑制の影響もあり、業績はむしろ緩やかに悪化していった。そのためスポンサーも見つからず、返済計画の策定が困難で、その後も金融機関・リース会社への残高維持の要請を繰り返す、いわゆる「暫定リスケ」を2022年3月まで継続した。  この間、2022年の年明け頃からコロナ禍が収束の気配を見せ始め、また、金融機関からの100億円の借り入れおよび有力店舗の売却により、まとまった資金調達ができたことから、同年3月に金融機関およびリース・割賦債権者に対して再生計画・返済計画を提示し、すべての対象債権者から同意を得ることができた。もっとも再生計画成立当時も売り上げ・粗利はコロナ禍前の60~70%程度の水準にとどまっていたことに加え、コロナ猶予を受けていた公租公課の支払い負担もあり、依然として資金繰りは厳しい状況が続いていた。 <4.資金繰りの悪化>  ガイアグループは2021年12月頃から遊技機投資の規模を見直すなど、業績を改善するための抜本的な施策を講じてきたこともあり、再生計画後の売り上げ・粗利は2022年12月頃までおおむね計画通りの水準で推移していた。  しかし、その後の業績は予想よりも低迷し、今年4月に「スマートスロットの有力機」が発売されたことによる業績の回復はあったものの、再生計画を大きく下回る状況が続き、赤字体質を脱却できなかった。  一方、再生計画の成立後に発売されたスロット6.5号機、スマートスロットの新台の集客力が想定以上に高く、競合他社が積極的に遊技機への投資を進めたことから、ガイアグループとしても、業界での競争力を維持するためにおおむね業界水準並みの遊技機投資を行うことを余儀なくされ、遊技機投資額が大幅に膨らむこととなった。  また店舗売却市場の冷え込みにより、店舗等の資産売却による資金化も容易ではない状態が続いた。そのため、短期性資金の調達により資金不足を補填せざるを得ず、資金繰りを圧迫する要因となった。  こうした状況を改善するため、ガイアグループは今年4月に金融機関から42億円の追加支援を受け、スポンサー探しを行うかたわら、7月初旬からは金融機関による大規模なファイナンスにも取り組んできた。しかし、夏頃よりガイアグループの信用不安のうわさが大きくなったことに加え、肝心の大規模ファイナンスも最終的に決裁を得るに至らなかった。  その結果、9月末の家賃、金融機関への元利金の支払い等約15億円を滞納したほか、10月2日期日の手形(遊技機関連設備メーカーへの支払代金)の決済を行うことができず、不渡りを出してしまった。  これに伴い、同日以降、遊技機およびその関連設備の新たな仕入れや新規の修繕工事の発注ができなくなり、また一部のメーカーからは遊技機等を店舗から引き揚げる旨の通告や、店舗のシステムを停止する旨の通告を受けるなど、店舗運営に大きな混乱が生じた。  また納付猶予を受けていた社会保険料についても、同月6日に猶予の取り消し処分を受け、同月13日には日本年金機構から滞納処分として、ガイアが店舗売上金の回収業務を委託している警備会社に対する売上金の送金請求権等への差し押さえを受けた。  このような窮状に対し、ガイアグループの経営陣であるオーナー一族は有効な打開策を有しておらず、むしろ短期的な資金策として手付金入手目的で有力店舗を安価で売却し始めた。実際、同月17日には有力店舗を想定売却価格の50%で売却し、その手付金で上述の未払いの社会保険料や遊技機関連設備メーカーへの支払いは行ったが、その他の家賃等の不払いを解消するには至っていない。  そのため、オーナー一族からガイアグループ各社の株式の担保提供を受けていた金融機関は同月30日に株式担保を実行し、オーナー一族以外のガイアグループの主要役職員に株式を譲渡し、新株主においてガイアの役員の入れ替えを行った。  かくして新経営陣がJトラストにスポンサー就任を依頼し、基本合意書を締結した上で、ガイアグループのさらなる事業価値の毀損(きそん)や二度目の手形不渡りが生じて事業継続が不可能となることを回避するために民事再生の申し立てを行った。 スマート遊技機バブルで進む 弱肉強食による業界の二極化  申立書の引用がやや長くなったが、以上の通り、最後は銀行主導でオーナーのクビを切って裁判所に駆け込む劇的な展開だったわけだ。  本稿では、申立書の「4.資金繰りの悪化」で触れられている「今年4月に『スマートスロットの有力機』が発売されたことによる業績の回復はあった」、「再生計画の成立後に発売されたスロット6.5号機、スマートスロットの新台の集客力が想定以上に高く、競合他社が積極的に遊技機への投資を進めたことから、ガイアグループとしても、業界での競争力を維持するためにおおむね業界水準並みの遊技機投資を行うことを余儀なくされ、遊技機投資額が大幅に膨らむこととなった」という記述に注目したい。  前出の業界誌記者によると、今年4月に発売されたスマートスロットの有力機というのは「スマスロ北斗の拳」を指すという。  なお、スマートスロットとスマートパチンコを総称して「スマート遊技機」というが、これは物理的なスロットのメダルやパチンコの玉がなく、電子的なメダルや玉で貸し出しや遊技を行う機種。