(ブルームバーグ): 米当局は、南部サウスカロライナ州沖で4日撃墜した中国の気球に搭載されていたとみられる機器の回収に向けてダイバーらを派遣した。今回の事案を巡っては、機密性の高い技術に関する新たな対中輸出規制など、中国への対抗措置を講じるようバイデン政権に求める圧力が増している。
事情に詳しい関係者1人によると、米政府は詳細な写真撮影能力を持つ機器や他のセンサーを発見できると見込んでいる。米議会は今回の気球に積まれた装置について、米国や同盟国製の技術が含まれていたかどうかの回答をすでに求めていると別の関係者は話した。
バイデン政権は気球の搭載物に関する具体的な見方を明らかにすることは望んでいないとして、いずれの関係者も匿名を条件に語った。
少なくともスクールバス2台分に相当する大きさを持つとみられる今回の気球やそれに付随するセンサーは、マートルビーチ沖の水深50フィート(約15メートル)、7マイル(約11キロメートル)にわたって散乱している。水面から作業を進めるダイバーやクレーンは、数日以内に気球の残骸を引き上げる見通しで、中国の偵察能力に関する極めて重要な手掛かりが情報分析上明らかになる可能性もある。
中国側は既定のコースから外れた気象観測用の「飛行船」だと主張。一方、米政府は中国による広範な偵察計画の一環だとの見方を示す。この点を考慮に入れ、バイデン政権はいかに厳しく、速やかに対抗措置を講じるか調整していると、事情に詳しい複数の関係者が明かした。
一方、中国外務省は6日、謝鋒外務次官が「関連企業の合法的な権益を断固守り、必要ならば一段の対応を行う権利を留保する」と表明したと発表。米国の在中国大使館に対し、厳正な申し入れを行ったことを明らかにした。
気球自体は撃墜されたが、今回の件を巡る騒ぎは当分収まりそうにない。別の関係者によれば、バイデン大統領は7日の一般教書演説で、今回の気球問題に触れるのはほぼ確実となっている。
1つの選択肢として浮上しているのは、ブリンケン米国務長官が訪中し、気球問題の公表前に予定していた訪問よりもかなり厳しいメッセージを中国側に伝えるという案だ。
ブリンケン長官は気球がまだ米領空を飛行している間に北京に到着し、米国民に悪い印象を与えるリスクを望まなかったと、事情に詳しい複数の関係者は話した。
バイデン政権は現在、ブリンケン氏がスケジュールを近く再調整すべきだとの考えで、気球問題のほか、ロシアによるウクライナ侵攻を中国企業がひそかに支援していることを示すとされる証拠に関して、ずっと厳しい姿勢で臨むよう主張している。
さらに、政権高官によれば、中国の類似した気球がトランプ前政権時に米大陸の上空を少なくとも3回飛行したが、こうした侵入はバイデン大統領就任後まで分からなかったという。機密情報だとして匿名を条件に話した。
トランプ前大統領らは政権担当時に中国の気球が米領空に侵入したことはないと否定しているが、認識の隔たりにはこうした背景がある可能性がある。バイデン政権の情報当局者は、中国による偵察の取り組みについて、トランプ前政権の国家安全保障当局者に説明する用意があると同高官は述べた。
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原題:US Sends Divers After Chinese Balloon While Weighing Retaliation、China Tells US Not to Escalate ‘Tense Situation’ Over Balloon、US Didn’t Know About Chinese Balloons During Trump Until Later(抜粋)
–取材協力:Peter Martin、Victoria Cavaliere.
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