Friday, December 8, 2023

「生きたゴキブリがグラコロ混入」をウソだと叩く人が知らない、最強生物Gの恐ろしさ

「グラコロ」にゴキブリ?投稿者にバッシング   先日、マクドナルドの冬の人気ハンバーガー「グラコロ」のバンズの間から生きたゴキブリが飛び出してきたとSNSで投稿をした人が、「正義の裁き」を受けた。 「マックでバイトして4年の経験から言わせてもらうと、油であげるグラコロに生きたゴキブリが入るわけねえだろ」「お前、絶対仕込んだやろ。法的措置取られるのも時間の問題やろな」などとネットやSNSで批判されたのだ。  事の発端は「グラコロ」が新発売された11月末に、テイッシュで潰したゴキブリの画像とともにこんな投稿(現在は削除)がされたことだった。 「1/4ぐらい食べた時に、中から小さなゴキブリが出てきて、まだ生きていて、逃げていきました。その後壁を走っているのを見つけ、その後ティッシュで殺しました」  これに反応をしたのが、ネットやSNSで悪を叩くことを生き甲斐とする人々だ。 「生きたゴキブリ」というわりに動画を撮っていないということは100%うそだと「クロ判定」をした。SNSで注目を集めたい愉快犯か、マクドナルド側から謝罪と無料券を頂戴するための恐喝犯に違いない、と投稿者をボロカスに吊し上げているというワケだ。  一方、マクドナルド側はメディアの取材に対して、このような申し出があったという事実は認めつつも、ゴキブリという現物を回収していないので詳細は答えられないとした。この客にお詫びをして無料券を渡したという。  つまり、当事者同士はすでに「手打ち」となっているが、悪を見逃さない正義の人々が「うそくせえ」「怪しい」という感じで、「私刑」を続けているという構造なのだ。  ただ、企業危機管理の仕事で異物混入を嫌というほど扱ってきた立場から言わせていただくと、「ゴキブリが生きたまま、ハンバーガーのバンズや野菜の中に紛れ込む」なんてことはちっともうそくさい話ではなく、むしろザラにある。  まず、ゴキブリという生物が、地球上で最強クラスに「しぶとい」という事実がある。そこにくわえて、外食業界では「生きたカエル」がカット野菜の中に紛れ込んで、うどんの中にまで入り込むという前例もあるくらいなのだ。  そう聞くと思い出す人も多いだろう。そう、丸亀製麺の「カエルうどん」騒動だ。 丸亀製麺でも大炎上、新鮮な食べ物には「異物」が入る  今年5月、丸亀製麺の新製品「シェイクうどん」が発売されて早々、器の中に生きたカエルがちょこんと座っている画像がSNSで拡散され大炎上、ワイドショーなどでも大騒ぎをする事態になったのはまだ記憶に新しいだろう。  実はこの時も、ネットで正義のお仕置きをすることをライフワークとする人たちが、投稿者を「自作自演」「恥を知れ」とボロカスに叩いた。この直前にも、イトーヨーカドーで販売されていたサラダにカエルが混入していたことが報道され、「おおかた今、カエルが入っていたとか騒げばバズると思って、その辺でカエルを捕まえてきて仕込んだだろ」と「クロ判定」されたのだ。  ただ、実は「カット野菜」には、生きたカエルが入り込むことは過去、定期的に発生している。日本だけではなく、アメリカなどでもずいぶん前から報告されている。  新鮮な野菜には虫やカエルがつくし、卵を生むのは当然だからだ。それらをすべて殺すよう消毒をすれば、虫やカエルは寄り付かないが、そんなものは人間も食べられない。もちろん、カット野菜の製造過程で、AIや目視で異物混入がないかはチェックするが、それもどうしても100%ではない。  そのあたりは、《丸亀製麺「カエル混入」で自作自演を疑う人が知らない、カット野菜のリスク》の中で詳しく解説しているので、ご興味のある方はお読みいただきたい。  さて、カエルでも簡単に紛れ込めるところに、カエルよりもさらに小さくて、カエルよりもすばしっこいゴキブリが紛れ込めないわけがない。  実際、多くの日本人が目を背けているだけで、食品調理や製造の世界では、ゴキブリ混入など日常茶飯事で起きている。 国内外で発生する「ゴキブリ混入」  例えば、今年2月、あるSNSユーザーが、マグドナルドのハンバーガーのエッグとハンバーグの間に、体長約9ミリの「チャバネゴキブリ」が見つかった写真を投稿。投稿者は現物をマック側に渡して保健所にも届け出た。マックから委託された外部検査機関はこう結論づけた。 《外部検査機関は、虫の死骸から酵素の反応がなくなっており、そうなるのに十分な熱の影響を受けている可能性が高いとも指摘した。このことから、「店舗調理のいずれかの工程で混入した可能性は否定できません」と明らかにした。その一方で、「明確な混入経路の特定には至りませんでした」とも報告した》(J-castニュース3月10日)  日本を代表するコンビニ・セブンーイレブンでも起きている。