Friday, December 8, 2023

つぶすと臭いデキモノ「粉瘤」の正体は? 同じ場所に繰り返しできるのなぜ?【医師解説】

 一見、ニキビのようなしこりで、潰すと中から“白くて臭いペースト状のもの”が出てくるデキモノ「粉瘤(ふんりゅう)」。一度つぶしても同じ場所に再発しやすいため「定期的につぶしている」という人もいます。粉瘤はなぜ臭く、同じ場所に繰り返しできるのでしょうか。できた後の正しい処置法とは? きくち総合診療クリニックの菊池大和院長にうかがいました。 ■一度できると、皮膚の内側にできた袋を摘出しないと繰り返す Q.「粉瘤」とは何ですか? どうして臭いのでしょうか。 【菊池院長】 粉瘤は、「アテローム」とも呼ばれます。皮膚の内側に小さな袋ができ、そこに角質や皮脂がたまる腫瘤(しゅりゅう/こぶ)を言います。良性の腫瘍の一つで、体のどこにでもできます。明確な原因は不明ですが、外部からの刺激(外傷や擦れ)やニキビの痕にできるとも言われます。袋の中の内容物は老廃物の塊ですので、とても臭いです。また炎症や感染を起こすと、嫌気性菌(けんきせいきん)が増殖し、プロピオン酸という臭い物質が分泌され、より臭くなります。 体のどこにでもできますが、好発部位は顔、首、背中、臀部です。耳たぶにも比較的多くできます。一度できると、皮膚の内側にできた袋を摘出しないと、真ん中の黒い小さな穴から、ドロドロの臭い膿が出てはよくなりを繰り返します。 Q.「粉瘤」の正しいケアを教えてください。 【菊池院長】 粉瘤は、小さい場合は自然に治ることもありますが、ほとんどの場合は徐々に大きくなります(大きくなるスピードはまちまちです)。もし粉瘤に感染を起こし、急激に大きくなれば、医療機関で抗菌剤を内服してもらうほか、切開して膿を出す必要があります。そのままにしておくと、粉瘤が大きくなり、痛みも強くなり、破裂することがあります。大きくなっているようであれば、かならず、医療機関に受診してください。 根治治療は、炎症がないとき(痛みがないときに)袋ごと全部摘出する手術が必要です。自分でつぶすと、炎症も悪化し治りが悪くなるほか、傷もきたなくなり手術もしにくくなりますので、辞めていただきたいです。 ■大きくなってきたら早めに受診&治療を Q.「粉瘤」の予防法はありますか? 【菊池院長】 原因がはっきりしないので、これといった予防法はありません。よく「不潔にしているとできやすいのですか?」と聞かれますが、そうとも言えません。ただできやすい方はいます。診療していると、汗をよくかく、中年の男性に多い印象です。粉瘤が小さい段階で、手術して早期に治すことが、次に繰り返さない予防かもしれません。 Q.「粉瘤」を放置するリスクはありますか?  【菊池院長】 痛みがなく、ごく小さなものは経過をみることが多いです。ほとんどのものは徐々に大きくなりますので、大きくなってきたと思ったら医療機関に受診してください。早くきれいに治すのであれば、局所麻酔にて袋ごときれいにとる手術をおすすめいたします。赤く腫れあがった大きな粉瘤を放っておくと、粉瘤が割れて悪臭を出します。こうなると自分でつぶすのと同様に、傷も汚くなり、手術しにくくなりますので、早めに受診してください。 記事監修/菊池大和医師 医療法人ONE理事長。きくち総合診療クリニック院長。総合病院の外科科長・救急センター長などを経て、「きくち総合診療クリニック」を開業。慢性期疾患から急性期疾患まで、総合的に診療する“総合診療かかりつけ医”を掲げ、地域住民のかかりつけ医として活動。

