タイヤの役割と選び方
タイヤはバイクの走りに大きく影響を与えるパーツです。そのため、バイクメーカーはテストを繰り返し、エンジンなどの性能を最大限に引き出せるよう、最適なサイズや銘柄などを選定し、新車に装着するタイヤを決定しています。
また、日々のメンテナンスにおいても、空気圧の点検や調整、ヒビなどの表面チェックは欠かせません。タイヤのチェックを怠ると燃費が落ちたり、グリップが低下したり、場合によって、バーストの可能性も出てきます。
【画像】バイアスタイヤが装着されたバイクたちを画像で見る(10枚)
どんな高性能なバイクでも、路面に接地して駆動力を伝えているのは2本のタイヤで、接地面積もわずかなものだけに最適な状態に保つ事は重要です。
これらの点を踏まえてもタイヤを交換する際は、安心という観点ではメーカー指定、つまり新車時に装着されていた銘柄とサイズに交換するのが一番です。もちろん用途に合わせて純正以外のタイヤを選択することも、バイクライフの楽しみ方のひとつ。その際は、カタログなどを見ながら、適合サイズや特性などを比較して、選ぶことになります。
タイヤの特性とは、ドライやウエット路面でのグリップ力や静粛性、耐摩耗性や燃費性能などで、バイクの場合はハンドリングにも大きく関わります。現状装着しているタイヤの気になる部分や不満点を基準に選ぶと、わかりやすいと思います。
とはいっても、闇雲にグリップを良くすればいいというわけではなく、愛車のキャラクターに合った特性にすることが大切。最近では、トレッドのデザインも豊富になっているので、見た目も選ぶ際の重要なポイントとなっています。
タイヤの構造には大きく分けてふたつある
前述した選択基準の基本部分として、大切なポイントがあります。それがバイアス構造とラジアル構造のどちらを選ぶかという点。バイアスタイヤやラジアルタイヤと呼ばれることも多いので、耳にしたことがあるという人も多いでしょう。
両者の違いは内部に入れられたカーカスというナイロンなどで作られた繊維の方向で、バイアスは横から見て左右斜め(2枚の繊維を重ねている)になっていて、ラジアルは外に向かって放射状に走る構造となっています。
ちなみにバイアスは「斜めの」、ラジアルは「放射状の」を意味する言葉です。
なお、両者の見分け方はサイズ表記にRが付いている事で、ラジアルであることがわかる程度。しかし、このふたつのタイヤの特性は、大きく違います。
バイアスタイヤはカーカスでガッチリと固められているので全体の剛性が高く、悪路走行などに向いている上にコストもかからず、安く作ることが可能。空気圧を低めに設定すれば、低速時の乗り心地をよくすることもできます。
欠点は、剛性が高くてゴツゴツしているので高速走行時の突き上げがひどくなりがちで、乗り心地が悪くなる傾向にある点。高速走行に耐えるためにはカーカスの量を増やす必要があるため、さらに固くなることに加え、重量も増加してしまいます。
タイヤの重量が増せばバネ下重量も増え、サスペンションにも悪影響。乗り心地をよくしようとすれば柔らかいゴムを使用することになりますが、芯はガチガチなのに表面は柔らかいゴムを使用するとバランスが悪いだけでなく、摩耗も早くなってしまいます。そのため、タイヤとして成立しないため、高速での乗り心地改善は困難といえます。
一方のラジアルタイヤは、バイアスタイヤよりも遅れて登場したタイヤ。斜めに重ねられたカーカスによって剛性が高められている点はいいのですが、全体に均一なのが欠点となります。なぜなら、しなやかさを増したり乗り心地をよくするためには、カーカスを減らすのが有効ですが、ただ減らすだけでは剛性が落ちてたわみも増えてしまいます。
その対策として採られたのがサイドウォールを薄くするという方法。つまり偏平率を下げることでタイヤ表面のたわむ部分自体が減らせ、剛性を上げられてトレッド部分だけをしなやかさを保つことが可能となります。そのため、サイドの量を変更するなどして味付けを自在に調整することができる事が、バイアスタイヤとの最大の違いといえます。
これらの特性から、ラジアルタイヤのほうが優勢に感じられ、実際に乗用車ではすべての新車にラジアルタイヤが採用されています。
一方でバイクの場合は、まだほとんどがバイアスタイヤを採用。乗り心地と価格のバランスが考えられたセレクトになっています。その最大の理由は、いわゆる中型や大型モデルの一部でラジアルタイヤが純正装着されていますが、偏平率を下げるということはある程度、太いタイヤでないと細くて薄いタイヤになってしまいます。
さらにバイクの場合はトレッドを丸くする必要があるので、偏平率を大きく下げることもできません。そのため、小型バイクやスクーターは、必然的にバイアスタイヤとなってしまうのです。
これらの理由から、現在でもバイクではバイアスタイヤが主流となっていますが、最近は重ねる角度を緩くしたラジアルのようなバイアスタイヤや、少し角度を付けたカーカスを追加してバイアス構造の利点をプラスしたラジアルタイヤも登場しています。
そして今後、さらに進化した構造のオールマイティな性能を持つタイヤが登場してくるかもしれません。