今年8月に「梅香る混ぜ飯おむすび 紀州南高梅」の中にゴキブリが入っている、という指摘が2組の客からあって、埼玉県内の約370店で販売された約2000食を自主回収した。  そう聞くと、「死骸ならば混入をすることだってある!生きたゴキブリが入るのがありえないと言っているのだ!」と今すぐ正義のリンチをしたくてウズウズしている人もいらっしゃるだろうが、生きた虫が混入することも定期的に報告されている。   今年6月、セブンーイレブンの「北海道グルメフェア」として販売した「蒸し鶏と半熟玉子のラーメンサラダ」の容器の中に、小さな虫が動いている映像がSNSで投稿されて、これも大きな話題になった。  また、2022年4月、SNSで話題になったのは牛丼の「すき家」で店員が持ってきた麦茶の入ったコップにゴキブリが浮いていたというものだ。こちらも投稿者は「うそつき」と叩かれたが、「すき家」は混入の事実を認めている。  ちなみに、このような「ゴキブリコップ」騒動は海の向こうに目を向ければもっとある。  今年4月、韓国メディア「聯合ニュース」が報じたところによれば、韓国の京畿道(キョンギド)のロッテリアに8歳の娘と訪れた女性は、セットメニューを注文した。そして、出てきたコーラを飲み干したところ、その底には氷の大きさほどの、生きたゴキブリがいたという。  また2022年、中国のSNSでの新浪微博(シンラン・ウェイボー)でも、スタバのコーヒーカップの中に、生きたゴキブリが混入している画像が拡散された。  もちろん、これらも「自作自演」「仕込み」「うそ」と叩く人がいる。確かに、広い世の中だ。いろんな人がいる。どこかで生きたゴキブリを捕まえて、わざとコップに紛れ込ませるようなイタズラをして、腹の中で大笑いをしている可能性もゼロではない。  ただ、先ほども申し上げたように、世界的に見れば、外食や食品製造に虫やカエルが混入することなど、ちっとも「ありえない話」ではないのも事実なのだ。外部検査機関が調べても混入経路がわからない虫やカエルの死骸がたくさん見つかっているという事実を踏まえれば、なにかしらの方法で厨房に侵入して、食材の中に身を潜めて、そこでうまく生きながらえてきたゴキブリやカエルがいたって、特に不思議でもなんでもない。 ゴキブリは「史上最強のしぶとさをもつ生物」  そこに加えて、筆者がこのように考えるのは、ゴキブリが「史上最強のしぶとさをもつ生物」だからだ。  よく言われることだが、ゴキブリは核戦争後の地球でも繁栄できるほど生命力が高いと言われる。もちろん、放射能に対して強いのは、ゴキブリだけではなく、すべての虫に当てはまる。しかし、何よりもゴキブリは、スリッパで叩いても死なず、逃げ回ったりするなど生命力が強く、食欲も旺盛だ。  NewsWeek日本版の「ゴキブリが核戦争をも生き延びる理由」(22年10月13日)の中には、オーストラリアのロード・ハウ島というところで、外来種であるネズミのせいで80年前に絶滅していたと思われていたゴキブリが、実はしぶとく生きていたことが最近になって発見されたという。  このようにゴキブリは徹底的に殺しても、いくら駆除しても、外敵の目を盗んで、どこかで必ずしぶとく生きながらえる「最強の生物」なのだ。  それはつまり、飲食店の厨房や食品工場が、定期的に害虫駆除をしたり、衛生管理を徹底したところで、必ずどこかに潜んでいるということだ。だから当然、ハンバーガーのバンズやサラダの間にも紛れ込む。人間がいくら目を光らせても、それを完全に防ぐことは困難だ。  料理に生きたカエルが入っていた。食品に生きたゴキブリを見た――。自分たちが毎日食べているものに対して、そんな気持ちの悪い話をする人を「うそだ」「自作自演だ」と叩きたくなる気持ちはよくわかる。ただ、野菜や肉など自然由来の原料を使って、人間が調理をしているわけだから、こういうヒューマンエラーはあって当然だ。むしろ、「ありえない」と考える方が不自然である。  日本では「安心・安全」を社会全体でうたいすぎてしまったせいで、強迫観念のように「無菌」「清潔」「ゼロリスク」を追い求めしまうきらいがある。  しかし、本来、人間の体など雑菌だらけだし、我々の身の回りに微生物やら菌やら虫があふれている。野菜や肉、魚にも菌や微生物は山ほどついているし、小さな虫など気づかないうちに一緒に口に入れている場合もある。  ネジだとか鉄片などの混入は被害もあるが、虫やらカエルの混入など、食中毒になるわけでもない。かつては、見つけてもピッとよけて、「すぐ作り直します」でよかったはずだ。 「虫が入っていた」とわざわざ写真に撮ってアップして騒ぐ方も、それに対して「うそ」「自作自演」と叩く方も、もっとおおらかな気持ちで、「異物混入」というものに接してみてはいかがだろうか。 (ノンフィクションライター 窪田順生)