チバユウスケさん55歳死去【食道がん】男性に多い 患者数は増加傾向にあり、飲酒・喫煙に加え、逆流性食道炎もリスク因子

 人気ロックバンド「ミッシェル・ガン・エレファント」の元ボーカルで、バンド「The Birthday」のボーカルでギターの歌手のチバユウスケさんが、11月26日に死去したことを12月5日に公式サイト及びインスタグラムで報告された。55歳だった。チバさんは今年4月に食道がんであることを公表し、休養していた。男性に多いという食道がんだが、リスク因子は? 進歩しているという治療法とは?(こちらの記事は「AERA dot.」2023年1月18日配信の記事を再編集したものです) *  *  *  国立がん研究センターのサイト「がん情報サービス」のがん統計によると、食道がんの2019年の罹患者数は2万6382人。飲酒・喫煙が主なリスク因子であり、男性に多いこのがんは、自覚症状がみられてから受診した場合、ほとんどが進行がんとして発見されます。しかし、近年では薬物療法などの進歩もあり、しっかりした治療計画を立てて臨めば進行がんでも根治を目指せる可能性は十分にあるといわれます。本記事は、2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。 ■リスク因子は飲酒・喫煙。高齢者にも増加  食道がんとは、のどと胃の間をつなぐ飲食物の通り道、「食道」にできるがん。食道は、上から「頸部食道」「胸部食道」「腹部食道」に分かれており、食道がんのなかで最も多いのは、胸部食道がんです。  男性に多く、50代から増え始め、近年では70代以上の患者も増えています。飲酒や喫煙と関わりが深いといわれ、「受動喫煙も大きなリスク因子になる可能性がある」と岡山大学病院消化管外科・食道疾患センター講師の野間和広医師は話します。 「ご家族がヘビースモーカーの人、飲食店で働くなど職業柄たばこの煙を吸いやすい環境にいる人などは高リスクです。夫が食道がんになり、その後、喫煙しない妻も同じく食道がんになった例もあり、環境因子も関連すると考えられます」  近年、喫煙者は減少傾向といわれますが、食道がんの患者数は緩やかに増加しており、その理由を野間医師はこう推察します。 「食道がんになった人には喫煙をやめて10年以上経っている人も多くいます。これは個人的な見解ですが、現在は吸っていなくても、何十年も喫煙を続けてきた蓄積の影響が大きいのではないでしょうか。現在20代、30代の喫煙や飲酒の習慣のない人が60代、70代になる時代には、食道がんが減少に転じている可能性もあるでしょう」(野間医師)  食道がんのリスク因子について、大阪国際がんセンター消化器外科主任部長・食道外科長の宮田博志医師はこう話します。 「食道がんの中でも、腺がんというタイプは、逆流性食道炎がリスク因子とされています。日本では、扁平上皮がんというタイプが95%以上で、欧米で多い腺がんは3~4%と少ないものの、食生活の欧米化などに伴い少しずつ増加傾向にあります。今後は、新たなリスク因子として逆流性食道炎にも注意が必要かもしれません」 ■初期は自覚症状がなく、早期発見には内視鏡検査が必要  初期の食道がんは、自覚症状がほとんどありません。そのため、ステージ0期、I期で症状により発見されることは、まずないといわれています。のどの詰まりや胸やけなどの症状がみられてからの受診では、すでに進行がんとして発見されることが多く、早期発見のためには定期的に内視鏡検査を受けることが必要です。  食道がんの診断には、食道がんであることの確定診断と、治療方針を決めるための病期(がんの進行度)診断があります。 確定診断のためには、食道内視鏡検査で食道の状態を調べるのと同時に、病変がある部分の組織を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を確認する病理検査をおこなうのが一般的です。  病期診断には、「内視鏡検査とCT検査が必須」と宮田医師は話します。内視鏡検査で、がんが食道壁のどの程度の深さまで及んでいるか、周囲の臓器まで広がっているかなどを調べ、CT検査では周辺の臓器への広がりと、リンパ節や肺、肝臓などへの転移の有無を調べます。 「プラスαとして、PET(陽電子放射断層撮影)検査をおこなうこともあります。この検査も転移診断に有用です」(宮田医師) ■手術ではがんのある食道を切除し、胃や腸で食道を再建  食道がんの治療法は、病期や患者の年齢、からだの状態、合併症の有無などによって検討します。一般的に、がんが食道壁の粘膜内にとどまりリンパ節への転移がない早期がん(0期)では、内視鏡によるがんの切除が推奨されます。  がんが粘膜の下の層にとどまっているI期は手術、進行がん(II期、III期)でも手術ができるからだの状態であれば手術が第1選択となります。進行がんでは手術の前に化学療法をおこなう「術前化学療法」が標準治療です。術前化学療法には、抗がん剤によりがんを小さくしてから手術に臨めることと、将来の再発予防という二つのメリットがあります。  手術ができない場合や、患者が手術を希望しない場合は、化学放射線療法をおこないます。I期では、化学放射線療法と手術はほぼ同程度の治療効果が得られるという報告がありますが、進行がんでは手術のほうが根治性は高いというデータがあります。  食道がんの標準的な治療法である手術では、がんのある食道と周囲のリンパ節を切除し、胃や腸で新たな飲食物の通り道を作る「食道再建術」が基本ですが、がんの場所によって、切除範囲などが異なります。  頸部食道がんでは、がんの大きさや場所によって、食道だけでなくのど(咽頭・喉頭)も一緒に切除することがあります。胸部食道がんと腹部食道がんでは、食道に加えて胃の一部もしくは全部を切除します。  現在では、多くの病院で胸腔鏡(または腹腔鏡)による手術がおこなわれるようになっており、ロボット手術も保険適用されています。  手術のメリットは根治性の高さですが、一方で、食道や胃を切除することでその働きが損なわれるため、術後ののみ込み(嚥下、えんげ)や食事への影響は大きいといえます。化学放射線治療には、食道を温存できるメリットがありますが、副作用もあります。とくに放射線治療では、治療中からみられる副作用に加え、治療後数カ月、もしくは数年後に起こりうる「晩期障害」とよばれる副作用にも注意が必要だと野間医師は話します。 「治療によりがんが治っても、数年後に骨髄の病気や肺臓炎など、放射線治療による合併症が起こることもあるため、その点は患者さんにも十分に説明します」(野間医師) ■栄養管理や嚥下リハビリなど、術前・術後のケアも重要  食道がんの治療選択において迷うケースがあるとすれば、0期かI期と考えられます。 「0期で適応の内視鏡治療で病理検査の結果、がんを取りきれなかった可能性がある場合や、リンパ節転移の可能性がある場合などは追加治療が必要になります。その場合、『手術』か『化学放射線療法』、もしくはすぐに治療をしない『経過観察』かで迷う患者さんはいます。基本的には手術が勧められますが、患者さんのからだの状態や希望、医師の方針によっても選択は異なるでしょう」(同)  また、I期は手術が第1選択ですが、その病期では手術と化学放射線療法による治療成績の差が小さくなりつつあり、選択に迷うケースも。その場合、患者の年齢、基礎疾患の有無、治療への意欲や考え方、ご家族のサポートが得られるかなどを総合的にみて選択されます。  食道がんの手術は、食道を切除することでとくに術後早期は食事をとりにくくなり、体重減少や体力低下につながるなど患者の生活の質(QOL)への影響が大きいものです。そのため、手術などの治療に加え、栄養管理や体力回復のためのリハビリなど、術前から術後まで、長期にわたるサポートが必須です。今回取材をした二人の医師もその重要性を強調しており、それぞれが所属する病院では、術前から術後までチーム医療により患者をサポートする体制が整っていると話します。  食道がんの治療を受ける患者一人ひとりに対し、医師、歯科医、看護師、栄養士、言語聴覚士や理学療法士といったリハビリスタッフなどでチームを形成。術前には筋肉量や体力を維持するための運動や栄養指導、呼吸リハビリなど手術に向けた準備をおこない、術後はのみ込み(嚥下)のリハビリ、栄養管理から心のケア、退院支援まで、フェーズごとに多職種が支援しています。  食道がんでは術前化学療法をすることが多いため、その期間が有効活用されることになります。これらの取り組みが治療後の患者のQOLを左右するため、がんの治療実績があることに加え、食道がんの患者を支えるためのチーム医療の体制が整っている病院を選ぶことも重要です。 (文・出村真理子) 【取材した医師】 岡山大学病院消化管外科・食道疾患センター講師 野間和広 医師 大阪国際がんセンター消化器外科主任部長・食道外科長 宮田博志 医師 「食道がん」についての詳しい治療法や医療機関の選び方、治療件数の多い医療機関のデータについては、2023年2月27日発売の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』をご覧ください。