電子的なメダルや玉を借りるための専用ユニットも合わせると、ホールはスマート遊技機1台当たり100万円程度の投資が必要となるという。 「スマスロ北斗の拳」などの一部のスマート遊技機の人気が過熱しており「ホール間で取り合いのような状況が生まれている」という。  実際、「スマスロ北斗の拳」を販売するサミーを子会社に持つ「セガサミーホールディングス」の今年4~9月期の業績は売上高が前年同期比47.3%増の2211億円、営業利益は同313.4%増の395億円と絶好調。専用ユニットのメーカーである「ゲームカード・ジョイコホールディングス」も同期の売上高189億円(前年同期比212.8%増)、営業利益60億円(前年同期は1億円)と、これまたとんでもない右肩上がりの業績となっている。  つまり、「スマート遊技機バブル」ともいえる現象が起きているのだ。来年春からはスマートパチンコでも新台が市場に投入されて人気を博す可能性があるという。長年パチンコ業界は射幸性の抑制を目的とした規制に悩まされてきたが、「近年明らかに風向きが変わった」(前出記者)。申立書にあった「スロット6.5号機」というのも従来の機種より出玉規制が緩和されているという。  こうしたなか、パチンコ参加人口である「遊技人口」は2020年に710万人と最盛期の4分の1以下まで落ち込んだものの、21年は720万人、22年は770万人と増加に転じた(日本生産性本部「レジャー白書2023」)。  ホール数については来年の新紙幣対応投資(パチンコホールは電子マネーが使えない)に耐えられず廃業するところがそれなりにあるため、まだ減少トレンドが続くが、体力のあるホールが廃業するところを買い取る動きも出るとみられる。  つまり弱肉強食の二極化が進むというわけだ。ガイアの場合は過去の積極投資が裏目に出て、人気のスマート遊技機に大金を投じる余力がなく、同業他社に集客力で負けてしまったのが、最終的に倒産の原因となってしまった。

「お金がない」と感じる人は「頭が悪くなる」ヤバい理由

人を動かすには「論理的な正しさ」も「情熱的な訴え」も必要ない。「認知バイアス」によって、私たちは気がつかないうちに、誰かに動かされている。人間が生得的に持っているこの心理的な傾向をビジネスや公共分野に活かそうとする動きはますます活発になっている。認知バイアスを利用した「行動経済学」について理解を深めることは、様々なリスクから自分の身を守るためにも、うまく相手を動かして目的を達成するためにも、非常に重要だ。本連載では、『勘違いが人を動かす──教養としての行動経済学入門』から私たちの生活を取り囲む様々な認知バイアスについて豊富な事例と科学的知見を紹介しながら、有益なアドバイスを提供する。 「お金がない」とき、人は近視眼的になる  お金がない人は、ときにおかしな行動をとる。  スクラッチくじや宝くじを買ったり、貯金をしなかったり、大きな借金をしたり。  残念ながら、それは習慣になり、結果としてさらにお金がなくなる。  とはいえ、「貧しい人がこうした選択をしてしまうのは、教育や社会環境のせいだけではなく、生まれ持った性格のせいだ」と容易に考えてはいけない。  それは大きな誤解だ。貧困とは誤った選択の結果ではなく、むしろ原因なのである。  多くの研究が、一時的な貧困が意思決定能力に影響を及ぼすことを明らかにしている。ただし、その影響も一時的なものだ。  貧しさは、「現状偏重バイアス」を引き寄せる精神状態をつくり出す。  このことは、収穫期が年2回(つまり収入も年に2回)のインドの農業従事者を対象にした数年前の実験がよく物語っている。  農業従事者のIQテストのスコアは、収穫直後と比べて、収穫期直前のほうがはるかに低かった。  収入を得た直後の人は、生活費のことで頭がいっぱいの人よりも賢明な判断を下せたということだ。  貧困は、被験者がテスト前に徹夜したときと同じくらいテスト結果に悪い影響を及ぼしていた(*)。 「私はインドの農業従事者ではない」と思った人もいるだろう。  しかし、思いがけずお金に困ると、誰でも近視眼的な反応をするものだ。  この心理状態は、お金と時間、どちらが不足しても引き起こされる。両者の影響が似ているためだ。  つまり、CEOが仕事の締め切りに追われるのは、貧しい人が支払いの締め切りに追われるのと同じように好ましくないことなのだ。 *学生へのアドバイス。親にこの話をしたら、試験前にお金を貸してくれるかもしれない。 (本記事は『勘違いが人を動かす──教養としての行動経済学入門』から一部を抜粋・改変したものです)

「Fランク大学に通うくらいなら高卒で就職したほうがいい」人手不足の裏で進行する偏差値至上主義の崩壊