岡山で評判の「笠岡ラーメン」…特徴は鶏チャーシュー、世界で勝負できる味です

倉敷支局長 小宮宏祐 岡山県笠岡市で愛される「笠岡ラーメン」。スープは鶏ガラベースのしょうゆ味で、青ネギとメンマをトッピング。そして、何と言っても鶏のチャーシューが一番の特徴だ。笠岡では古くから養鶏や製麺業が盛んだったため、独自のラーメンが誕生したという説が一般的。戦前からあったとも言われている。  現在、笠岡ラーメンを出す店は約15軒。JR笠岡駅からほど近い「中華そば いではら」ののれんをくぐった。店主の出原秀明さん(68)は49歳の時に脱サラし、ラーメン業界に飛び込んだ。「一か八かの勝負だった」と振り返る。 ■仕込みに妥協なし  2004年8月に開店。仕込みに妥協はない。スープは水と鶏ガラで、うま味調味料は使わない。鶏は毎回10キロ炊く。中華そば(並・600円)を注文した。見た目よりスープはあっさりしていて、麺は少し硬め。チャーシューは歯ごたえが心地よく、鶏本来のおいしさを堪能できる。箸が止まらなくなり、あっという間に完食した。「市外、県外からもわざわざ食べに来てくれる。『おいしかった』と言ってもらえるのが何よりうれしい」と出原さん。  最近、市内でも外国人観光客を見かける。商工会議所の担当者は「豚肉を使っていないので、イスラム教の人たちも食べられる。世界で勝負できる」と胸を張る。出原さんも「ラーメンで地域をもっと盛り上げたい」と意気軒高だ。笠岡グルメが世界へ飛躍する日は近いかもしれない。 ■こちらもオススメ…瀬戸のかぶとがに  甘い物が欲しくなり、近くの和菓子店「清月堂」に向かった。カブトガニの形をしたまんじゅう「瀬戸のかぶとがに」(小・170円)を買った。笠岡の繁殖地は国の天然記念物になっている。本物に忠実な見た目にやや気後れしたが、口に入れると白あんの甘さが広がり、驚くほどの優しい味だった。  ※税込み。記事中の値段などは紙面掲載時のものです。 ◇ 国内外の総支局長が、日頃通っている店のおすすめメニューなど、地域の自慢の味を紹介します。 ■中華そば いではら  岡山県笠岡市笠岡2827  午前11時半~午後3時。月曜定休(祝日の場合は営業、翌火曜休み) ■清月堂  岡山県笠岡市中央町18の11  午前8時~午後6時半。水曜定休