ヘトヘトになるほどの運動は必要ない! 腎臓病悪化を防ぐ食事と運動のポイント 腎臓病 治療大全 第4回

日本の大人の8人に1人は、慢性腎臓病をかかえていると推測されています。腎臓は自分の存在を声高に主張することのない控えめな臓器なので、腎臓の働きが低下しても、ほとんどの人は気づきません。腎臓の働きが2割程度になってしまっても、「なんの自覚症状もない」という人もいます。 しかし、尿や血液には「腎臓が弱っているサイン」が現れています。症状がないから大丈夫!ではなく、症状がない状態でサインを見つけ、早めに対策を始めることが肝心です。そのためのヒントをQ&A方式でリストアップしました。今回は腎臓を長持ちさせるための、食事や運動といった生活習慣についてご紹介します(腎臓病 治療大全 第4回) 前回記事: 糖尿病や高血圧、尿路結石はキケン! 腎機能を低下させる病気にご用心 Q1.腎臓病を改善するために、生活習慣で大切なことは? 慢性腎臓病の発症・進行には生活習慣病が深く関係しています。そのため、「よい習慣に切り替えていくことで改善できる病気」ともいえます。ただ、頭では理解していても、実際行動に移し、続けるのは簡単なことではありません。 生活習慣のなかでも重要になるのが、食事や運動、タバコです。食べすぎや運動不足、肥満、喫煙などが続くと、インスリンの効きぐあいが悪くなっていきます(インスリン抵抗性)。インスリンは血糖を下げるために分泌されるホルモン。慢性腎臓病や糖尿病だけでなく、ほかの生活習慣病でもインスリン抵抗性はみられるため、生活習慣の改善には、悪しき生活習慣を断ち切ることが重要です。 自分の生活のどこに問題があるかを把握し、その悪循環をもとから断ちましょう。この先の人生をどのように送りたいのか、しっかり考え、強い決意で生活改善に取り組んでいきましょう。  【改善すべきポイントをおさえる】 生活習慣のなかでも重要になるのが、食事や運動です。まずは、自分の生活のどこに、どんな問題があるのかをしっかり自覚しておきましょう。 ●運動 □体を動かすことは苦手 □近い距離でも乗りものを使う □忙しくて運動する暇がない ちょっとした心がけで運動量は増やせます。無理のない範囲でできることから始めましょう。 ●タバコ □喫煙している □禁煙を試みたことはあるが失敗した 喫煙は腎機能を低下させます。禁煙がむずかしければ「禁煙外来」の利用も検討しましょう。 ●食事 □毎日、ついつい食べすぎてしまう □濃い味つけのものが好き □甘いもの、お菓子をよく食べる 問題点を自覚し、少しずつでも改善していきましょう。 ●肥満 □BMI が25 以上 *BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m) □おなかまわりに脂肪がたっぷり 食事、運動のバランスの見直しを。 Q2.腎臓病の食事療法のポイントは? 慢性腎臓病の食事療法は、原因や腎臓の働きぐあいによって内容が異なります。一人ひとりの状態に合わせて食事内容を見直していきます。腎機能を低下させている要因が明らかな場合、それぞれに注意したいポイントがあります。 ● 高血圧…降圧薬をのんでいても、減塩・減量は必須。 ● 糖尿病…エネルギー量、甘いもののとり方などにも注意して、血糖値を厳格にコントロールしていく。 ● 脂質異常症…動物性脂肪のとりすぎ、食生活のかたよりに注意。 ● 高尿酸血症(痛風)…尿酸のもととなるプリン体を多く含む動物の内臓、魚の干物などを避ける。飲酒量も控える。 ● 腎炎・ネフローゼ症候群…むくみが強いときは水分制限も必要になる。 また、慢性腎臓病の進行度によっても、食事内容を見直していきましょう。 【進行度にあった食事療法のポイント】 腎臓の働きが弱まるほど、制限が必要なことも増えていきます。 慢性腎臓病の進行度G1、G2 ●食塩摂取量を1日6g未満に ●適正なエネルギー量に調整 慢性腎臓病の進行度G3 ●たんぱく質摂取量を見直し、リン摂取量を制限 ●高カリウム血症があればカリウムを制限 ●減塩、エネルギー量調整は今までどおり 慢性腎臓病の進行度G4 ●たんぱく質摂取量をより厳格に […]

食べるとアブない!「賞味期限・消費期限」が切れたら食べてはいけない4つの食品

賞味期限や消費期限が少しだけ過ぎた食品を捨てずに、簡単に火を通すなどして食べる人もいるだろうが、食品の中には食べると体調を壊すものもある。期限の切れた食品で食べてはいけないものには、次のようなものがある。 ■賞味期限・消費期限が切れて食べると危ない食品 食べ物の多くには賞味期限や消費期限が決められているが、「賞味期限が数ヵ月過ぎたものでも平気で食べてしまう」という人もいるかもしれない。食品の中には、賞味期限が切れたら食べてはいけないものがある。 ●カット野菜――1日でも過ぎたら要注意 市販のカット野菜には鮮度を保つパッケージが使われているため、未開封の場合の賞味期限は3~4日となっているものが多い。開封したものは、原則としてその日のうちに食べきるべきだ。 未開封でも、賞味期限が1日でも過ぎていたら傷んでいないかチェックが必要だ。処分する目安は、酸っぱいにおいがしたり、買ってきたときと比べて明らかに色が変わっていたり、ぬめりがあったりした場合だ。 「熱してから食べたのにおなかを壊した」という人もいるので、しっかりチェックしよう。 ●パン――冷凍しても2週間が限度 パンはカビが生えやすく、傷みやすい食品の一つだ。賞味期限内に食べきれない場合は、ラップで包んで冷凍保存しよう。 ただし、凍らせたとしても1~2週間が限度だ。ラップなどで包んでいたとしても、パンの中の水分は少しずつなくなっていき、風味も落ちてしまう。 ■消費・賞味期限を過ぎたら絶対に食べてはいけない食べ物 賞味期限は、その食品を美味しく食べられる期間のことだが、中には注意が必要な食べ物もある。また消費期限が書かれた食品は、その期限までに食べきらなければならない。消費・賞味期限を過ぎたら食べてはいけない食べ物には次のようなものがある。 ●生のまま保管している肉類 鶏肉や豚肉、牛肉を生のまま冷蔵庫で保管して賞味期限を過ぎると、生肉に付着している細菌やウイルスが増殖するため、食中毒の危険が高まる。 生肉を見ると、ぬめりや水分が出てきていることも……。食中毒を起こす細菌やウイルスの中には、加熱しても死滅しない場合もあるため、注意しよう。 特にひき肉は、ひき肉にするまでにさまざまな工程が必要で、ひき肉以外の生肉に比べて細菌がつくリスクが高まる。肉類は、賞味期限を迎える前に冷凍保存するのがよい。 ●卵 卵焼きや目玉焼きなど朝食の定番だが、特に日本人は生卵を食べる習慣がある。衛生管理を万全に行って出荷されているが、賞味期限を過ぎた卵を生で食べるのはやめよう。 なぜなら、生卵には増殖したサルモネラ菌による食中毒の危険があるからだ。卵の賞味期限は、生で食べられる期間だと認識し、温度変化の少ない冷蔵庫の奥に入れて保管しよう。 もし賞味期限を少しでも過ぎてしまったら、75℃以上で1分間以上加熱した上で食べるようにすべきだ。 文/編集・dメニューマネー編集部