少子高齢化で若手人材が不足している。高卒者の求人倍率はバブル経済期直後以来の高水準だ。文筆家の御田寺圭さんは「高卒者の求人倍率上昇は、日本の偏差値至上主義的な世界観が終わり始めていることを示している。『大卒でなければ社会人として務まらない』というのは、人余りの時代に作られた神話だったのだ」という――。 東京大学前で受験生たちを襲った事件 去年1月、大学入学共通テストの当日に会場となっていた東京大学前で受験生を刃物で刺傷した通り魔事件があったのを覚えているだろうか。その事件の犯人は当時高校2年生だった男子生徒で、偏差値至上主義的な考え方にとりつかれて猛勉強して高偏差値の大学を目指すも、成績が伸び悩み自暴自棄になっての犯行であることが裁判のなかで明らかになっていった。 「偏差値や学歴、職業で人を上下に見ていた部分があった」。東京大前で2022年1月、3人を刺したなどとして、殺人未遂などの罪に問われた当時名古屋市の私立高校2年だった男(19)の裁判員裁判。東京地裁(中尾佳久裁判長)は17日、懲役6年以上10年以下(求刑懲役7年以上12年以下の不定期刑)の判決を言い渡した。 両親に対する証人尋問で浮かんだのは、中学時代から勉強にのめりこむようになり、高校受験のころから偏差値にこだわるようになった姿。父親は「人の意見に耳を傾けるような正常なコミュニケーションがとれず、自己肯定感が低い部分があった」と述べた。 (中略) ◆親にも出身大学を持ち出して反論 勉強漬けの日々のなか、両親がちょっとしたことで諭しても、2人の出身大学を持ち出し「○○大学出身の人の意見は聞かない」などと見下すように。父親が「人間は偏差値じゃない。テストの出来不出来で、人の(評価に)差をつけてはいけない」と言っても、響いていない様子だった。 (東京新聞「『人間は偏差値じゃない』諭したのに…息子は東大前で受験生たちを刺した 両親の後悔」2023年10月16日より引用) 「偏差値」はある種の呪縛になっている 本当に哀しいニュースだ。 大学受験という大きな「関門(コンプレックスとでもルビを振りたい)」に身も心も吞み込まれ、入学した大学・学部・学科の偏差値こそが人間の価値や序列を決めるという感覚に支配されてしまう人は、東大で凶行に及んだ彼にかぎらず世の中に少なからずいる。 むろん大学を卒業して世の中に出ると、たいていの人は自分の学歴をだれかに話したりそもそも自分でもわざわざ思い出したりする機会もなくなっていくのが自然だが、なかには大学を卒業してから何年たっても自分の卒業大学や他人の出身大学の偏差値の話を四六時中やめられないような人も本当に一定数いる。今日の日本社会において「偏差値」というのはある種の呪縛になってしまっていることを痛感させられる。 通り魔的な犯罪をしでかすほど偏差値に狂わされてしまう人が日本社会には依然としているその一方で、あまりにも皮肉で虚しいことだが「偏差値至上主義」的な世界観は、名実ともにいよいよ終わりの兆しを見せている。 高卒者の求人倍率はバブル期直後以来の高水準 ご存知の方も多いだろうが、いま世の中では若者向けの求人が空前の売り手市場となっている。大卒者だけではその需要をとてもではないが賄いきれず、高卒者にまでその採用の幅を広げる企業がそれなりの規模と知名度を持つ企業のなかにも現れるようになっている。 私が比喩や誇張で言っているのではなく、2023年現在の高卒求人は全国各地の都市部を中心にして、驚くべきことにあの「昭和」の時代に匹敵するレベルにまで増加している。近年の物価上昇を受けて給与水準も高まっている。 少子高齢化で大卒者の就活は学生優位の「売り手市場」となり、高卒者を対象に採用を始める中堅企業も出てきた。令和時代の「金の卵」を巡り、初任給を大卒者と同等にする動きもあるが、高卒者の求人倍率は50年ほど前の高度経済成長期、バブル経済期直後以来となる高水準だ。若手人材の確保に奔走する企業に就活探偵団が迫った。 (日本経済新聞「高卒採用者は令和の『金の卵』 バブル期以来の求人倍率」2023年10月4日より引用) 企業側からすれば理工系や医薬系といった専門的スキルを持つ人材は別として、とりわけ文系の人材については「あえて大卒者を採用しなければならない理由」がそれほどないことに気づき始めている。 わざわざ文系大卒者を採る理由はない 卒業大学の偏差値は学習能力や知的情報処理能力の高さをある程度は担保するという評価はできるかもしれないが、それはべつに卒業高校の偏差値でも十分に代用可能だし、そもそも文系にかぎっていえば、時間割が組まれて規則正しい生活をだれもが送っている高卒時点が「社会人適応性」のピークである人もそう珍しくはない(高校生の時分とくらべて、不規則で自堕落な生活を送ってしまう大学生は高偏差値の大学生でも少なくない)。 とりわけ営業職や接客職など対人コミュニケーションを主とした企業が「優秀で勤勉な、高校を卒業したばかりの若者」を欲しがるようになるのは当然の帰結だったと言えるのかもしれない(もちろん高卒者だってなるべく学業成績が良好な「ええとこの高校」が好まれる傾向はあるだろうが、しかし大学ほど厳然たる偏差値至上主義ではない)。大学側が行っている大学教育が、現代の企業が欲しがる人材と必ずしもマッチしておらず、また世の中のニーズに応じて教育をアップデートしなかったことのツケと見ることもできるかもしれない。 