なぜ和歌山県で「1億円プレーヤー」の農家が増えているのか…東大教授が絶賛する「野田モデル」の画期的内容

農業で儲けるにはどうすればいいのか。東京大学大学院の鈴木宣弘教授は「和歌山県で1億円以上の売り上げを稼ぐ農家が増えている。彼らが利用しているのが、中間流通を通さずに作物を広域で販売する『野田モデル』という仕組みだ」という――。 ※本稿は、鈴木宣弘『このままでは飢える! 食料危機への処方箋「野田モデル」が日本を救う』(日刊現代)の一部を再編集したものです。 「1億円プレーヤー」の生産者が現れはじめた 肥料や農業資材、エネルギー……、ありとあらゆるコストは上がるが、大手流通が支配する市場構造の下、小売価格は上がらない。だから農家は儲からない。それどころか生活すらままならない。 そうして誰も跡を継がず、生産者が減る。命を守る食料のはずなのに、外圧に負けて輸入自由化だけを進め、国内生産の苦境に手を差し伸べない。結果、自給率は下がる一方――。 そんな悪循環に陥ってきた日本の農業の現状を変えることはできるのか――。 処方箋を発見した。 和歌山県で「1億円プレーヤー」の生産者が現れはじめたのをご存じだろうか。 農林水産省がまとめている営農類型別経営統計(令和3年)によると農業で生計を立てている主業経営体の農業粗収益は1638.8万円(農業所得は433.5万円)。そんな中、和歌山県ではなぜ1億円に達するような売り上げを誇る農家が増えているのか。 和歌山の名産、梅を生産する中直農園の中山尙さんも1億円プレーヤーの一人だ。梅のほかにミカンも栽培する代々農家の家系だが、売り上げを伸ばしたのは現在の尙さんの代になってからだ。 画期的な農産物流通の仕組み「野田モデル」 きっかけは、ある画期的な農産物流通の仕組みに乗ったことだった。 既存の農産物流通では農家は農協を通じて作物を出荷するのが一般的だが、いま中山さんはそれ以外のルートで7割の売り上げを稼ぐ。 このルートは売り上げだけでなく、経費などを引いた利益も格段に大きいという特色もある。そのおかげもあって、家族経営で細々と、というイメージとは無縁の「成長産業としての農業」を謳歌(おうか)している。 この農産物流通の仕組みを私は「野田モデル」と名付けた。 「野田」というのは、この仕組みを考案し、実践した野田忠氏の名前から取ったものだ。野田氏は1936年(昭和11)の生まれでとっくに傘寿を超えている。とても穏やかでスマートな人だ。若い頃には苦労もされた野田氏については章をあらためて詳述するが、この仕組みを踏襲、実践する動きが広がれば日本の農業は復活すると確信するに至った。 「野田モデル」とはどのようなものか。私は何度も現地に出向き、謙虚に語る野田忠氏の話に耳を傾けた。 直売所を和歌山、奈良、大阪に30店舗展開 和歌山県第二の都市、田辺市。「知の巨人」と称される南方熊楠を生んだこの土地は、温暖な気候で知られ、農業も盛んだ。梅干しやミカンの一大産地であり、スモモの栽培も盛んだ。 近隣の白浜町には、道後温泉や有馬温泉と並ぶ日本三古湯に数えられる白浜温泉があるほか、風光明媚(めいび)な観光地も点在している。日本一のパンダの「大家族」が暮らすことで知られる動物園「アドベンチャーワールド」もあり、最近ではパンダ目当てで訪れる観光客も多い。 そんな穏やかな土地が、農産物の流通革命の「聖地」であることを日本の大多数の人は知らないだろう。 第2章まで、何がこれまで日本の農業を痛めつけてきたか、農家が困窮し、日本人が飢えの危機に瀕していることを私は繰り返し述べてきた。「野田モデル」はその状況をひっくり返す「ゲームチェンジャー」となる可能性を秘めている。それを実践するのが「産直市場よってって」という農産物直売所を多店舗展開する仕組みである。これはいわゆる「チェーン店」とまったく違う、それぞれの直売所が個店の特徴を追求するスタイルで、その第1号店が生まれたのが田辺市だ。 「よってって」は、生産者が農産物を直接出品する直売所だ。1号店となるいなり本館は2002年5月にオープンした。なんと、野田氏66歳のときである。 以来、着々と出店を重ね、現在、和歌山を中心に奈良県、大阪府に30店舗を展開する。新鮮で品質の良い農産物の直売所が話題になるケースは増えたが、ここまで多店舗展開した事例はほとんどない。 