眼科医が警告「水の一気飲み」で視力が落ちる⁉️失明に繋がる悪習慣に注意

PCやスマートフォンに触れる時間が多い現代人にとって、眼の疲れや視力の低下は身近な問題ですが、なんと私たちが普段何気なく行っている習慣の中にも、眼に負担をかけてしまっているものがあるのだとか。そこで今回は、眼科専門医・平松類氏の著書『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SBクリエイティブ)から、失明に繋がりかねない悪習慣を改善するヒントを少しだけお届けします。 「水の一気飲み」は緑内障のリスクが高くなる 会社の健康診断などで眼科検診に行くと、視力検査と一緒に必ず「眼圧」の測定も行われると思います。しかし、その意味合いをいまいち理解していない人がほとんどではないでしょうか。 眼圧測定とは、空気を軽く当てて「眼球の圧力」を測ることで「眼球の硬さ」を調べるものです。 なぜこの検査が重要かというと、眼圧が高い、つまり眼球が硬いと、失明原因の1位である緑内障のリスクが高くなることがわかっているからです。近年では眼圧の高さと近視の進みやすさの相関も指摘されています。 ここから言えるのは、「眼圧が高くなるような行動」は、できるだけ避けたほうがいいということです。日常生活のなかにも、知らないうちに眼圧を上げてしまう行動がけっこう潜んでいます。 その筆頭が、「水の一気飲み」です。 水分補給は目の健康にとっても重要ですが、汗をかいたり、脱水症になったりしたときを除いて、一般的に水の一気飲みはよくありません。 体に水分が入ると、血液中の水分量が増えます。ごく単純にいえば血管を流れる液体の量が増えるため、血管に圧がかかります。これは大半の臓器にとっては大した問題ではないのですが、ごく微細な毛細血管が張り巡らされている眼球には、過度な圧力をかけてしまうのです。 いたずらに眼圧を上げないよう、「水分補給は少量ずつ」が鉄則です。 例えば500ミリリットルの水を一気に飲むと、平均で3〜4、最大で7ほども眼圧が上がることがわかっています。 眼圧の正常値は10〜20ですから、その30〜40パーセント、最大で70パーセントほども眼圧が上がるというのは、いわば収縮時血圧(最高血圧)が正常値の130から一気に170くらいまで上がるようなものです。 1回に飲む量は、200ミリリットル程度が適当です。もちろん1回の摂取量を抑えたせいで水分不足になっては本末転倒ですから、1時間に1回くらいを目安に「マメな水分補給」を心がけていきましょう。 「過度な運動」は目をいじめる行為 「水の一気飲み」に加えて、気をつけたいのが運動習慣です。 運動のすべてが悪いわけではありません。「筋トレ」の場合、自重トレーニング程度ならば問題ないのですが、重すぎるウエートを用いた筋トレだと「いきむ」たびに眼圧が上昇するという研究があります。 意外なところでは、「ヨガ」も要注意です。さまざまなポーズをとることで、ほどよく体全体がストレッチされ、呼吸を繰り返す有酸素運動でもあるヨガが概して体にいいことは確かです。ただし、唯一、目の健康を考えるうえで懸念されるのは「頭が心臓よりも下になるポーズ」です。 頭が心臓より下になると、当然ながら、頭に血が上ります。すると眼球にも圧力がかかってしまうのです。ヨガをやめる必要はありませんが、目の健康を思うのなら、頭が下になるポーズは避けたいところです。 逆に、目にいい運動もあります。体に酸素をふんだんに取り入れ、巡らせる「有酸素運動」(ウオーキングや軽いジョギング)は、必然的に目への酸素供給にもなり、目の健康維持に寄与します。 目安は「週3回、1回あたり30分以上、合計で週に90分ほど」、運動の強度は「ゼエハアと息が上がらず、会話できる程度」。これくらいの有酸素運動が緑内障などの防止になるという研究データもあります。 「ストレス」も眼圧を上げる一大要因 眼圧には自律神経も関係しています。 ストレスを感じると、緊張状態を司る交感神経が優位になるのですが、このとき体中の血管が収縮します。眼球も例外ではありません。交感神経が優位になると眼球の毛細血管が収縮するし、そこで眼圧が上昇するのです。 現に、緑内障に処方される目薬は、交感神経を鎮める効果のある成分が使われています。交感神経を鎮めることで眼圧を低下させ、緑内障を軽減する狙いがあるわけです。 ストレスには、仕事やプライベートでの人間関係のストレスもありますし、騒音や急激な冷えといった環境的なストレスもあります。冬場は眼圧が高くなるという研究報告もあるほどです。 すべてのストレスを取り除くのは難しいものですが、自然に触れに行く、自宅でのんびりする、ゆったり入浴するなど、適宜、自分に合ったリラックス習慣を取り入れましょう。 一般的に健康的な人などは多少これらの行動を行ったからとそく何かが起きることはありませんが、少しでも目にいい生活を送っていただければと思います。 本文は『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SBクリエイティブ)より一部抜粋・編集しています。 画像提供:Adobe Stock 書籍紹介 『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SBクリエイティブ) ・1カ月以上前に買った目薬を使っている ・3年前に買ったサングラスを今でも使っている ・水をがぶ飲みしてしまう ・寝つきがいい ・ブルーライトカットメガネを使っている ・目がいいから、検診を受けていない 1つでも当てはまるあなたは、要注意! 知らず知らずのうちに、自分の目を傷つけてしまっているかもしれません。 50万部突破『ガボールアイ』シリーズの著者が警告する、 視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと。 著者紹介 平松 類 眼科医/医学博士。愛知県出身田原市生まれ。二本松眼科病院副院長。受診を希望する人は北海道から沖縄まで全国に及ぶ。専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評でメディアの出演が絶えない。「あさイチ」、「ジョブチューン」、「バイキング」、「林修の今でしょ!講座」、「主治医が見つかる診療所」、「生島ヒロシのおはよう一直線」、「読売新聞」、「日本経済新聞」、「毎日新聞」、「週刊文春」、「週刊現代」、「文藝春秋」、「女性セブン」などでコメント・出演・執筆等を行う。Yahoo!ニュースの眼科医としては唯一の公式コメンテーター。YouTubeチャンネル「眼科医平松類」は20万人以上の登録者数で、最新情報を発信中。著書は『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる!ガボール・アイ』『老人の取扱説明書』『認知症の取扱説明書』(SBクリエイティブ)、『老眼のウソ』『その白内障手術、待った!』(時事通信出版局)、『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)など多数。

