将棋の第48期棋王戦五番勝負第1局が5日、長野市「長野ホテル犀北館」で開幕し、藤井聡太竜王(20=王位、叡王、王将、棋聖との五冠)が渡辺明棋王(38=名人との二冠)に125手で勝利。約1年ぶりに挑戦者となり最年少六冠に挑む藤井竜王は、幸先良く先勝を飾った。第2局は18日、石川県金沢市「北國新聞会館」で行われる。
この日まで22連勝だった先手番をひき、圧倒した。角換わり腰掛け銀となり、午前中はテンポよく進んだ。中盤となり藤井竜王は端攻めで渡辺棋王の飛車を押さえ込むことに成功。「空振ってしまう可能性もあるけど、速い攻めが必要な局面」と桂馬を相手の歩頭に設置する意表の手や、垂れ歩などを駆使して、2筋も突破して挟撃体制に。渡辺棋王も決死の入玉を果たすも、しっかり寄せきった。
難解な局面の連続に、「中盤から盤面全体での戦いになって、判断に迷う局面が多かったかなと思います。最後までよく分からない将棋だったかなと感じています。どういう方針で指すのか一局を通して難しかった気がします」と苦しい表情で振り返った。「よいスタートが切れたかなと思う。先後が決まった形になるので第2局に向けてしっかり準備できればと思います」と意気込んだ。
五冠達成者は藤井竜王含め過去4人だったが、六冠以上は羽生善治九段(52)しか達成できていない。藤井竜王が棋王を奪取すると史上2人目で、羽生九段の記録・24歳2カ月(1994年)を3年以上大幅更新する。今年は奪取できていない名人、王座への挑戦の可能性も残されている。昨年は初の1億円プレーヤーとなり、勢いに乗る20歳が、史上初の八冠も視野に突き進む。
渡辺棋王は「勝負どころがどこだったのかよく分からないままになってしまった。あったとしたら狭い範囲だったと思う。それがさっと過ぎた将棋になってしまった」と悔しさをにじませた。「第2局は2週間ほど空くので、仕切り直していきたい。巻き返せるように頑張りたいと思います」と語った。