『教員が足りない』担任不在のクラスも発生 長年解消されない課題 単純に正規採用の枠を増やせない理由は
かつては人気の職業だった教員。しかし近年では教員の労働環境はブラックだとしてなり手が減少しています。こうした中、全国で教員の適切な配置ができない『教員不足』が各地でうまれています。 「正採用の枠を増やせばいい」「臨時教員を余裕を持って採用したらいい」などの意見があがるなか、単に人を増やせばいいという、単純な話ではないことが見えてきました。 全国の教員不足は2500人超 担任がいない学級も 授業や部活動の顧問、生徒指導など多岐にわたる業務によって、長時間の労働が課題となっている教員。離職者が増える一方、志望者は近年減少し、深刻な状況となっています。 2021年に文科省が調査した『教員不足』の実態。47都道府県と21の指定都市などを調査した結果、公立学校で2558人の教員が不足していることが明らかになりました。 都道府県別でみると、教員が不足していないのは山形、群馬、東京、新潟、和歌山、山口の1都5県のみ。大阪、愛知、福岡などの大きな都市部では60人近く足りない状況となっています。 沖縄県も教員不足の例外ではありません。 県教育庁によりますと、去年10月時点で96人の教員が不足。そしてことし9月の始業時点でも80人が不足し、担任の先生がいない学級が48にのぼっています。 不在となっている担任については教務主任や専科教員などが入り対応。現在のところ児童や生徒の授業に大きな影響は出ていませんが、現場の負担が増していることは否めません。 「正採用の枠を増やしても解決しない」そのわけとは 沖縄県内で、こうした教員不足が始まったのはここ数年の話ではなく、実は以前からの課題だったといいます。 慢性的な教員不足に加えて、▽産休や育休、病休などイレギュラーな形で現場を離れる教員が出てきたこと▽ここ10年で特別支援学級が1100クラス増えたこと▽きめ細かな指導を目的に、沖縄県独自の取り組みとして小中学校の少人数学級を実施しているため、必要な教員の数が増えていること、などがその要因とされています。 では「そもそも教員の正採用の枠を大幅に増やせばよいのではないか」と教育委員会の担当者に聞いてみましたが、担当者は「県議会等でも同じような話が出るが、それは現実的なことではない」といいます。 沖縄県の公立学校における毎年の教員の正採用はおよそ350人。この新規採用された教員が受けないといけないのが、文科省が定める初任者研修です。 研修では学級経営や教科指導、特別活動など、子どもたちの心身の成長のために定められた7つの項目を1年間かけて学びます。 研修期間中、新任の教員は授業を行えないことも多く、指導教員をはじめまわりの教員のサポートが不可欠です。このため教員数に余裕のない小規模校や離島校では研修の受け入れが難しいのが実情です。 今でも1つの学校で複数の新任教員を受け入れていて、仮に現在不足している100人近くを採用しても、受け入れる学校がないのです。 なり手不足の解消へ 目指すのは『潜在的な教員』の掘り起こし では、臨時教員を採用すれば問題は解決するのでは?とも思えますが、それも簡単なことではありません。 教員を希望する人材の大半は、すでに新年度の時点で採用されていて、毎年2000人あまりが臨時教員として、すでに教鞭をとっています。このため次の方策として教職の志望順位の低い人たちの中から意欲のある人材を確保することになりますが、厳しい人材獲得競争の中ではそう簡単ではありません。 学校人事課・稲福政彦班長 「ぜひ、みなさんのお力が必要です」 この現状を解消するために県が今年から力を入れているが、教員免許を持ちながら教員にならず就職したり、子育てを機に学校を離れたりした『潜在的な教員』の掘り起こしです。 ことしに入って複数回、説明会を開催したり、実際の授業の見学や現役教員との意見交換などの場を設けたりして、人材に対して『教員の仕事の見える化』に取り組んでいます。求職者からのアプローチを待つのではなく、興味を持ってもらいやすい環境を作るのが狙いです。 このほか、採用の年齢制限の引き上げや、臨時教員として3年以上勤務した場合に正採用試験を一部免除するなど特別枠を設けたほか、各学校や各地の教育事務所も採用活動を行うことで、少しずつ成果が出てきています。 しかし県の担当者は「若干回復しているかもしれないが、現在も教員の未配置があり、改善しているとはいえない」として、更に取り組みを進めたいとしています。 子どもたちの学びの環境を整備するとともに教員の働き方を改善するため、教員不足問題の解消に向けた取り組みをさらに進めることが求められています。