なぜ医者は「筋トレやランニング」でなく「ウォーキング」をすすめるのか?

運動したい、でもできない……。そこで本連載は論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指してみてください。 「ゆるい運動」が体にいい?  アメリカアリゾナ州立大学の研究グループの調査によると、日頃行っている運動とその後の死亡率との関係を調べた結果、次の図のような結果が出ました(※1)。  つまり「激しい運動は、体にいいとは限らない」ということです。 「ゆるい運動」が体にいいという科学的根拠がある  たとえば筋トレも、たしかにウォーキング同様、死亡率、心血管疾患、がん、糖尿病のリスクを下げるのですが、週に130分以上などやり過ぎると逆効果になるという東北大学の調査(※2)もあります(ただし糖尿病だけは実施時間が長ければ長いほどそのリスクは低くなる)。  ランニングも「筋肉が増える・心肺機能が上がる・ストレス解消」といった効果がある一方で、「ケガ・ひざ痛・足底筋膜炎になる」リスクがあります。 運動で免疫力を下げてはいけない  激しい筋トレやランニングで疲労が蓄積すると「免疫力が下がり、感染症リスクが上がる」というのも呼吸器内科医としては見逃せない点。  そう考えるとウォーキングがいいのです。 ※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的かつ効果的な歩き方が紹介されています。 【参考文献】 ※1  Sheehan CM, et al.  Associations of Exercise Types with All-Cause Mortality among U.S. Adults.  Med Sci Sports Exerc. 2020 Dec;52(12):2554-2562.doi: 10.1249/MSS.0000000000002406. ※2  Momma H, et al.  Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis […]

「酒じゃないから安心」は大間違い! “ノンアルコールビール”飲み過ぎで病気リスク増大 理由を医師が解説

 お酒が苦手な人や健康志向が高い人の中には、ノンアルコールビールを愛飲している人がいます。アルコールが入っていないからと、つい安心して飲み過ぎてしまうことがあるようですが、その場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。適量を守れば、毎日飲んでも問題ないのでしょうか。「戸塚西口さとう内科」(横浜市戸塚区)の院長で医師の佐藤孔信さんに聞きました。 【恐怖!】食べると「死に近づく…」 日常的に食べている食品10選を一挙紹介! 1日の摂取目安量は350ml Q.ノンアルコールビールの1日の摂取目安量について、教えてください。 佐藤さん「ノンアルコールビールは、アルコール度数が1%未満の飲料を指します。アルコールが全く入っていない製品だけでなく、微量のアルコールが入っている製品もあります。 アルコール度数が1%未満の飲料は、基本的に清涼飲料水に分類されます。清涼飲料水は水やお茶など無糖の飲み物のほか、ジュースのように砂糖が入った飲み物も含みます。 ノンアルコールビールは、ジュースなどと同様、糖質を含む製品が多くあるため、1日の摂取量は、基本的に350ミリリットル以内にとどめておくのが望ましいです」 Q.ノンアルコールビールを飲み過ぎた場合、どのようなリスクが想定されるのでしょうか。 佐藤さん「ノンアルコールビールは、本来のビールの味に近づけるためにさまざまな成分が含まれています。例えば、ノンアルコールビールの甘みは天然の甘味料または人工甘味料が使用されています。天然の甘味料は血糖値を上昇させる糖質を含むため、飲み過ぎは糖質の過剰摂取につながります。製品の購入時は糖質の量を確認し、できるだけ『糖質ゼロ』と表示された製品を選ぶようにしましょう。 人工甘味料の製品については、血糖値を上昇させる糖質は含まれていません。しかし、人工甘味料は砂糖の何倍もの甘みを感じることができ、その甘みに慣れてしまうと甘みに対する感覚が鈍くなり、より甘いものを多く摂取してしまう可能性があります。そのため、結果的に食欲を増進させ、エネルギー摂取量が増えてしまうことにつながります。 最近では人工甘味料の過剰摂取が腸内環境を悪化させ、それによりさまざまな病気の原因につながる可能性が指摘されています。ノンアルコールビールは適量を守って飲むのが良いでしょう。 また、ノンアルコールビールを飲むときについ食べ物を多く摂取してしまう人もいるでしょう。酒やノンアルコールビールと一緒に食べられるものは、脂っこいものや味付けの濃いものが多いため、こうした物を食べ過ぎると脂質や塩分の過剰摂取につながります。その結果、肥満や高血圧のほか、これらの症状によりさまざまな病気の原因にもなるため、注意が必要です」 Q.ノンアルコールビールは適量を守れば、毎日飲み続けても問題ないのでしょうか。それとも、飲まない日を設けた方がよいのでしょうか。 佐藤さん「ノンアルコールビールは、アルコールをほとんど含まないため、肝臓への負担は少ないですが、糖質を含む製品もあるため、安易に毎日飲み続けるのは好ましくないでしょう。何度も強調しますが、飲む際は適量を守りましょう」 オトナンサー編集部

