Friday, December 8, 2023

味の素・TOTOやHOYA、半導体部品・材料の生産増強…高いシェア握るケースも

 食品などを本業とする国内メーカーが、半導体生産に欠かせない部品や材料の生産で存在感を高めている。事業規模は小さいものの、高いシェア(市場占有率)を握るケースも多く、半導体市場の成長を見込んで投資を拡大させている。(経済部 田中俊資) ■ほぼ独占  味の素の「ABF(味の素ビルドアップフィルム)」は、パソコンやゲーム機の頭脳となる高性能半導体の基板に使われる絶縁体だ。主要なパソコン向けではほぼ100%のシェアを持つ。  うまみ調味料の研究から生まれた樹脂の加工技術を使い、1999年に発売した。フィルム状になっており、絶縁体のインクを基板に塗り重ねる従来の製法よりも品質が向上し、工程も削減できる。2021年度の出荷量は17年度の2倍近くになった。  光学機器大手のHOYAは、最先端の半導体に微細な回路を焼き付ける「極端紫外線(EUV)露光」と呼ばれる技術に使う材料・マスクブランクスで世界市場の約8割を握る。回路を焼き付ける際に光を通すガラス「フォトマスク」に欠かせず、EUV向けの生産技術を持つのは世界でもHOYAとガラス大手のAGCだけと言われる。  こうした企業に共通するのが、寡占を背景とした高い利益率だ。味の素の場合、22年度の連結売上高1兆3591億円のうち、ABFを含む「電子材料等」の割合は5%にすぎないが、本業のもうけを示す事業利益では27%を占めた。 ■投資拡大  調査会社の富士経済によると、半導体材料の主要30品目の世界市場は、26年には21年の約1・3倍となる444億ドル(約6・5兆円)に拡大する見通しだ。  各社は生産力の増強を進めており、味の素は2月、ABFの増産に約250億円を投じる計画を打ち出した。前田純男・執行役常務は「技術革新に乗り遅れないように研究を進め、仮に競合相手が登場しても、我々が一番良いモノを提供していく」と話す。  AGCは福島県にある工場の生産能力を3割拡大させる方針で、24年1月の稼働を目指して新たな生産設備を整備中だ。フォトマスクに強みを持つ凸版印刷も、23年度に100億円以上を投じて埼玉県や台湾の工場を増強する。  半導体製造装置に使う部品「静電チャック」を手がけるTOTOも、半導体関連を新たな領域と位置づけて23年度は40億円の設備投資を計画している。  東海東京調査センターの石野雅彦氏は「利益率が高い事業には、『高いものを買わされている』との意識が顧客に生まれる。技術を磨いて新規参入してきた企業にもチャンスが多く、優位性を保つには継続的な投資が欠かせない」と指摘している。

台湾TSMC、半導体製造装置の納入延期を取引メーカーに要請=関係者

Sam Nussey Fanny Potkin Toby Sterling [東京/シンガポール/アムステルダム 15日 ロイター] – 台湾積体電路製造(TSMC)が半導体の需要低迷に一段と神経をとがらせ、最先端半導体向け製造装置の納入を遅らせるよう取引メーカーに要請したことが分かった。事情を知る関係者2人が明らかにした。 米アリゾナ州で400億ドル(約5兆9000億円)かけて進める新工場建設が遅延しているTSMCはコスト管理を徹底させており、落ち込む半導体需要をこれまで以上に懸念していることの表れだと関係者らは話す。 関係者らによると、製造装置メーカーは納入延期を今のところ短期的なものとみている。 TSMCはロイターの取材に対し、市場でのうわさにはコメントしないとした。劉徳音会長が7月に述べている通り、景気の弱さや中国経済の回復の鈍さ、マーケット需要の低迷により顧客が慎重になっており、在庫の抑制に動いていると指摘した。 関係者らによると、露光装置を手掛ける蘭ASMLも影響を受けた1社。同社のピーター・ウェニンク最高経営責任者(CEO)は今月行ったロイターとのインタビューで、顧客名を挙げず先端半導体向けの注文が延期されたことを明らかにした上で、短期的に解消経営の問題と考えていると述べた。 ASMLは現在フル操業で、今年は前年比3割の増収が予想されている。 「半導体工場の稼働準備に関する報道がいくつかあった。アリゾナだけでなく、台湾でも」とウェニンクCEOは述べる一方で、短期で解消する問題との見通しを示した。TSMCは、アリゾナ工場の稼働開始を2025年に1年遅らせることを余儀なくされた。現地で労働力を確保することに苦戦し、台湾から技術者などを呼びよせる動きにも米労働組合の反発を受けている。 ウェニンク氏は「アリゾナの工場建設に台湾から多くの人材を送り込めば、彼らは他の場所では働けなくなる。つまり、これはある種の二重苦だ」と語り、アリゾナの問題が台湾など他の工場に影響する可能性があるとの見方を示した。 TSMCの劉会長は先週、「アリゾナはここ5カ月で非常に大きく改善した」と述べている。 <投資支出を引き下げ> 半導体需要の回復遅れを懸念しているのは、TSMCだけではない。 米アップルが先日発表した新型iPhone(アイフォーン)は、より高速化した半導体を搭載しながら価格を据え置き、スマートフォン市場の世界的な低迷を反映したものと受け止められた。 中国が政府職員にアイフォーンの使用を制限したと報じられたこと、さらに中国の華為技術(ファーウェイ)が国産の半導体を使った新型スマホを発売したことにTSMCは警戒感を強めていると、関係者の1人は言う。 米政府がファーウェイに制裁を課したことを受け、TSMCは同社への半導体出荷を停止し、アナリストらによると、現在は中芯国際集成電路製造(SMIC)が供給している。 TSMCは7月の決算発表時、スマホやパソコンの需要低迷と人工知能(AI)市場の先行きが不透明だとして今年の売上高を前年比約10%減に下方修正した。第3・四半期は営業利益率が前四半期から4ポイント悪化するとの見通しを示した。 同社は、新型コロナウイルスの世界的流行期に拡大した設備投資の負担にも直面している。昨年の投資支出は前年比26%増の360億ドルに膨らんだ。 7月の決算では今年の投資支出を従来予想(320億─360億ドル)の下限に引き下げ、今後数年間は伸びを抑制する見通しを示した。 (記事執筆:浦中美穂 編集:久保信博)

