「子どもの学力を伸ばす親」が“子どものやる気”を重視しないワケ
「うちの子、どうすればやる気を出して勉強するのだろう」。落ち着きがなく、勉強より「遊び」に気持ちがいっている小学生の男の子の「やる気スイッチ」を探したいと思う親は多いのではないだろうか。しかし、本人にやる気などなくても、きちんと勉強して学力アップさせることができると断言するのは、首都圏の有名中学に合格者を多く出している進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏だ。この記事では、富永氏の著書『男の子の学力の伸ばし方』から、男の子の学力を伸ばすためにまず知っておきたい「7つの特徴」について紹介する。(構成:小川晶子) 男の子には、母親が思う勉強の仕方が当てはまらない 男の子と女の子では、勉強の仕方がずいぶん違うようだ。 「自分が小学生のときは宿題もちゃんとやったし、計画を立てて勉強したし、国語も得意だったし……。それなのに、うちの息子は全然違う」と思っているお母さんは多いのではないだろうか。 筆者も小学生の息子二人を見ていて、自分とあまりにも違うので愕然とすることがよくある。 「まぁ小学生の男の子なんて、こんなもんでしょう」と放っておくか。それとも、男の子ならではの学力を上げる方法を知って、実行するか。 それによって大きな差が生まれるのかもしれない。 進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏は、「性差に着目した学習が大きな成果を上げる」と述べている。 脳科学の専門的研究で、女の子は右脳と左脳が早くからバランス良く育つのに対し、男の子は右脳ばかり先に発達し、左脳は遅れる ことがわかっています。 言語能力を司る左脳の発達が遅れた男の子が、なかなか国語の長文読解をできないのは当たり前なのです。 大人になれば、男も女もそれぞれ苦手分野をカバーできますが、脳が成長途上である子どもたちには、その影響が大きく出ます。それを無視して教えようとしたら、子どもたちに余計な負荷がかかるだけでなく、学習効果も半減します。(P.8) 右脳の発達にはテストステロンというホルモンが関係しており、男の子はこのホルモンが多いので右脳が先に発達するということらしい。 現代は性別によって育て方を変えることはあまり良しとされないが、脳の発達上、性差があるのは変えようのない事実なのだろう。 本書では、脳科学的な根拠と、進学塾で多くの子どもたちを指導してきた経験に基づき「男の子の学力を伸ばすための方法」が解説されている。 男の子の7つの特徴を知っておけばラクになる 「うちの息子、なんでこうなの?」と思っているお母さんにまず知ってもらいたいのは、「男の子の本能的な7つの特徴」だ。 うすうす思っていたことではあるが、あらためて提示してもらえると気分がラクになる。 1. 否定や指示・命令に弱い 2. 自分で失敗しないとわからない 3. 自分の力でナントカしたい 4. ご褒美・インセンティブで頑張れる 5. とにかく競争好きでライバル意識が強い 6. ハマりやすいが飽きっぽい 7. ちょっとした成功体験で一気に変わる この7つの特徴を把握しておくだけで、お母さんの悩みはかなり減るのではないか。 とくに、自分には当てはまらない項目について「男の子はそういうものなんだ」と思うと余計な心配を抱えずにすむ。 筆者の息子の場合、「この算数の問題は難しいから、躓く子が多いらしいよ」と言うと急にやる気になって真剣に解きだし(5. とにかく競争好きでライバル意識が強い)、やはりわからなそうなので「こう考えるといいよ」とヒントを出そうとしたら、「うるさい!」と激怒(3. 自分の力でナントカしたい)。 その後しばらくその種の問題にハマってひたすら解き、新しい問題を出せと言ってくるのでだんだんこちらのほうがまいってきたが、3日後には飽きた(6. ハマりやすいが飽きっぽい)。 こういうことは、男の子の「あるある」なのだろう。 やる気スイッチが見つからなくても、志望校に合格できる 競争やゲームのようにすると、突然やる気になることはあるが、基本的に「勉強はやりたくない」ようだ。 母親たちは一生懸命、我が子の「やる気スイッチ」を探していますが、見つけることができないようです。なぜ見つからないかといったら、「ない」からです。(P.97) 進学塾に通って中学受験をし、難関中学に合格するような子は違うのだろう……と思っていたがそういうわけではないらしい。 VAMOSは、男子小学生でいえば開成、麻布、筑波大付属駒場といった難関中学校に多くの合格者を送り出しているという進学塾である。 「もともと優秀な子が集まっているのではないか?」と考えたくなるが、入塾テストを行わず、先着順に生徒を受け入れているという。 VAMOSでも、やる気スイッチを持った男の子などほぼゼロです。しかし、やる気スイッチのない子もちゃんと志望中学に合格します。実際に、「ウチの子は最後までやる気にならなかったけれど、受かりました」という、妙な安堵の声が親御さんからたくさん寄せられます。 これは、勉強をルーティン化し、生活の一部にしてしまったからです。(P.97-98) 「勉強をルーティン化し、生活の一部にする」際にも、先ほどの7つの特徴を知ってうまく使うことでうまくいく。 否定や指示・命令には弱いから、「ああしなさい、こうしなさい」と言うよりもルーティン化してしまうほうがはるかにいいのだ。 ご褒美を用意するのも、ルーティンの一つだ。たとえば、「今日の課題が終わったら、好きな動画を見ても良い」というようなルールにしてしまう。 そのほか競争にしたり、自由にやらせて失敗させたりしながら、勉強を生活の一部に組み込んでしまう。こうすれば、親のストレスも減るだろう。 「うちの子、どうすれば勉強するようになるんだろう」と少しでも思う方は、本書を参考にしてみてほしい。