がんで最も死亡者数が多い「肺がん」 5割がたばこを吸わなくても発症するタイプ 喫煙習慣のない女性に増加

 年間死亡者数が7万5585人(男性5万3247人、女性2万2338人/2020年国立がん研究センターがん統計)と、がんのなかで最も亡くなる人が多いのが肺がんです。発見された時点で、治るための手術を受けられる人は4割程度で、「難治性」といわれる肺がんですが、近年はさまざまな治療の進化により、徐々に「生きられるがん」へと移行しつつあります。また、喫煙習慣のない若い女性に、肺がんの一種の「腺がん」が見つかる事例が増えています。  本記事は、2024年2月下旬に発売予定の『手術数でわかる いい病院2024』で取材した医師の協力のもと作成し、先行してお届けします。 *  *  *  肺は呼吸を通じてからだの中へ酸素を入れて、二酸化炭素を体外に出す重要な役目を果たしている臓器です。肺がんは比較的転移しやすいがんで、進行すると血液やリンパ液によってがん細胞が全身に流れていき、肺のほかの場所やリンパ節、骨、脳、肝臓、副腎などに転移します。  肺がんはその組織型(がんの種類)によって、「腺がん」「扁平(へんぺい)上皮がん」「大細胞がん」「小細胞がん」に分類され、小細胞がん以外の三つは、「非小細胞がん」といわれます。患者数は腺がんが一番多く、肺がん全体の5割、非小細胞がんの75%程度を占めます。この記事では、最も割合の多い非小細胞がんの腺がんについてくわしく説明していきます。 ■たばこを吸わなくても肺がんになることがある  この最も多い腺がんは、喫煙の習慣がない人でもなるがんです。肺がんといえば、「長年の喫煙」が原因だと考える人も多いと思いますが、喫煙の影響が非常に大きいのは扁平上皮がんと小細胞がんです。腺がんも喫煙がリスクになりますが、喫煙の習慣のない若い女性にも起こることが多いのが特徴です。その原因はよくわかっていません。たばこを吸わないから肺がんにならないというわけではないのです。  肺がんが厄介なのは、早期がんでは自覚症状が出にくいことです。自治体の検診のX線検査で疑われて見つかることもありますが、せき、たん、血たん、発熱、呼吸困難、胸痛などの症状が表れると進行していることが多いです。またこのような症状があってもほかの呼吸器の病気との区別がわかりにくいです。  ほかのがん同様、病期(ステージ)が決められていて、大まかに0期、1期、2期、3期、4期に分けられます。最も早期がんの0期は、淡い影のような「すりガラス陰影」があるとして発見されますが、これが早期の腺がんで、手術をしないで経過観察をする場合もあります。国立がん研究センター中央病院呼吸器外科の部長で、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の肺がん外科グループ代表を務める渡辺俊一医師は次のように説明します。 「肺がんは亡くなる人が多い『怖いがん』と思われていますので、『もう終わりだ』と考える患者さんも多いです。しかし、ごく早期のすりガラス陰影といわれる腺がんは、CT検査でしか見えないようながんで、周辺部の影が淡く直径1.5センチ以下であれば、日本肺癌学会のガイドラインでは経過観察です。『様子を見ていても大丈夫ですよ』と話すと患者さんは安心します。なかには不安なので手術をしてほしいという人もいますが、大きくなってから手術をしても手遅れにはなりませんと説明しています」 ■初期の腺がんでも悪性度が高そうな場合は手術を検討  実は今から20年以上前には、1センチより小さい腺がんであっても、すべて手術するのが一般的でした。しかし臨床研究で調べていくうちに、比較的「おとなしいがん」であることがわかったのです。1センチ以下のすりガラス状の腺がんで女性の場合は、5年後にがんが大きくなっている人は1割程度しかいませんでした。残りの9割の人は大きくならないで、なかには一生そのままの状態の人もいたそうです。腺がんはこの点でほかの三つ、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんとは、大きく異なる特徴を持っています。 「経過観察して、たとえば5年たって大きくなったならその時に、肺を部分的に取る手術をすればよく、術後の化学療法もいりません。ただ、なかには要注意のものがあって、肺の正常な部分とがん化したすりガラス状に映る影との境界線がはっきりしている場合です。こういうがんは悪くなる可能性があるので手術が検討されます」(渡辺医師、以下同) 「小さくておとなしい腺がんだから放っておいていい」と安直に判断するのは問題だということです。初期の腺がんでも悪性度が高そうな場合、そして直径1.6センチ以上ある場合、さらに腺がん以外の非小細胞がん(扁平上皮がん、大細胞がん)では一般的に根治のための手術を選択します。小細胞がんは見つかった時点で進行しているため、手術はおこないません。  通常、手術が可能なのは3期の一部まで。さらに進行した場合は手術ができないため、放射線療法や薬物療法も加えた化学放射線療法をおこないます。  4期は、薬物療法を行います。近年、肺がんの薬物療法は、目覚ましい進歩を遂げて、通常の抗がん剤のみならず、がん細胞に特有のたんぱく質や遺伝子の異常を狙い撃ちにする「分子標的薬」、そして免疫ががん細胞を攻撃する力を取り戻す「免疫チェックポイント阻害薬」の登場で、飛躍的に生存率が伸び、根治に近い状態になる場合もあります。  このように治療の進歩は目を見張るものがありますが、冒頭に記したように、肺がんは発見された時に手術を受けることができる人は4割程度。肺がんを根治に導くための大前提は早期発見です。 ■早期発見のためには、胸部CT検査がお勧め  肺がんは早期では自覚症状があまりなく、せきやたん程度では、風邪や他の呼吸器の病気と思ってしまうこともしばしば。通常の自治体などの検診では胸部X線が主流ですが、渡辺医師は「胸部CT検査」を受けることを勧めます。 「CT検査によって、早期の肺がん、特にたばこを吸わない若い女性で、腺がんが多く発見されています。0期のすりガラス陰影を見つけるのは胸部X線では難しいです」  新しいCT検査機器は高性能で、がんがミリ単位でわかり、X線の10倍の発見率ということです。通常のCTの5分の1程度の被ばく線量の少ない「低線量胸部CT」も登場しました。渡辺医師はこう訴えます。 「薬の進歩により、肺がんは昔のように死ぬ病気ではなくなりつつあります。たばこを吸わない人であれば、年に1回CTを撮っていれば手遅れの肺がんが見つかることはありません。40歳を過ぎたら、一度CTを撮ってみてはいかがでしょう」 (文・伊波達也) 【取材した医師】 国立がん研究センター中央病院 呼吸器外科部長 渡辺俊一医師