あえて「非効率的」な売り場をつくる 店内に一歩足を踏み入れれば、すぐに従来のスーパーマーケットとはまったく違う空間が広がっていることを実感する。 まず、「旬」の作物の圧倒的な豊富さだ。私が訪れた春先には、いなり本館の壁際はオレンジ色に染まっていた。 「不知火」「あすみ」「せとか」――ずらりと並んでいるのは柑橘類だ。 和歌山といえば、ミカンの生産量が全国1位だということは義務教育で習う。だから品揃えが豊富なのはわかるが、よく見ると1列ごとに生産者が違う。袋に張ってある値札には、すべて生産者の名前が書いてあり、値段やサイズがそれぞれ異なるのだ。 壁から店の内側に目を転じると、今度はイチゴがずらりと並ぶ。こちらもそれぞれに生産者の名前が書いてあり、値段はバラバラ。果物ばかりではなく、トマトやほかの野菜もあり、陳列スタイルも同様だ。 季節ごとに店の表情はがらりと変わる。果物を例に取ると、夏は桃やスイカ、メロン、バレンシアオレンジなど、秋は温州ミカンや柿、ブドウ、梨など、冬はポンカンや八朔、ネーブルなどが並び、季節の味覚がふんだんに取り揃えられている。 普通のスーパーなら、生産者が違うとはいえ、同じ作物を大量に並べるような「非効率的」な売り場は決してつくらないが、「よってって」では、生産者が競い合うように収穫したばかりの「旬」の品を徹底的に並べる。 店の奥に進むと米が並ぶ。ここも特徴的だ。 米は県外産のものもあるが、こちらも当然のように生産者の名前が入っている。 「つや姫」「コシヒカリ」「ひとめぼれ」――とブランド米をそろえつつも、「誰がつくったのか」にこだわっている。 地元産で揃えて、大手の商品はいっさい置かない 扱っているのは農作物だけではない。 鮮魚売り場には「漁師さんから直送! 魚の産直」の文字。冷蔵ショーケースには地元の漁港を中心に水揚げされた魚が所狭しと並ぶ。鰹、はまち、あじなど一匹まるごと販売する魚は手数料を払うと、注文どおりさばいてくれる。 さすがに精肉売り場は、鹿児島県産の豚肉など、他県のものも目立つが、米国やオーストラリアなど海外の牛肉などは置いていない。 加工食品はもっと“異様”だ。 なにしろ一般のスーパーに並んでいる大手食品メーカーの商品がほとんどないのだ。しょうゆや酢のような調味料も地元産のものばかり。キッコーマンやミツカンなど、全国に名の知られた大手の商品はいっさい並んでいない。 とはいえ、品揃えが薄いわけではない。しょうゆであれば、うすくちしょうゆ、刺身しょうゆなど、食卓に必要な種類はきちんと地元産で揃えてあり、来店客のニーズに応えている。 「小遣い稼ぎ」止まりだった既存直売所とどこが違うか 「なんだ、規模が大きな直売所じゃないか」 読者の中にはそう思われた方がいるかもしれない。 たしかに生産者が作った野菜や果物などを中間流通を通さずに並べる直売所や、地元産の一次産品を取り扱う道の駅などは、いまや日本中のあちこちに見られるようになった。休みの日には、行楽がてら美味しいものを目当てに足を運ぶ人も多いだろう。 だが、「よってって」にはこうした店舗とは決定的な違いがある。 従来の直売所や道の駅で扱う野菜や果物などは、地元の1店か、多くても近隣の2~3店でしか売ることができなかった。なぜなら、中間流通が担っているような物流機能を持っていないからだ。だから農家が頑張って直売所で売ったところで、店舗数が限られ、せいぜい「小遣い稼ぎ」程度に終わってしまった。 鮮度の良さ、品質の高さや、生産者の顔が見える――など、直売所で買うメリットは広く認知されるようになったが、生産者の立場からすると販売を大きく広げることができないのがこれまでの難点だった。 そもそも、そうした配送機能を持つ中間流通を「中抜き」するのが直売所の仕組みである以上、販売網を広げるのが難しいのが宿命である。 それに対して、「よってって」は一人の生産者がつくった作物や商品を広域に販売できるのだ。和歌山を中心に奈良、大阪まで30店舗があるが、農家がある店舗に持っていくと、それを別の店舗に配送できるシステムが構築されているのである。 つまり、農家は生産量さえ確保できれば、「よってって」の店舗ネットワークの広がりに合わせて販売数量を増やすことができるのだ。 このように、直売所の限界を打破し、農家が中間流通を通さずとも自分が生産した作物を広域で販売できるようにしたのが、「産直市場よってって」。そのシステムこそが「野田モデル」なのである。 ———- […]