ウクライナ、クリミア付近の海洋石油・ガス掘削施設奪還と発表

[キーウ 11日 ロイター] – ウクライナの軍事情報当局GURは11日、軍が「ユニークな作戦」でクリミアに近い複数のガス・石油掘削海洋プラットフォームの支配権をロシアから奪還したと発表した。 「ボイコ・タワーズ」として知られるこのプラットフォームは、ロシアに2015年から占拠され、22年2月にロシアがウクライナへ本格的な侵攻を開始してからは軍事目的で使用されていたという。 GURは同プラットフォームの支配権を取り戻すことは戦略的に重要だったとし、「ロシアは黒海海域を完全に支配する能力を奪われ、これによりウクライナはクリミア奪還に大きく近付いた」としている。 ロシア側からは今のところコメントを得られていない。 ロイターはGURの情報を独自に確認することはできなかった。

テスラ方式のEV充電、日産に続きホンダも採用…米市場で半分のシェア

 ホンダは7日、北米で販売する電気自動車(EV)の充電方式について、2025年から米テスラの方式を採用すると発表した。日本メーカーでは日産自動車も採用を決めている。他のメーカーも続く可能性がある。  発表によると、ホンダは25年からテスラ方式に対応したEVを発売する。それ以前に販売したEVも、専用のアダプターを装着すればテスラ方式で充電できるようにする。  ホンダは7月、米ゼネラル・モーターズ(GM)や独BMW、韓国の現代自動車など7社で、テスラ方式と、「CCS1」と呼ばれる米国方式の両方を整備する合弁会社を北米に設立すると発表していた。  調査会社の富士経済によると、22年中の米国ではテスラ方式が約半分、米国方式が約3割を占めるとされる。

キヤノン、初の女性取締役候補に元消費者庁長官…3月の株主総会では「キヤノンショック」

 キヤノンは7日、同社初となる女性の取締役候補者として、元消費者庁長官の伊藤明子氏を選任したと発表した。来年3月に予定する定時株主総会に諮る。  キヤノンは今年3月の定時株主総会で、御手洗冨士夫会長兼社長CEO(最高経営責任者)の取締役再任への賛成率が前年の75・28%から50・59%へ大幅に下がり、「キヤノンショック」と話題になった。機関投資家などから、女性登用に後ろ向きだとの批判が出ていた。

トヨタ・センチュリーにSUV…セダンより室内空間に余裕

 トヨタ自動車は6日、最上級のセダン車「センチュリー」に新たなモデルを追加すると発表した。セダンより車高を300ミリ・メートル上げたスポーツ用多目的車(SUV)型で、室内空間の余裕を高めた。モーターとエンジンを組み合わせた新開発のプラグインハイブリッドシステムで、脱炭素に配慮した。  センチュリーの特性である高い静粛性は受け継ぐ。価格は税込み2500万円で、6日から注文を受け付ける。年内に発売する。セダン車も継続して販売する。