喉の奥に「臭い玉」なぜできる? できやすい人の特徴は? 原因と除去・予防法を耳鼻科医が解説

 咳やうがいをした時に、喉の奥からポロっと出てくる“白い塊”。潰すと、悪臭を放つことから“臭い玉”などと呼ばれ、口臭原因のひとつとも言われています。この塊、喉に発生すると、「唾を飲むときに違和感がある」と不快さを感じることも多く、中には、自己流で取り除くという人も…。“臭い玉”は自分で除去して大丈夫なのでしょうか。そもそも、塊の正体は? もたい耳鼻咽喉科の耳鼻科医・甕(もたい)久人院長に聞きました。 ■“臭い玉”は死滅した細菌のかたまり つぶれると強い悪臭あり 質問1)喉の奥にできる“臭い玉”の正体は何ですか?  【甕院長】 “臭い玉“は、扁桃腺につく白い膿(うみ)で、正式には「扁桃膿栓(へんとうのうせん)」と呼びます。喉の奥の左右にある扁桃腺は、細菌など口内に侵入した異物をつかまえるためのリンパ組織で、表面のくぼみの部分で侵入した細菌を捕まえます。その後、それらの死骸が白い塊となって堆積します。これが“臭い玉“です。細菌の死骸のほか、食事の残渣も若干混ざっているといわれています。 質問2)そもそも、“臭い玉”はなぜ臭いのでしょうか。口臭の原因ですか? 【甕院長】 口臭を起こす代表的な物質は「揮発性硫黄化合物」です。“臭い玉“の構造を分析したところ、内部のほとんどが死滅した細菌のかたまりで、それらの細菌の多くが「揮発性硫黄化合物」を産生する菌であったとの研究報告があります。白い塊、“臭い玉“をつぶすと臭いニオイがするのは、内部の「揮発性硫黄化合物」が外にでるためです。 つまり、扁桃に“臭い玉“が付着しているだけではニオイ成分の漏出は少なく、つぶれない限りはそれほど強いニオイは出てこないということです。口臭は“臭い玉“がついていない人にも、扁桃腺を摘出した人にもあります。“臭い玉“がとれた途端に口臭が消えるわけでもないため、“臭い玉“はあくまでも口臭の原因の一つに過ぎないと言えるでしょう。 質問3)できやすい人の特徴はありますか? 子供にもできますか? 【甕院長】 “臭い玉“の正体は、口内の細菌の死骸が固まったものです。口腔乾燥は口内の細菌増加につながるため、唾液分泌が少ない人や、歯磨きの習慣の少ない人は注意が必要でしょう。口呼吸の人も口内が乾燥するので出来やすいかもしれません。  しかし、通常でも扁桃腺があれば小さな“臭い玉“の付着、脱落は常に繰り返しおきているものです。大きな白い塊にまで“臭い玉“が大きくなる人は扁桃腺の形の問題であり、扁桃腺に深いポケット状のくぼみができており、そこに“臭い玉”がはまり込み脱落しにくいため、塊が大きく育つことになります。したがって、“臭い玉”があるからといって体質がおかしい、口腔が不潔だ、と必要以上に心配しないようにしましょう。  また、子供にもできますが、子供はそもそも扁桃腺が小さく“臭い玉“がたまる場所も浅いため、すぐに落ちてしまってあまり目立ちません。 ■無理に自分でとってはダメ、気になる時はうがいを 質問4)“臭い玉”ができた後、そのままにしておくとどうなりますか? 【甕院長】 喉に痛みもなく熱もないのに扁桃腺に白い塊がついていた、という場合は通常の“臭い玉“ですのでそのまま放置しても健康上の問題が出ることはありません。ころりと外れて飲み込んでしまっても心配ありません。“臭い玉“の塊が大きくなり「喉の異物感がとれない」「異臭が気になる」などの悩みがでたら除去するのが良いでしょう。  喉が痛い、微熱を伴うなどの症状が出ている時に扁桃腺に白い塊がたくさ付着していた、という場合は急性炎症がおきている可能性が高いため早めの医療機関受診が必要です。 質問5)“臭い玉”ができたら、どのように取り除けば良いでしょうか? 歯ブラシなどを使って取っても大丈夫ですか? 【甕院長】 “臭い玉“は扁桃腺に正常でも付着する膿栓であり、小さなものは気付かぬうちに落ちたりしています。大きくなった“臭い玉“は簡単に脱落できないような場所にはまりこんでいるからこそ大きな塊になったといえます。逆に言えば容易に外に出られないような深い溝にはまり込んでいるということであり、無理にご自身で取ることはおすすめしません。とくに、歯ブラシやピンセットなどで取ろうとするのは粘膜に傷をつける可能性が高いのでやめておきましょう。ご自分では、ガラガラと喉の奥でうがいを試みる程度にとどめておきましょう。  白い塊のある部分の周囲を綿棒で押すとうまく押し出せることもありますが、やはり無理をなさらず耳鼻いんこう科へ受診されることをおすすめします。 質問6)“臭い玉”の予防方法を教えてください 【甕院長】 扁桃腺があるかぎり“臭い玉”は発生しますが、まずは、口腔内環境を清潔に保つことが予防の基本になります。ただし、清潔にしたいがあまり殺菌力の強いマウスウォッシュ(洗口液)を頻回に使うことはかえって常在菌を減少させ、口内の違和感、舌が黒くなる(黒毛舌)などの副作用がおきますので注意をしましょう。  また、口腔内が乾燥状態に近づくほど細菌は増殖するため、こまめに水分をとり、口呼吸の人は口内の乾燥につながるため鼻呼吸をこころがけましょう。異常に口が乾燥する、口呼吸しかできない人はその症状自体が問題ですので医療機関を受診することが必要です。 記事監修/甕 久人(もたい ひさと) 「もたい耳鼻咽喉科」院長。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医、日本聴覚医学会会員。名古屋市立大学医学部卒業後、大学附属病院ではがんを専門に研究、豊橋市市民病院にて臨床経験をつんだのち、地域に根ざしたクリニックの実現のため「もたい耳鼻咽喉科」を開業。

