フィリピンを拠点とする特殊詐欺事件に関与していると、同国から引き渡された今村磨人(38)、藤田聖也(38)両容疑者を乗せた航空機が7日午後、成田空港に到着した。同日昼過ぎには、警視庁が機内で2人が逮捕していたが、放送中だったフジテレビ系「ぽかぽか」では速報時に「速報“ルフィ”逮捕」の大きなテロップを表示。これに漫画「ONE PIECE(ワンピース)」ファンが怒っている。
《ぽかぽかのルフィ逮捕、「ルフィと名乗る男」逮捕じゃダメなの? 特にアニメの放送しているフジテレビがやるのはダメなんじゃないの? フジテレビONE PIECEによくあやかるくせに?》
《フジテレビ、速報をデカデカとルフィで出すのやめろ。本名とか容疑者とかでいいでしょ》
容疑者が明らかになっているにもかかわらず、犯人側の暗号“ルフィ”を連呼する報道に辟易しているようだ。もっとも犯人側の「ルフィ」の名称の由来は不明だが、日本の多くの視聴者はワンピースの主人公「モンキー・D・ルフィ」を想定している。
ほかにも、《作者の尾田栄一郎さんに著作権侵害払ったんかな?》《ルフィ、ルフィってバカみたいに毎日勝手に言ってるけど著作権侵害にならないのかな? 作者はいい迷惑》《無断でルフィの名前を使用した営利目的の活動は著作権侵害だし、それによりONE PIECEのイメージを悪くしたことは営業妨害に該当するので、犯人らは尾田栄一郎先生に損害賠償を支払うべき》などと疑問の声が相次いでいる。
過去には1984年と85年に発生したグリコ・森永事件で、犯人グループは「かい人21面相」と名乗った。これは江戸川乱歩の探偵小説『少年探偵シリーズ』に登場する大怪盗「怪人21面相」に由来するとみられる。
■原作者が訴えることはできる?
当時とは異なり今はネット社会。それだけに逮捕された「ルフィ」と出版社や作者を絡めて、陰謀論を書き込む投稿もみられる。漫画とは無関係なのは当然ながら、漫画の原作者がイメージを損ねたとして犯罪集団を訴えることはできるのか。
損害賠償問題に詳しい弁護士の山口宏氏が言う。
「漫画やアニメのキャラクターであっても経済的価値がある以上、著作権は認められます。ただし、今回の場合、犯人グループは『ルフィ』の呼称を漫画の主人公を利用しようとし、その性質に従って使っているわけではなく、特定の人物を指した暗号として使っています。漫画を棄損する意図はなく、むしろ犯人グループも暗号は仲間内のもので、世間に知られたくなかったと考えられますから、損害賠償請求ができる不法行為には当てはまらないでしょう。となると、名前を広げたのはマスコミの伝え方になりますが、マスコミも漫画の主人公『ルフィ』の評判を落とす目的ではなく、現実に起きていることとして『ルフィと名乗る犯罪グループがいる』と伝えたに過ぎないので、責任は問えません」
ファンにとってはモヤモヤは拭えないだろう。