トヨタの工場停止、部品発注システムのトラブルが原因…1万数千台の生産に遅れか

 トヨタ自動車は6日、8月29日に完成車を生産する国内全14工場が一時的に稼働を停止した問題について、部品発注を行うシステムのトラブルが原因だったと発表した。外部からのサイバー攻撃の可能性については、改めて否定した。  発表によると、8月27日からシステムの定期保守作業でデータの削除や整理を行っていたところ、28日にエラーが発生してシステムが停止。29日も復旧せず、工場も稼働できなくなった。保守作業に必要なデータ容量が不足したことが原因という。  29日に容量が大きい代替システムに機能を移管したことで再び発注できるようになり、30日夜までに全ての工場で生産を再開した。  トヨタの国内工場では、海外輸出分も含めて世界生産台数の約3割を生産している。今回のトラブルで、1万数千台の生産が遅れたとみられる。

中国、手頃な価格の住宅供給拡大へ ローン規制緩和

[北京 25日 ロイター] – 中国国務院(内閣に相当)は25日の閣議で、手頃な価格の住宅を計画し、建設するための指針を承認した。中国人民銀行(中央銀行)は、住宅ローン関連規制緩和に関する指針を発表した。 中国では不動産部門の危機が深まり、一部の開発業者は物件の販売や資金調達に苦戦して債務不履行のリスクが高まっている。 新華社によると、今回の指針は国民の生活を向上させ、効果的な投資を拡大し、不動産市場の安定的で健全な発展を促す内容。詳細は明らかにしていない。 これに先立ち、住宅都市農村建設省と中国人民銀行、国家金融監督管理総局は共同で、住宅分野の活性化策として住宅ローン政策を緩和するとの声明を発表した。 人民銀は居住用住宅ローン関連規則の緩和に係る指針を公表した。購入場所に自己名義の住宅を持たない場合、それ以前の住宅ローン利用の有無に関係なく、初めての住宅購入として扱うよう銀行に指示した。 ローン申請や住宅購入の拡大を狙った措置だが、人民銀は住宅は住むための物で投機の対象ではないとの原則は堅持するとも述べた。 中国では主要都市の住宅価格が高騰し、多くの若い購買層が締め出されている。このため政府は近年、手頃な価格の住宅の供給拡大を推進してきた。 住宅都市農村建設省当局者は昨年、2021─25年に主要40都市で計650万戸の低コスト賃貸住宅を供給すると発表した。 しかし、不動産不況に伴って今年7月の新築住宅価格が前月比で下がり、今年に入って初めて下落したことが公式データで示された。このことはより大胆な政策支援が急務なのを浮き彫りにした。

パナマ運河、通過待ちの船舶数が減少 ルート変更の船舶も

[パナマ市 22日 ロイター] – パナマ運河での深刻な水不足による通航制限などによって、洋上で滞留する船の数は減少傾向にある。通航制限の緩和や輸送の遅れを回避するため代替ルートを選択する船が増えていることなどが背景にある。 パナマ運河庁は先週、通航登録をしていない船舶の1日当たりの枠を2つ追加した。ただ、1日当たりの通航許可隻数は32隻に据え置いている。 22日時点で運河通航のために待機している船は合計125隻で、2週間前の約160隻から減少している。 一方、船舶の通航待ち時間平均は先月の6─7日から今月は10─11日に伸びている。貨物船や液化石油ガスの運搬船では17日を超え、タンカーでは13日近くになっている。

ウクライナ戦争、軍上層部の「うそ」が根拠に=ワグネル創設者

[ロンドン 23日 ロイター] – ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は23日、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った根拠について、軍上層部が「でっち上げたうそ」によるものと主張した。 ウクライナでの戦争を巡り、プリゴジン氏は軍や国防省を繰り返し批判してきているが、ロシアの「特別軍事作戦」をウクライナの「非武装化、非ナチ化」が目標という政権の説明を今回初めて否定。テレグラムに投稿した動画で、ロシアがウクライナ侵攻を始めた「2月24日に起きたことは日常茶飯事にすぎない。国防省は国民と大統領を欺こうとし、ウクライナからとんでもない侵攻があり、北大西洋条約機構(NATO)全体でロシアを攻撃することを計画していると説明していた」と述べた。 さらに「戦争はショイグ国防相が元帥に昇格するために必要だった。ウクライナを非武装化し、非ナチ化するためには必要ではなかった」と強調。エリート層の利益のためにも戦争は必要だったという見方も示した。 また、ロシアは侵攻に踏み切る前にウクライナのゼレンスキー大統領と協定を締結できたはずだったほか、戦争ではロシアで最も有能とされる部隊を含む何万人もの若い命が不必要に犠牲になったとし、「われわれは自らの血を浴びている。時間は過ぎ去っていくばかりだ」と述べた。

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