味の素・TOTOやHOYA、半導体部品・材料の生産増強…高いシェア握るケースも
食品などを本業とする国内メーカーが、半導体生産に欠かせない部品や材料の生産で存在感を高めている。事業規模は小さいものの、高いシェア(市場占有率)を握るケースも多く、半導体市場の成長を見込んで投資を拡大させている。(経済部 田中俊資) ■ほぼ独占 味の素の「ABF(味の素ビルドアップフィルム)」は、パソコンやゲーム機の頭脳となる高性能半導体の基板に使われる絶縁体だ。主要なパソコン向けではほぼ100%のシェアを持つ。 うまみ調味料の研究から生まれた樹脂の加工技術を使い、1999年に発売した。フィルム状になっており、絶縁体のインクを基板に塗り重ねる従来の製法よりも品質が向上し、工程も削減できる。2021年度の出荷量は17年度の2倍近くになった。 光学機器大手のHOYAは、最先端の半導体に微細な回路を焼き付ける「極端紫外線(EUV)露光」と呼ばれる技術に使う材料・マスクブランクスで世界市場の約8割を握る。回路を焼き付ける際に光を通すガラス「フォトマスク」に欠かせず、EUV向けの生産技術を持つのは世界でもHOYAとガラス大手のAGCだけと言われる。 こうした企業に共通するのが、寡占を背景とした高い利益率だ。味の素の場合、22年度の連結売上高1兆3591億円のうち、ABFを含む「電子材料等」の割合は5%にすぎないが、本業のもうけを示す事業利益では27%を占めた。 ■投資拡大 調査会社の富士経済によると、半導体材料の主要30品目の世界市場は、26年には21年の約1・3倍となる444億ドル(約6・5兆円)に拡大する見通しだ。 各社は生産力の増強を進めており、味の素は2月、ABFの増産に約250億円を投じる計画を打ち出した。前田純男・執行役常務は「技術革新に乗り遅れないように研究を進め、仮に競合相手が登場しても、我々が一番良いモノを提供していく」と話す。 AGCは福島県にある工場の生産能力を3割拡大させる方針で、24年1月の稼働を目指して新たな生産設備を整備中だ。フォトマスクに強みを持つ凸版印刷も、23年度に100億円以上を投じて埼玉県や台湾の工場を増強する。 半導体製造装置に使う部品「静電チャック」を手がけるTOTOも、半導体関連を新たな領域と位置づけて23年度は40億円の設備投資を計画している。 東海東京調査センターの石野雅彦氏は「利益率が高い事業には、『高いものを買わされている』との意識が顧客に生まれる。技術を磨いて新規参入してきた企業にもチャンスが多く、優位性を保つには継続的な投資が欠かせない」と指摘している。