最大の敵は閣内にいた。秘書官の差別発言に対する批判封じに「LGBT理解増進法案」の提出準備を急ぐ岸田首相。あざとい“火消し”の障壁となりそうなのが、高市経済安保相の存在だ。
同法案は2021年、超党派の議員連盟が「成立」で合意したものの、「差別は許されない」との文言を加えたことに自民の保守系議員が反発。「理解増進が差別禁止に変わった」「訴訟の乱発を招きかねない」などと批判を浴びせ、国会提出を葬り去った経緯がある。
そこで一般社団法人「LGBT法連合会」は、同年9月の自民党総裁選で候補者4人に法案への賛否を問うアンケートを実施。唯一「反対」と回答したのは高市氏だった。理由は「差別の定義が曖昧で、当事者を含め多くの懸念の声があった」とし、法案提出を潰した面々と同じく「差別禁止」に反発を抱いたようだ。
「彼女は一貫して『伝統的な家族観』を重視し、昨年夏の参院選直前に『同性愛は精神の障害、または依存症』などと差別的な記載のある冊子を配った『神道政治連盟国会議員懇談会』にも所属。安倍元総理のシンパである岩盤保守層の支持を自身につなぎ留めるためにも、法案反対は絶対譲れないでしょう」(自民党関係者)
高市氏は党内の「選択的夫婦別姓」を巡る議論でも強く反対の意見を打ち出し、21年1月には党有志50人と一緒に「家族が崩壊する」として、42の都道府県議会議長に反対を求める意見書を送りつけたほどだ。
野田聖子前少子化相のフェロモンに…
約20年前には月刊誌「諸君!」(02年3月号)の鼎談企画「クタバレ『夫婦別姓』」に参加。あけすけな発言が、8日の衆院予算委員会で取り上げられた。
企画のサブタイトルは「ネコ撫で声の『男女平等』に騙されるナ!」で、高市氏は〈女性を被害者的にとらえて「何がなんでも男女平等」と唱えるのもナンセンス〉と主張。別姓賛成派の野田聖子前少子化相の主張を受け〈男性議員で転向組が続出しているって本当ですか〉と鼎談相手の山谷えり子元国家公安委員長に聞かれると、〈彼女のフェロモンと福島瑞穂さんや田嶋陽子さんのラディカルとが共闘すると手ごわいんですよ(笑)〉と嘲笑していた。
鼎談を〈「社会の秩序」や「家庭の絆」を破壊する個人主義的政策に保守系の議員が協力するのは愚かなこと〉と締めくくった高市氏だが、この国の男女格差は今や146カ国中116位。性的少数者の差別禁止と同性婚を認めていないのもG7で日本だけ。
彼女の常識は世界の非常識だ。