NY円、一時1ドル=141円台に上昇…4か月ぶり高値水準

 【ニューヨーク=小林泰裕】7日のニューヨーク外国為替市場で、対ドルの円相場は一時、1ドル=141円台に上昇した。141円台をつけるのは8月上旬以来、約4か月ぶり。市場では、日本銀行が近く金融緩和策の変更に踏み切るとの観測から、円買い・ドル売りが進んでいる。  円相場は7日の東京市場(午後5時)では、1ドル=145円台半ばで取引されていた。1日たらずで約4円、円高が進行した。日銀の政策修正が意識され、荒い値動きとなっている。  日銀の植田和男総裁は7日午後、首相官邸で岸田首相と会い、会談後に「(岸田首相に)賃金が持続的に来年も上がるかどうか、こうしたあたりを点検していきたいと話した」と語った。午前には、国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジング(挑戦的)になる」と述べた。

JR東海、東京―新大阪で社員の新幹線通勤を認める方針…リニアなら将来は最速67分で通勤圏内に

 JR東海は来年1月から東海道新幹線の全区間(東京―新大阪、約553キロ)で社員の新幹線通勤を認める方針を固めた。東京―大阪間の通勤も可能になる。居住地の自由度を高めて、人材確保や採用強化につなげることが狙いだ。  主要な労働組合と新制度の導入で合意した。鉄道の運行や保全などの現場に直接携わらない社員約6000人が対象となる。在宅勤務が定着して出勤頻度が減ったケースなどを踏まえ、住む場所にとらわれずに負担なく通勤し、勤務できる環境を整える。  現在、新幹線通勤は原則300キロ以内で、東京―豊橋(約294キロ)、新大阪―浜松(約296キロ)などを認めている。これを東海道新幹線の全区間に広げる。名古屋―東京間は片道1時間35分ほどで通勤できるほか、約2時間半かかる新大阪―東京間も制度上は利用可能となる。建設中のリニア中央新幹線の通勤利用は現時点で想定していないとみられるが、将来実現した場合には、東京(品川)―名古屋間が最速40分、同―大阪間が最速67分で結ばれ、通勤圏内になる。 ■転居負担の軽減へ各社取り組み  転居を伴う転勤による負担を軽減する企業の取り組みが広がっている。共働き世帯が増えたことなどから、転居を伴う転勤を負担に感じる社員が多いためだ。  ニトリホールディングスは3月、希望する入社4年目以上の総合職正社員を対象に、転居を伴う転勤をなくす制度を導入。首都圏と関西圏が対象で、給与は変わらない。明治安田生命保険も、転居を伴う転勤を望まない「勤務地優先」か、転勤可能な「職務優先」のいずれかを申告できる制度を来年4月に始める。  ファーストリテイリング傘下のユニクロは、2007年から「地域正社員制度」を導入。店舗に勤務する正社員が転勤をせずに働き、店長などへのキャリアアップを目指せるという。  転勤者への一時金や手当を増額する企業もある。みずほ銀行は来年4月から、家族を伴って転勤すると社員は従来の2倍の30万円、帯同する家族も従来の5倍となる1人当たり15万円を支給する。月額数万円の転勤手当も増額する方針だ。  転職サイト大手エン・ジャパンが2022年に実施した転勤に関するアンケートでは、6割強が「転勤辞令は退職のきっかけになる」と回答した。辞令が出た場合に「承諾する」と答えた人は52%にとどまり、19年調査から11ポイント減った。担当者は「家族の生活に影響する転勤を負担に思う会社員が増えている」と指摘する。転勤の有無は、学生が就職先を選ぶ判断材料にもなっているという。