いずれにしても、わざわざ文系の大卒者を採用しなければならない理由がどんどん薄れていくにつれて高卒者に対する労働需要は高まっており、それは偏差値至上主義的な世界観の大前提となっていた「高偏差値でなければまともな仕事に就けない・まともな稼ぎを得られない」という物語を急速に突き崩していることは事実だ。 「偏差値至上主義」は、人余りの時代の共同幻想だった 偏差値至上主義とは「人余りの時代」だからこそ実効性があった共同幻想だったのだ。 たとえば1990年代前半から2000年代前半に大学を卒業した初代氷河期世代は、同学年の人口の絶対数が多かった。結果として学歴競争がいまよりずっと苛烈だった時代でもあったのだが、デフレ型の不況によって「人余り(労働力の供給過剰)」が起こってしまってもいた。同学年に150~200万人もいてダブついていた人材を文字どおりの“ふるい”にかけて選別するために有効だったのが、出身大学のネームバリューや偏差値であった。だからこそ、この時代に一気に学歴競争は噴出して「偏差値至上主義」が世の中のヘゲモニーを握り、その余韻は都心部で色濃く残っている。 だが、ご存知のとおり現在はかつての「人余り不況期」とはまったく様相が異なっている。 少子化は当時よりもずっと加速しており、事業の好調にともなう事業展開の拡大を企図しても、現場で働いてくれる人手がまったく足りていない状況だ。人手不足のせいで会社や店が休業したり倒産したりする、就職氷河期時代には考えられなかったような事態も当たり前に見聞きするようになった。皆さんの暮らす街でも「人手不足のために休業します」という店先の張り紙をしばしば見るようになったのではないだろうか。掲示されたアルバイトの求人票も時給がどんどん上昇している。 大卒と比べて「教育にかかるコストに差は感じない」 先述したとおり、これまで「大卒必須」としていた企業でも、そうしてしまうともはや人が集まらないためその学歴要件を緩和し、大卒並みの待遇や福利厚生はなるべく維持したまま高卒や専門卒でも門戸を開くような流れが生じている。そして実際に採用して働かせてみた人に話を聞けば「過去大卒の新卒を雇った時と、教育にかかるコストに大きな差は感じない」というのだから、これまで世の中に当たり前の前提とされていた大卒必須とはいったいなんだったのだろうかと思わずにはいられない。「大卒でなければ社会人として務まらない」とただなんとなくのムードが世の中にあっただけで、そこにはしっかりとした根拠などなかったのかもしれない。 こうなってしまえば「偏差値が高くなければ雇ってもらえない」「まともな仕事を選べない」といった人余り時代につくられた神話はますますその真実性を失ってしまう。「偏差値がすべてではない」というのは、冒頭のニュースでも報じられた裁判でも実際に被告人の父が語った言葉のようだが、それはこれまでのような気休めではなく本当にそうなりつつある。受験生を襲撃した彼がもしあと10年遅く生まれていたら、世の中はもっと違う景色になっていたし、彼も偏差値に呪われることなどなかったかもしれない。 “泥臭い”仕事を嫌い、事務系職種に殺到する文系人材 長引くデフレ不況による人余りの時代につくられた「偏差値至上主義」的な神話は、若い労働力が加速的に不足する時代に直面し、急速にほころびを見せている。 上述したように高卒者の求人は昭和の時代を彷彿とさせる高水準である。とりわけ宿泊業や運輸配送業や飲食サービス業や建設業といった業種では若い人材が猛烈に不足しており、賃上げや福利厚生の拡充あるいは教育制度の見直しによって人材確保に躍起になっている。 だがこれらの採用枠は、下手に高等教育を受けてしまった文系人材では選びにくい仕事でもあるだろう。なぜならプライドが傷つくからだ。 中途半端に偏差値の高い文系の学生には、そうした“泥臭い”匂いのする仕事は「学のある人間がやるような仕事ではない」という観念や自尊心があるせいでなかなか選ばれないようだ。かれらはそうした泥臭い仕事を嫌がり、その代わりによりにもよって人手不足の時代でも猛烈な買い手市場のまま推移する都市部の事務職に殺到している〔ちなみに厚生労働省のデータによれば事務系職種の現在の有効求人倍率は0.32である(厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年9月)」2023年10月31日)〕。 学歴コンプレックスを持つ文系が割を食う時代 おそらくこれからの時代は、偏差値至上主義的な神話コンプレックスを強固に内面化しているノースキルの文系がもっとも割を食う世の中へと変わっていくことになるだろう。別に大卒文系でなければ務まらない仕事は少ない。あったとしても先述したとおりそのポジションは求職者が飽和状態になっており雇用流動性も低い。その最たる例が出版業やテレビ業で、これは高偏差値文系学生にとって最高峰ともいえる憧れの就職先だが、倍率は毎年500倍近いとも言われている。 大学文系学部で過ごす4年という若い時間のキャリア的損失を埋められるような学生は、一部の超高偏差値・超エリート層を除けばそれほど多くない。