1月下旬、米国、ドイツ、ポーランド、オランダなどが主力戦車をウクライナに提供することを決定した。
ロシアは激しく反発している。準備や訓練の期間があるので戦車が実際に供与されるのは春以降になるだろう。戦車はポーランドからウクライナに入り、鉄道で戦闘が行われている東部や南部に移送されることになる。
ロシアはこれまで差し控えていた鉄道や橋梁へのミサイル攻撃を本格化する。戦闘員のみならず一般住民の犠牲者が急増することになる。さらにウクライナの鉄道輸送が麻痺するので、食糧供給にも支障が生じる。人命を救うために一刻も早く停戦を実現しなくてはならないと筆者は考える。
この関連で1月11日、池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長(創価学会名誉会長)が発表した「ウクライナ危機と核問題に関する緊急提言『平和の回復へ歴史創造力の結集を』」が興味深い。連立与党の公明党の支持母体は創価学会だ。従って、池田氏の緊急提言は現実の政治に影響を与える。にもかかわらず、マスメディアで大きく扱われていないのが不思議だ。
この緊急提言で重要なのは、池田氏がウクライナ戦争についてロシアによる侵略という認識を表明していないことだ。停戦を実現することを現実的に考えるならば「お前たちは侵略国だ」と非難されている状況でロシアが交渉の席に就く可能性はないからだ。池田氏は具体的に以下の提案を行う。
<そこで私は、国連が今一度、仲介する形で、ロシアとウクライナをはじめ主要な関係国による外務大臣会合を早急に開催し、停戦の合意を図ることを強く呼びかけたい。その上で、関係国を交えた首脳会合を行い、平和の回復に向けた本格的な協議を進めるべきではないでしょうか>
筆者も池田氏の提言を全面的に支持する。停戦の合意を図るために関係国が努力してロシアとウクライナの外相を交渉の席に着かせる努力をすべきだ。専門家(外務省の事務方)レベルの準備交渉ならばすぐに着手できるはずだ。日本は西側連合の一員であるが、ウクライナに殺傷能力を持つ武器を供与していないし、今後も供与すべきではない。
現在、外務省の一部勢力(特にウクライナ大使の松田邦紀氏)が岸田文雄首相のウクライナ訪問を画策しているが、そのような訪問でこの戦争に深入りするよりも停戦に向けたイニシアティブを取る方が国際社会における日本の地位を高めることになる。