3か月ぶり円高水準、一時1ドル=144円台…植田日銀総裁と岸田首相の会談で金融緩和策変更の観測広がる

 7日の東京外国為替市場で、対ドルの円相場は一時1ドル=144円台まで円高・ドル安が進んだ。144円台を付けるのは9月1日以来、約3か月ぶり。  日銀の植田和男総裁は7日午後、首相官邸で岸田首相と会い、会談後に報道陣に対し「(岸田首相に)賃金が持続的に来年も上がるかどうか、こうしたあたりを点検していきたいと話した」と語った。午前には、国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジング(挑戦的)になる」と述べており、市場で日銀が近く金融緩和策の変更に踏み切るとの観測が広がり、円買い・ドル売りが進んだ。

「薬用雪肌精」の化粧水ボトル、発売から39年で初めてロゴと形状を変更へ…処方も一新

 コーセーは7日、看板商品「薬用雪肌精」の化粧水ボトルデザインを1985年の発売以来初めて刷新し、来年3月に発売すると発表した。長年変えていなかった処方も併せて一新する。  薬瓶をイメージした瑠璃色の全体デザインは踏襲しつつ、ロゴは大きさを一回り小さく現代風に、ボトルは最後まで使い切りやすい形状に改良した。  雪肌精はコーセーの主力ブランド。男女問わず幅広い世代に支持され、広告にはプロフィギュアスケーターの羽生結弦さんらを起用している。