とくに、毎年定員割れを起こすいわゆるFランク大学に通うくらいなら(すなわち、Fランク大なのに大卒者というプライドがついて就労可能性の幅を自発的に狭めてしまうくらいなら)活況を呈する高卒の売り手市場にさっさと身を投じてしまうか、あるいは専門学校で「手に職」をつける方がよほど合理的でさえあるだろう。 「若い労働力」のプレミアが飛躍的に高まる時代だ この記事がリリースされる11月といえば、大学受験でいえば「最後の追い込み」の時期に突入している。いまもきっと日本のどこかでは「いい大学に入らないと、まともな人生が送れない」という世界観を強固に内面化した子どもたちが、不安と期待、なにかに追い立てられるような焦燥感や恐怖感を入り混じらせた感情を抱えながら、必死に机に向かっているのかもしれない。 だが世の中は過渡期である。「大学を出なければ社会の正規ルートに乗れない」というデフレの時代の幻想は終わり、社会は変わりつつある。プライドや自尊心にさえ折り合いをつければ、いくらでも若者が身を立てる道は見つけることができる。 少子化の時代はたしかに社会保障の側面では若者にとって暗雲立ち込める時代だが、しかしこの時代は同時に、「若い労働力」のプレミアが飛躍的に高まる時代でもある。 問答無用の少子化とインフレの時代には、自分たち若者の労働力が市場では喉から手が出るほど欲しい「稀少財」としてもてはやされる明るい側面もあるのだ。そう、それは若者が「金の卵」として重宝された時代の形を変えた再演である。 「偏差値こそが人生」「偏差値が高くなければ人生はまともに歩めない」という共同幻想が支配した時代は本当に終わりを迎えようとしている。スマートではないかもしれないしカッコよくもないかもしれないが、泥臭く強かに生きることを厭わずに臨めば、その想いに応えてくれるような場所や機会は着実に増えている。 これから世に出る若者にとって、いまの日本はなにもかもが絶望というわけではなく、見方を変えればチャンスも広がっている。 ———- 御田寺 圭(みたてら・けい) 文筆家・ラジオパーソナリティー 会社員として働くかたわら、「テラケイ」「白饅頭」名義でインターネットを中心に、家族・労働・人間関係などをはじめとする広範な社会問題についての言論活動を行う。「SYNODOS(シノドス)」などに寄稿。「note」での連載をまとめた初の著作『矛盾社会序説』(イースト・プレス)を2018年11月に刊行。近著に『ただしさに殺されないために』(大和書房)。「白饅頭note」はこちら。 ———-

「レディースプランは男性差別?」→ひろゆきが考える“本当の平等”とは?

「レディースプランは男性差別?」 そう疑問を投げかけるのは、SNSの総フォロワー数は300万人を超え、YouTube動画の月間再生数は3億回を超えるなど、日本中で大ブレイクを巻き起こした、ひろゆき氏。「シンプルな考え方を知れてラクになった」「目からウロコが落ちまくった」と話題を巻き起こした彼の著書『1%の努力』『99%はバイアス』では、「どうすれば影響力を持てるのか?」「口のうまい人がトクする世の中で、どう生きるべきか?」などをマジメに語っている。そんな彼に、この記事では、「本当の平等」について聞いてみた。(構成/種岡 健) それって“逆差別”じゃね?  映画館では「レディースデー」と呼ばれる日がありました。  その名の通り、女性の入館料が安くなる日です。  これには前から疑問がありました。  それって逆差別じゃないの? と感じていたんです。  そういった声を受けて、映画館のレディースデーはほとんど廃止となったそうです。  もちろん僕は、差別はなくなるべきだと思っています。  歴史を振り返ると、女性が差別されてきた過去がありますし、現在もその名残がのこっている部分はあるでしょう。  ただ、だからと言って、「下駄をはかせる」ということによって男性を不利にする動きがあるのは疑問なんですよね。 シニア料金はOKか?  こういう意見を言うと、「子ども料金はどうなんだ!」「シニア料金は見逃すのか?」という反論がきます。  ただ、よく考えてみてください。  それらと男女の問題は根本的に異なります。  なぜかというと、誰もが最初は子どもであり、いつかはシニアになるからです。  そういう意味で平等の権利といえます。  しかし、男性として生まれると、よほどのことがない限り、レディースプランのサービスを受ける機会はやってきません。  だから逆差別だと思うのです。 「権利」があれば問題ではない  例外もあります。  一つは、飲食店の「メンズセット・レディースセット」と呼ばれるものです。  これは、料理のボリュームが大盛りかどうかの違いなので、男性がレディースセットを頼むことができますし、女性がメンズセットを頼むこともできます。  まあ、女性が大盛りを選ぶのは少し恥ずかしい部分はあるかと思いますが、ちゃんと権利が与えられてるので平等です。  あるいは、ホテルの「レディースプラン」というものもあります。  これは、宿泊施設のコスメが充実していたり、エステが付いていたりするものです。  