Wednesday, March 29, 2023

爆発音の原因はF15戦闘機か、通報相次ぐが特定できず…「火球の可能性も」

 ドーン! 時ならぬ爆発音が市民を驚かせた。滋賀県南部で1月19日午後、建物の窓ガラスを震わせるほどの轟音(ごうおん)を大勢が耳にし、一時、通報が相次ぐ騒ぎになった。市や警察、消防が確認に向かったが、爆発や事故、地震はなく、原因の特定には至っていない。被害こそなかったが、あれは一体何だったか。取材を進めると、ある事実が浮かんできた。(藤井浩)

 先月19日午後3時過ぎ、「ドーンという音とともに家が揺れた」「下から突き上げられ、直下型地震かと思った」といった市民からの通報が、草津、守山、栗東、野洲の各市役所に1~数件ずつ寄せられ、SNSにも同様の投稿があった。

 草津市北部の小学校では、地震の前兆のような轟音が1回聞こえ、窓ガラスが震え、職員らがすぐ周辺を調べたが異常はなかったという。近くのゴルフ場のスタッフは直後に、「1回、ドカーンという轟音と地響きがして体がビクッとなった。大型トラックの衝突事故か、何かの爆発と思った」と語っていた。

 110番も1件寄せられ、守山、草津両署や湖南広域消防局が警戒のため出動。草津、守山両市も危機管理課職員が北部の工事現場などへ確認に向かったが、爆発や交通事故などは確認できなかった。県も気象台や県内の陸上自衛隊の駐屯地に尋ねたが、その時刻に特異な気象現象や訓練はなかったという。

 謎の爆発音騒ぎは、実は全国で起きている。近年では2021年4月に札幌市、19年3月に長崎県、16年3月に高知県で同様の“事件”が報じられた。原因として隕石(いんせき)や火球、戦闘機が音速(1気圧・気温15度で時速約1220キロ)を超えた際に衝撃波と爆発音を生む「ソニックブーム」現象などが挙がったが、真相はいずれも不明だ。

 京都大防災研究所の山田真澄准教授は、各地に設置された地震計の記録から爆発音の信号を調べる一方、自ら各市や各署に電話して証言を収集。その結果、多賀町や東近江市、三重県いなべ市にある四つの地震計で衝撃波を示す信号が見つかった。その速度はほぼ音速と一致し、県南部から東北東へ、空中を伝わったとみられることがわかった。

 山田准教授は自身のホームページで調査結果を公表。「地震計のデータが少なく、信号を出した物体の速度や経路は推定できないが、戦闘機、火球のいずれの可能性もある」と指摘する。

 ただ、県内の天文愛好家によると、この日に火球や隕石の観測はなかった。

 一方、航空自衛隊は読売新聞の取材に対し、県南部で同時刻頃、那覇基地の第9航空団に所属するF15戦闘機1機が西から東へ飛んでいた事実を明らかにした。名古屋空港近くの三菱重工の工場で定期整備を受けるため、航空管制を受けて飛行しており、高度は4000メートル以上だったという。

 航空幕僚監部広報室によると、速度については、この機のパイロットが那覇基地の聞き取りに「音速を超えた飛行はしていない」と証言したという。

 広報室は「当時は通常速度の300ノット(時速約555キロ)前後で飛んでいたか、降下に向けて減速気味だったのではないか」としたうえで、「飛行と、地上で聞こえた爆発音やソニックブームとの因果関係については確たることを申し上げられない」と説明し、戦闘機による爆音説を否定する。

 だが、栗東市役所には「ジェット機が通ったような音が聞こえたが、機影は見えなかった」との声が寄せられたという。ある航空自衛官OBは「可能性が高いのは、やはりジェット戦闘機だろう。空自も洋上訓練で音速の2倍にあたるマッハ2で飛び、ドーンという衝撃波を出す。パイロットの過失はあり得るが、認めはしないだろう。ほかに米国の海軍か海兵隊の戦闘機が模擬訓練で飛んでいた可能性もある」とみる。

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