イタリアのスポーツEV「アバルト500e」、爆音「レコードモンツァ」も再現

 イタリアの電気自動車(EV)「アバルト500e」に試乗した。約1年前に試乗した「フィアット500e」をベースにしたアバルトブランドのクルマになる。本日最終選考が行われる「2023-2024 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の候補車である10ベストカーに選出されてもいる。 ■レースで活躍したブランド、パパイヤ鈴木さんもオーナーの一人  黄色と赤色の下地の上に黒いサソリが描かれたエンブレムの「アバルト」は、バイクレーサーでもあったカルロ・アバルトが1949年に創設した会社が起源だ。フィアットのクルマを基に、エンジンの一部を改造して出力を大きくするチューンアップやマフラーのパーツ交換などを手がけ、1950~60年代に数多くのレースで活躍した。1970年代にフィアットに買収された後は、アバルトの名前を冠してヨーロッパのラリー選手権などに参戦していた。2000年代に入ってから、日本でもアバルトブランドの市販車が本格的に販売されるようになった。販売元のステランティスジャパン管理のサイトで紹介されているが、タレントのパパイヤ鈴木さんもオーナーの一人だそうだ。 ■操作性や加速性能にこだわり  外観は「フィアット500e」とほぼ同じだが、正面中央に大きく「ABARTH(アバルト)」の文字があり、こちらの方がよりスポーツタイプの仕様になっている。扁平(へんぺい)率はタイヤの接地面積に影響し、接地面積が大きいと乗り心地が良くなる。一方、接地面積が小さいとハンドルの反応が良くなり、操作性が向上する。アバルトは後者になる。  実際に運転してみることにする。「フィアット500e」と比べると、アバルトの方は最高出力が約30%も増えていて、踏み込んでからすぐに一定の速度に達してくれる。カーブや車線変更の際も、ハンドルの反応速度はすこぶる良い。特に20~60キロの低中速域での加速性能にこだわったそうだ。ドライビングモードが3タイプあり、ワンペダル走行が可能なモードもあって使い勝手は悪くない。  最初にアバルトはマフラーのパーツ交換なども手がけたと書いたが、アバルトの象徴ともいえるのが、排気音として有名な「レコードモンツァ」だ。低い回転域ではゲロゲロという野太い低音なのだが、スピードを出して高回転になると、バリバリという乾いた破裂音に変化する。ファンにはたまらない音なのだそうだ。 ■EVだけどアクセルを踏み込むと連動して爆音とどろく  「レコードモンツァ」とは、アバルトのレーシングカーがイタリアのモンツァ・サーキットで次々と世界記録を塗り替える活躍を見せたことに由来する愛称だ。独自のマフラーにより、エンジンからの排気の流れを制御。ライバルよりも格段に速かったといわれている。本来はEVなのでエンジン排気の爆音などないのだが、開発陣が「レコードモンツァ」を効果音として再現。アクセルを踏み込むと連動して音がとどろくシステムを搭載している。どういう音かは、動画で体験してみてほしい。  様々な運転支援システムも充実していて、「レコードモンツァ」という遊び心もあり、楽しくドライブできるクルマなのは間違いない。ただ、天井がキャンバストップという布素材のため、走行中は「レコードモンツァ」の音だけでなく、車外の様々な音も聞こえてくる。「レコードモンツァ」の音も楽しいと感じる人だけでなく、うるさいと感じる人もいるかもしれない。万人受けするクルマではないので、かならず試乗して自分の好みかを確認した方が良いだろう。(デジタル編集部 松崎恵三) 【仕様・主要諸元】(試乗した「ツーリスモ カブリオレ」の場合)  ▼全長・全幅・全高(ミリ) 3675・1685・1520  ▼最高出力(kW)     114  ▼バッテリー容量(kWh) 42  ▼価格 645万円(オプションは除く)

米グーグル、生成AI向け新技術「ジェミニ」を発表…文章・画像・音声を同時認識して回答

 【ニューヨーク=小林泰裕】米IT大手グーグルは6日、生成AI(人工知能)向けの新たな基盤技術「ジェミニ」を発表した。文章だけでなく画像や音声を同時に認識して回答するのが特徴で、米オープンAIの「チャットGPT」に対抗する。自社の対話型AIサービス「バード」やスマートフォンなどへの搭載を順次進めるとしている。  「ジェミニ」は性能別に「ウルトラ」「プロ」「ナノ」の3種類があり、中位モデルのプロは6日から、上位モデルのウルトラは来年初めからバードに搭載する。自社のスマホ「ピクセル」にも6日から「ナノ」の導入を始めるほか、13日からはグーグルのクラウド基盤を通じて企業や開発者への提供も開始する。  従来、生成AIには文章や画像、音声をそれぞれ学習させていたが、ジェミニはこれらを組み合わせて学習しており、より複雑な回答が可能になる。たとえばジェミニを搭載したシステムに手書きの絵を見せると「アヒルです」と内容を認識して回答したり、手書きの文章を認識して誤りを指摘したりできるという。  サンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は「最先端の能力を備えた基盤技術だ」との声明を公表し、多くの点でチャットGPTを上回っていると強調した。

トヨタ、プリウスとミライ7・4万台のリコール届け出…事故通報装置の検査に問題

 トヨタ自動車は6日、「プリウス」「ミライ」の2車種計7万4436台(2020年10月~23年9月製造)のリコールを国土交通省に届け出た。  完成車の安全性をチェックする完成検査の工程で、大きな事故の発生時に自動的にコールセンターへ通報する「事故自動緊急通報装置」のスピーカーから実際に音声が出るかを確かめずに検査を済ませていた。  改めて検査を行い、不具合が見つかれば、部品を交換するという。問い合わせは同社お客様相談センター(0800・700・7700)。

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