政府が日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁の後任人事について雨宮正佳副総裁に就任を打診したとの日本経済新聞の報道を受けて、6日の市場では株高と円安が進んだ。金融政策は雇用や金利などでサラリーマンなど国民の生活に大きな影響を及ぼすが、4月以降の新体制には懸念も残る。
雨宮氏への「打診」について磯崎仁彦官房副長官は6日の記者会見で、「そのような事実はない」と否定した。その上で「黒田総裁の任期は4月8日までとなっており、その時点で最もふさわしいと判断する方を任命することが基本だ」と重ねて強調したが、市場は大きく反応した。
6日の日経平均株価の上げ幅は一時、300円を超え、終値でも約2カ月ぶりの高値となる2万7800円台を付けた。円相場は1ドル=132円台と約1カ月ぶりの円安基調となった。
雨宮氏が黒田体制を支えてきたことから、「金融政策は当面現状維持されるのではないか」(市場筋)との安心感が広がったという。
10年間にわたる黒田日銀の金融緩和では、1ドル=80円台近辺で日本経済を苦しめた超円高から円安に反転させ、1万円割れしていた日経平均は一時、3万円を回復した。完全失業率が低下するなど雇用が大幅に改善した。引き締めに転じると株安と円高、雇用悪化に逆回転する恐れもある。
雨宮氏は金融緩和に消極的だった白川方明(まさあき)前総裁以前の政策にも関与している。岸田文雄政権は政府と日銀の共同声明を見直す可能性も浮上している。
元内閣参事官で嘉悦大教授の高橋洋一氏は「長期的には、利上げ・増税の反アベノミクスになるだろうが、その反転時期はすぐ来ないと市場は思っているのだろう」と話す。「逆バズーカ」は勘弁してもらいたい。