秋冬の脳梗塞や心筋梗塞の予防に 強い血管をつくるための食習慣

2023/10/20 05:10 ウェザーニュース 長かった猛暑が終わってようやく秋らしくなり、朝晩の冷え込みが厳しくなって一日の寒暖差が大きくなる日々が続いています。 例年、秋から冬へと寒くなるにつれて脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞など、循環器系の疾患が増える時期となっています。これは気温や室温の低下によって、体が熱の放散を防ぐために全身の血管を収縮させることから血管が詰まりやすくなることが原因とされています。 寒さがより厳しくなる冬場に備えて、いまのうちから「強い血管」をつくっておくことが大切で、特に食習慣への注意を医師や医療機関などが呼びかけています。 血管を強めるためには食習慣にどのような注意が必要なのかについて、横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長に解説して頂きました。 高血圧が血管を弱める 脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす、血管の収縮はどのような状態で起こりやすいのでしょうか。 「循環器系の疾病の大きな原因となるのが高血圧です。日本人の成人の3人に1人、高齢者では3人に2人が、診察室での繰り返し測定で最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上の『高血圧』と診断されています。 高血圧の状態が続くと血管は常に圧迫された状態になり、時間を経るにつれて血管壁の厚さと硬さが増していきます。これが高血圧を原因とする『動脈硬化』で、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす大きな原因になります。 国立循環器病研究センターの調査では、血圧が2mmHg下がれば国内の循環器病による死者数を2万人以上減らすことができるとされています」(吉田院長) 高血圧にはさまざまな原因があるようですが、特に食習慣で注意するべき点はどんなことでしょうか。 「食塩(塩分)を摂りすぎないことです。食塩の摂取量が多いと、血圧が上がって脳卒中や心臓病の危険性を高めるほか、心臓や血管そのものに悪影響を及ぼしてしまいます」(吉田院長) 食塩摂取量の目標値は? 人間の体に必要な食塩の摂取量はどのぐらいで、また、私たちは日ごろどのぐらいの食塩を摂っているのでしょうか。 「欧米では多くの国々が食塩摂取量1日6g未満を推奨しています。ところが厚生労働省の調査では、日本人(20歳以上、2019年)は1日あたりの食塩摂取量が平均9.9g、男性では10.8g、女性でも9.1gに達しています。 食塩摂取量の目標値は、厚労省が男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満、日本高血圧学会は高血圧患者の減塩目標を男女とも6g/日未満と定めています」(吉田院長) 減塩のために普段からできること 食塩の摂取量を減らすためには、どのような食習慣を心がければいいのでしょうか。 「まず、日ごろの食生活のなかで積極的に塩分摂取量を減らすのが大切なことは、いうまでもありません。 食塩やしょうゆなどの調味料を減らし、減塩調味料や出汁、レモン汁などを活用する。漬物や佃煮、塩辛などはもちろん、ハムやソーセージといった肉加工品や魚の干物、タラコや塩引きなど塩蔵品の摂取を減らすことも重要です。 外食や市販の惣菜などは味付けの濃いものが多くなるので、塩分控えめにした家庭での食事機会を増やし、みそ汁や麺類の汁は少なめに。『腹八分目』も常に心がけるようにしましょう」(吉田院長) 塩分の排出を促す食材は? 日常的に塩分摂取量が多くなっている場合は、排出量を増やすための食習慣も大切です。 「食塩の主成分であるナトリウム(Na)の体外への排出を促す成分として、カリウム(K)が挙げられます。カリウムを多く含んだ食品を積極的に摂るようにしましょう」(吉田院長) カリウムを多く含む食品には、どのようなものがありますか。 「大豆そのものや大豆を素材とした豆腐、厚揚げなどの製品、野菜ではイモ類、カボチャ、ホウレンソウ、モロヘイヤなど。果実ではリンゴ、バナナ。海藻類にもカリウムは多く含まれています。 また、カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)、水溶性食物繊維はカリウムの働きを助ける栄養素です。カルシウムは乳製品やダイコンの葉、濃い目の緑茶など、マグネシウムは玄米やゴマなど、水溶性植物繊維はオクラ、ナガイモなどに含まれます。 ただし、医師からカリウムを制限されている人は、その指示に従ってください」(吉田院長) そのほかに注意したい食習慣 食塩以外に減らしたほうがいい食品、逆に摂ったほうがいい食品はありますか。 「血液中に含まれる悪玉コレステロールや中性脂肪の増加による、『皮質異常症』も動脈硬化の原因となります。 肉の脂身に含まれる飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを増やす性質があるので、摂り過ぎは避けましょう。牛肉よりも皮を除く鶏肉のほうが、飽和脂肪酸が少ない食材です。 ファストフードと揚げ物、さらにアルコールの過剰摂取も控えたほうがいいでしょう。 一方で青魚などに多く含まれる不飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを減らす性質があります。肉類を減らして魚類を多く摂ることも循環器病の予防に役立ちます。 血管の内皮にはアテロームと呼ばれる、コレステロールが蓄積した粥(かゆ)のような物質が付着することがあり、高血圧の要因になります。これを防ぐには抗酸化作用の高いホウレンソウやニンジン、ブロッコリーやトマトなどの『色の濃い』野菜が有効とされています」(吉田院長) 適度な運動やストレス対策も忘れずに 食事以外に血管を強くするポイントはありますか。 「冬場に備えて気候が穏やかなこの時季に、血管を強くするための運動習慣を身につけておくことも有効です。 ウオーキングやストレッチ、軽い筋肉トレーニングなどの適度な運動を行うと心拍数が増えて血流が増加し、血管の拡張と血圧の低下をもたらし、血管の内側にある内皮細胞にほどよい刺激を与えます。そのため内皮細胞が活性化されて、強くしなやかな血管が形づくられるようになります。 ストレスも血管や心臓に負担をかける大きな要因です。ストレスが多いと血圧が上がるため、イライラしたときは、何度か深呼吸を繰り返してみてください」(吉田院長) 「食欲の秋」ですが塩分の摂り過ぎや過剰な飲食は控え、「運動の秋」にふさわしい適度な運動を行って強い血管をつくり、体に負担がかかる冬場に備えましょう。 » アプリ お天気ニュース記事一覧

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