これも現時点では「女性がメイクをするものだ」「女性がエステをするものだ」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)があるからだと思います。  そのうち、徐々に社会の流れによって無くなっていくと考えられます。 「新しい差別」を作るな  というように、差別をなくすためには、安易に「過去に下げていたほうを上げる」というやり方で対処すべきではないと僕は思っています。  差別を無くそうとするあまり、新しい差別を作ってしまっているからです。  また、よく言われるのは「大卒以上に限る」というような学歴の差です。  これも、一応は「誰でも勉強すれば大学に受かることができる」という条件があると思うので、平等だと僕は考えます。  ただし、私立大学の医学部のように、学費が高すぎて金持ちしか入れないようなものは、無くすべきだと思っていますけどね。  今後、ルールを作っていく人たちは、このような配慮や視点を持たないといけなくなるでしょう。  その場だけをしのぐための新しい差別を作らないようにしましょう。それはただ問題を先送りしているだけなので、なんの解決にもなっていませんから。 (本稿は、『1%の努力』の著者・ひろゆき氏へのインタビューをもとに構成したものです。) ひろゆき 本名:西村博之 1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。自身のYouTubeチャンネルの登録者数は160万人を突破。生配信の「切り抜き動画」が話題になり、ひと月の総再生回数は3億回を超えた。主な著書に、シリーズ50万部を突破した『1%の努力』『99%はバイアス』(ダイヤモンド社)がある。

職場にいる「能力は高いのに粗末にされる人」と「能力以上に大事にされる人」の決定的な差とは?

上司の承認を得たり、部下に仕事を進めてもらったり、お客様にお買い上げいただいたり……ビジネスにおいて「相手の理解を得て、相手に動いてもらう」ことは必須のスキルです。そこで、多くのビジネスパーソンは「理屈で説得しよう」と努力しますが、これが間違いのもと。 なぜなら、人は「理屈」では動かないからです。人を動かしているのは99.9999%「感情」。だから、相手の「理性」に訴えることよりも、相手の「潜在意識」に働きかけることによって、「この人は信頼できる」「この人を応援したい」「この人の力になりたい」という「感情」を持ってもらうことが大切。その「感情」さえもってもらえれば、自然と相手はこちらの意図を汲んで動いてくれます。この「潜在意識に働きかけて、相手を動かす力」を「影響力」というのです。 元プルデンシャル生命保険の営業マンだった金沢景敏さんは、膨大な対人コミュニケーションのなかで「影響力」の重要性に気づき、それを磨きあげることで「記録的な成績」を収めることに成功。本連載では、金沢さんの新刊『影響力の魔法』(ダイヤモンド社)から抜粋しながら、ゼロから「影響力」を生み出し、それを最大化する秘策をお伝えしてまいります。 借りられる「虎の威」は、 なんでも借りるべきである  虎の威を借る狐――。  これは一般にネガティブな意味で使われる言葉ですが、僕は、「影響力」について考えるうえでは、ポジティブに捉えるべき言葉だと考えています。  なぜなら、自分に「影響力」が足りないときには、誰かの「影響力」を借りなければ、人や組織を上手に動かすことができないからです。価値ある仕事を成し遂げるためには、「借りられる“虎の威”は、なんでも借りる」というくらいの意識でいたほうがいいと思うのです。  例えば、社内の他部署にイレギュラーな事務処理をお願いしなければならない場面があったとしましょう。  そんなときに、「新人」がたったひとりで他部署に乗り込んで、事情を説明したところで苦戦するのは目に見えています。上手に説明できるかどうかという問題よりも、そもそも「新人」であるがゆえに、十分な「信頼」を勝ち得ていないからです。  そこで大切なのが、上司の「影響力」を借りるということです。  上司は、他部署からも一定の「信頼」を得ているはずですから、他部署に説明にいくときに、上司に付き添ってもらってもいいですし、他部署に説明するときに、「上司には了解をいただいています」などと言い添えるだけでいいかもしれません。それだけでも、他部署の反応は明らかに変化するはずです。 「あの上司がOKしているなら、大丈夫だろう」と安心してもらえるかもしれませんし、「あの上司が了解しているのに、NOと言うとあとで厄介だな」と思われるかもしれない。いずれにせよ、上司の”虎の威”を借りることで、話はスムーズに動く確率が高まるわけです。 「影響力」を借りることで人脈は築かれる  僕も、営業マンとして”虎の威”はよく借りました。  例えば、信頼関係を築いたお客様から、その知人の方をご紹介いただいたら、その知人にご挨拶のメールを書くときには、必ず、紹介元のお客様をCCに入れるとともに、メール文面でも「○○さんにご紹介をいただきました金沢と申します」などと記します。  