定年が近づくにつれ漠然としたお金の不安に悩まされる人は少なくない。
世間では「年金はあてにならない」「老後は医療費や介護費の負担が重くなる」「定年後も働かないと食べていけない」といった悲観的な展望が常識になっているが、記事『役所はなぜか教えない…60歳から『3つの年金』をたっぷりもらう“凄テク”と、『貯金0円』でも“老後安心”に暮らす“超ワザ”…!』などでご紹介したとおり、実は、長くサラリーマンとして働いてきた人の年金は充実している可能性が高いのだ。
今回は、会社員の年金がどれくらい充実しているのか、『役所や会社では教えてくれない!定年と年金 3つの年金と退職金を最大限に受け取る方法』を監修した大江加代さんと、その夫で経済コラムニストの大江英樹さんに、具体的な金額の目安を教えてもらった。

「年金不安」に騙されるな!
老後の生活を支える収入のメインは、公的年金だ。
しかし、公的年金については「年金不安」をあおる情報があまりにも多い。
その結果、「今の世代はいいけれど、将来は破綻する」「受け取る金額が激減する」という話が一人歩きし、自分がもらえる年金がいくらなのかも確認せず、早々にあきらめて、ただただ不安に頭を抱えている人があまりにも多いようだ。
定年後に「年金1億円」もらえる人が続々…!
そこで、サラリーマンの資産形成を支援する活動を行う大江夫妻に、実際に会社員夫婦がもらえる公的年金額の目安を聞いてみた。
「厚生労働省は、毎年平均的な収入の会社員夫婦のモデル年金受給額を発表しています。
令和4年度の数字でいえば夫婦2人で月額21万9593円です。この金額は夫婦のうち1人は会社員、1人は無職という組み合わせです。この夫婦が同い年でともに65歳から90歳まで生きたとすると、単純計算で約6587万円の年金がもらえることになります。
これを収入が同じくらいの共働き夫婦として計算すると、月額30万9554円になります。仮に25年間受給すると、総額は約9286万円ということになりますね。
つまり、共働き夫婦なら、すでに1億円近い老後資金の土台をもらう権利があるということになるのです」(加代さん)

もちろん、これはあくまでモデル額ではあるが、ここに夫婦の年齢差によっては年金版家族手当てとも呼ばれる加給年金が加算される人もいる。
若い人でも「納めた保険料の2.3倍」
これだけもらえる権利があるのに「年金は不安」と思い込む背景には、「今の世代はいいけれど、自分たちがもらう頃には年金は破綻している」という悲観論を展開する人々がいるからだ。
この点について、公的年金制度にくわしい夫の英樹さんがこう解説する。
「よく、年金がもらえるとしても、自分が払った保険料分すら取り戻せないのではないかという人がいます。しかし、厚生労働省の『財政検証結果レポート』のデータをもとに世代間の年金給付額と保険料負担額を調べてみると、1995年生まれの人でも、会社員であれば、納めた保険料の2.3倍の年金がもらえます。若い世代でも払った分の保険料は十分取り戻せるでしょう。
また、そもそも公的年金の本質は、『貯蓄』ではなく『保険』です。『保険』という役割を考えれば、『元が取れない』という発想自体がナンセンスです。がん保険に入っている人が、保険金をもらえないからといって『がんにならなくて損した』『保険料が無駄になった』とは誰もいわないと思います。
我々は、何歳まで生きるかわかりません。だから、いつまで長生きしてもいいように、終身で所得保障をしてくれる公的年金という保険に加入しているのです」
公的年金は長生きリスクに備える保険なのだ。
やたらと年金不安をあおられて、おかしな金融商品に飛びつく前に、まずは目の前の現実をしっかり直視することが大切だ。
さらに後編記事『「年金」に“5.5%”の超高金利がつくケースも…! 退職金を「年金」「一時金」で“超お得”にもらう凄テク』では、定年後のおカネを最大限おトクにもらうためのテクを紹介しよう。