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【写真】荻原博子「病気や高齢でも入れると主張する保険には特に警戒してほしい」
「持病があっても入れます」には注意
健康だと保険料が割引になる保険があるのなら、不健康でも安くなる保険はないのでしょうか。
もちろん、そんなものは存在しません。
保険とは、病気や怪我をする確率や死亡する確率で保険料を算出する、保険数理で計算された商品ですから、その確率が高ければ、そのぶん保険料も高くなるのは当然です。
「持病があり、高齢でも入れて、しかも保険料が安い」という都合のいい保険などありえないのです。
そのため、以前は、持病があって保険に入れないという人も多かったのです。
しかし近年では、持病があっても、高齢でも入れて、しかも保険料が安いと感じさせる保険が売られています。
そして、健康な人よりも、病気がちで高齢の人ほど、こうした保険の広告やCMに惑わされ、加入してしまいがちなのです。
「持病があっても入れる保険」のカラクリ
「持病があっても入れる保険」のほとんどは、「引き受け基準緩和型保険」といって、当然ですが健康リスクがある人も加入しやすくなっています。
そのため、月々の保険料は、健康な人が加入する保険よりもずっと割高になっています。さらに加入して1年間は、一時金の支払い額が50%に削減される商品が多いです。
しかも、「引き受け基準緩和型保険」に加入するには、主に次の3つの条件を満たしている必要があります。
・過去2年以内に、入院・手術をしたことがない。
・過去5年以内に、がんで入院・手術をしたことがない。
・現時点で、がん・肝硬変と医者に診断または疑いがあると指摘されていない。
会社によっては、ここに「過去3ヶ月以内に入院や手術を勧められていない」とか、「うつ病などの精神疾患は対象外」などの条件が加わります。
「持病があっても入れる」と言っているにもかかわらず、加入条件が厳しいのです。
「80歳でも入れる保険」のカラクリ
続いて、「高齢者でも入れる保険」についてです。
2010年代に「50・80 喜んで」というキャッチフレーズで有名になったアメリカンホーム・ダイレクトの商品を覚えていらっしゃいますか?
すでに売り止めになっている「人生まだまだこれからだ」という保険で、故地井武男(ちいたけお)さんのテレビCMが印象的でした。
実際、「80歳でも、保険料が月々2800円で掛け捨てではありません」というフレーズに惹(ひ)かれて加入を決めた高齢者は多くいたようです。
また、CMには次のようなうたい文句も記されていました。
満50歳から80歳まで入れる保険で、医者の診査は不要、申し込みも郵便で書類を送るだけでOK。葬式の費用を保障(条件あり)、怪我の治療費も実費で最高100万円、賠償責任費用は最高で5000万円。
この内容で保険料は月々2800円、しかも年齢が上がっても保険料は変わらないというのですから、保険に入ろうにも保険料が超高額になる80歳近い人たちには魅力的に映るのは無理もありません。
「人生まだまだこれからだ」のカラクリ
しかし、「人生まだまだこれからだ」には、思ってもいないカラクリが隠されていました。
CMの「葬式」という言葉からは「死んだら保険金が受け取れる」と想像してしまいます。また、「怪我」という言葉があるので、当然「病気も対象になる」と思ってしまいます。
それなのに、CMでは死亡したら保険金が出るとも、病気で入院したら入院給付金が出るとも言っていません。
言っていないのではなく、言えないのです。
なぜなら、「人生まだまだこれからだ」は「生命保険」ではなく、「損害保険」、しかも「傷害保険」だからです。
「傷害保険」とは、日常生活で起きる様々な怪我(傷害)に対応する保険です。「人生まだまだこれからだ」が「生命保険」ではなく「傷害保険」なのであれば、年齢が関係ないのは当たり前。
年齢が関係ないのですから、保険料が何歳でも月々2800円で、年齢が上がっても変わらないのも当たり前。
「生命保険」のように、加入者が健康かどうかも関係ありません。もちろん、死んだ時の保障も、病気になった時の入院費の保障もないのです。
100万円は「最高で」という条件付きで、実際には支払った実費しか戻ってきません。これには、やられたと思った人が多かったのではないでしょうか。
健康であれば、生命保険の見直しを考える
「生命保険」には、お得な商品というものはありません。
もし、お得な保険に入りたいなら、加入後満額保障されない一定期間が経過した後、すぐに病気になって入院すればいいのです。
そうすれば、最低限の保険料で満額の保険金を受け取ることができます。
もちろん、このケースが現実的ではないことはわかるでしょう。
ここまでのことから言えるのは、健康であれば、保険に入る必要もないし、加入するにしても比較的安い保険料で済むということ。
つまり、今健康に問題がない人は、生命保険を見直してみたほうがいいかもしれません。
節約ポイント
健康に自信があるなら、生命保険に加入しないのが最大の節約。
※本稿は、『5キロ痩せたら100万円 「健康」は最高の節約』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。