こうすることで、紹介元のお客様の「影響力」を借りるわけです。  メールをもらった知人の方は、「あの人の紹介する営業マンなら、信頼できそうだ」と思ってくれるかもしれないし、「この営業マンを粗末に扱ったら、あの人との関係を悪化させてしまうかも……」などと思われるかもしれない。どちらにせよ、お客様の”虎の威”を借りることで、新しいお客様とのご縁がつながる確率が高まるわけです。そして、自分なりの人脈を築き上げていくことができるのです。 社長や会社の「影響力」を活用して、 価値を生み出すのが「仕事」である  これらはほんの一例ですが、このように「影響力」を意識しながら、“虎の威”を借りるのは、ビジネスパーソンとして仕事を進めていくうえでは、欠かせないスキルだと僕は思います。  そもそも、就職するということは、その会社や社長などの「影響力」の庇護のもとに入るということです。そして、その「影響力」が背景にあるからこそ、社外の人々は、右も左もわからない新入社員であっても、一人前の社会人として扱ってくれるわけです。  もしも、どこの組織にも属さず、何の後ろ盾もない若者が、「会ってください」と言っても誰もまともに相手にはしてくれないでしょう。若者が、この世の中で何らかのポジションを獲得するためには、何らかの「影響力」を借りるほかないのです。  であれば、“虎の威”は積極的に借りなければならないということになるはずです。  むしろ、会社や社長などの立場からすれば、会社などの「影響力」を上手に使うことで、魅力的な仕事を作り出して、会社に価値を還元してくれる社員を求めているともいえます。重要なのは、「いかに上手に“虎の威”を借りるか」ということにあるわけです。 「虎の威」を借りて、 身を滅ぼす人が忘れていること  では、「上手に“虎の威”を借りる」とはどういうことか? 「影響力」をもつ組織や人物を味方につけるためには、さまざまなノウハウがありますが、ここでは、絶対に欠かしてはならない最重要ポイントについて説明したいと思います。  これを外すと、一見、上手に“虎の威”を借りて、大きな成果を上げたとしても、いずれ手痛い“しっぺ返し”を食らうことになるでしょう。場合によっては、身を滅ぼすことすらありうるほどの重要ポイントです。  それは何か?  拍子抜けするかもしれませんが、「感謝する」ということです。  “虎の威”を貸してくれた、組織や人物に対する「感謝」を絶対に忘れてはならないのです。  これは、当たり前のことです。例えば、あなたが誰かに頼まれて、膨大な労力をかけながら大事に育ててきた人脈を紹介したとしましょう。ところが、その後、何の報告もなく、感謝の言葉のひとつもなければ、誰だって不愉快に思うはずです。そして、二度とその人物の頼み事には応えたくないと思うに違いありません。人間心理として、それが当然のことだと思います。  ところが、逆の立場になれば、ついつい「感謝」を忘れてしまうのが人間というものです。  先ほどの例で言えば、もともとは誰かに紹介してもらった人脈であったとしても、ひとたび、その人脈との関係性を構築することができてしまえば、それを「自分の人脈」と認識してしまうのが人間なのです。  しかも、その人脈との関係性を構築するためには、その人なりに汗もかいたはずですから、なおさら、「自分が築いた人脈」だと思い込んでしまう。人間心理には、そのような「錯覚」を生み出すカラクリが働いているように思うのです。しかし、そのカラクリにはまってしまうと、手痛いような“しっぺ返し”を食らう結果を招いてしまうことに十分に注意する必要があります。 「感謝」の気持ちを見失ったとき、 すべては崩壊してしまう  このことを考えるときに、いつも思い浮かべる人物がいます。  テレビ業界で有名だった、某テレビ局の元プロデューサーです。僕自身は直接お目にかかったことはないのですが、伝説的な番組をいくつも企画・製作して、一世を風靡した敏腕プロデューサーとして憧れの存在でした。  文字通り「すごい人」だったわけですが、彼は、その後、苦境に立たされました。番組プロデューサーとしての仕事を失い、驚くべきことに自己破産にまで至ってしまったのです。  いったい、何があったのか?  彼は、テレビ局の社員だった頃から、プロデューサーとして企画・製作した人気番組に関するさまざまな権利を、自分で設立した会社で所有していました。  その後、テレビ局と揉めて退職したのですが、何しろ人気番組でしたから、テレビ局としては続けたい。となると、いかに冷え切った関係性であったとしても、彼の会社に発注せざるを得ないわけです。だから、退職後もしばらくは、バリバリの現役プロデューサーとして権勢を誇っていました。  しかし、すべては栄枯盛衰。人気番組もいつかは衰えます。そうなれば、そのテレビ局にとって、彼の存在価値はなくなります。そして、若くて才能のあるプロデューサーは、ほかにもたくさんいますから、わざわざ彼に仕事を依頼するテレビ局もありません。結果として、彼は、苦境に陥ってしまったわけです。 明らかに有能なのに「失敗」する人の特徴  これは、実に恐ろしいことだと思います。  彼は、明らかに有能な人物でした。すごいアイデアマンであり、行動力もあり、統率力もあった。しかし、それだけで、あれだけの実績を築くことができたわけではありません。それができたのは、テレビ局の社員だったからです。テレビ局の社員でなければ、絶対に成し遂げることはできなかったのです。  いくら優れたアイデアがあったとしても、テレビ局の社員でなければ、あれだけの予算を集めることもできなければ、キャスティングもできないし、放送することもできません。  にもかかわらず、彼は、「全部、俺がやったこと」「すべて、俺の手柄だ」「俺がいなければ、誰もこの番組はつくれないだろう」となってしまった。だからこそ、彼はテレビ局と揉めてしまったわけだし、その後、すべてを失う結果を招いてしまったのです。 「感謝」こそが人生の守護神である  なんというもったいないことだろう、と思います。  彼が、テレビ局という巨大な「虎の威」=「影響力」を借りて、大きな仕事を成し遂げることができたことに、いくばくかの「感謝」の気持ちさえもっていれば、こんなことにはならなかったはずだからです。そして、彼の「才能」を、もっと世の中のために活かすことができたはずなのです。  もちろん、組織のなかで仕事をしていれば、思うようにいかないことや、ストレスに感じることは避けがたく起こります。おそらく、彼も、「これだけ実績を出して、会社に貢献しているのに……」といった思いがあったのでしょう。その気持ちは、僕なりによくわかります。 […]

【驚きの研究結果】「人間関係が上手な人」の幼少期の共通点

「人生観が変わった」「もっと早く読みたかった」と絶賛の声が相次いでいるのが、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』という一冊だ。20万部超のベストセラーとなっている本書は、後悔しない人生を送るためにさまざまな示唆を与えてくれる。今回は、本書の中から「幼少期に親子で過ごした時間」が子どもの将来に与える驚きの効果について解説した内容をマンガとともに紹介する。(イラスト©野田映美) (本稿は、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』の内容をマンガ化したものです)

勉強が続かない人と勉強が習慣になる人、ちょっとした行動の違いとは?【『独学大全』著者が答える】

『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。 ※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら [質問]  復習の習慣が身に付かずに困っています。 「復習しやすいように復習内容を振り返れる問題を予め作っておく」や「なるべく振り返りやすいようにノートを取る」という工夫を凝らしてみたのですが、次はその工夫そのものが面倒になりノートを取ること自体が億劫になってしまいました。勉強しても忘れる→忘れないような形にする→勉強自体が面倒に、のループです。  今は結局「何度も読み返す」という勉強法に落ち着いてしまっています。これが1番継続しやすいのですが流石に費用対効果が悪いのでどうすれば良いかと悩んでいます。  個人的には振り返りの時間を作る方向で独学を進めていきたいので何か良い方法があれば教えていただければ幸いです。よろしくお願いします…!! 基本戦略は「今自分ができているものを、少しだけ改善する」 [読書猿の回答]  実際に取り組んだ人だけができる、とても良い質問だと思います。そうです、工夫は基本面倒なのです。凝った工夫は凝る分だけますます面倒になります。  ここを理解しないとどれだけ良い学習法も絵に描いた餅に終わります。  どれだけ(短期的な)学習効率が良くても、継続しないなら長期的な学習効率は改善されません。  何が面倒か、どれだけ面倒に耐えられるかは人によって大きく異なります。これが誰にとっても最適な学習法が存在しない一因です。  なので基本戦略は「今自分ができているものを、少しだけ改善する」です。 「何度も読み返す」ことができているのなら、これに毛を生えた方法から試してみてはどうでしょうか?  例えば、前回どこまで読んだところがすぐ分かるように付箋をつけておく程度の面倒ならば継続可能かもしれません。  ならば付箋を2枚用意して、前回どこからどこまで読んだかを分かるようにします。  そして前回読んだところをまず読み、その次に新しいところを読むようにします。  やっていることは「2度読み返す」だけですが、繰り返すタイミングを1日後にしたことで、想起負荷がかかり記憶の定着は改善されます(費用対効果がいくらか高まります)。  付箋2枚ができるようになったら、付箋の数を増やして行ってもいいでしょう。無理なら付箋の数を減らせばいいだけです。

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